呪みちる(のろい・みちる)さんのホラー漫画『口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~』。昭和感あふれる都市伝説がモチーフの、ホラー漫画短編集です。
『スケスケメガネ伝説』『黒い清涼飲料水』『3本足の人形』など、昔ながらの「怪奇漫画」を彷彿とさせるベタなタイトル。実に「昭和感」が漂いますが、収録されている漫画はどれも粒ぞろいの怖さ。
『口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~』感想・レビュー
概要
漫画『口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~』は、呪みちるさんが1998年から2007年にかけて、ぶんか社・蒼馬社系の雑誌に発表したホラー漫画をまとめた短編集。
- スケスケメガネ伝説
- 口裂け女あらわる!
- 黒い清涼飲料水
- だるま女の話
- タイヤ
- ヌガーの少女
- ウジ女
- 3本足の人形
- 復讐の人面疽
- 地獄をのぞく鏡
- 魔食
以上、『口裂け女あらわる!』のような、都市伝説をモチーフにしたホラー短編11編を収録しています。
都市伝説がモチーフのホラー短編集
以前、無料で公開されていた短編「鬼貫きの針」で初めて呪みちるさんの漫画に触れたのですが、そのおもしろさ・魅力、そして怖さに一気に引き付けられました。
そこから手に取った単行本「口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~」。
「都市伝説」というのは今もテレビなどで大人気のホラージャンルですが、呪みちるさん風にアレンジされた短編漫画の数々、実におもしろく、何より怖い!
味わい深い「スケスケメガネ伝説」
冒頭作「スケスケメガネ伝説」はタイトルだけ見るとちょっとコミカルなんですが(笑)、とても印象的な作品。
特急列車に偶然乗り合わせた二人の人間。
サングラスをかけた怪しげな長髪の人物に、子どもの頃の思い出を語るもう一人の男。
「何でも見える」という触れ込みの「スケスケメガネ」を、土壇場で手に入れそこなった彼。
「(手に入らずに)おしかったですね…」と男の話に相槌を打つサングラスの人物は、実は超能力タレント・海天光(かいてん・ひかり)。
その口からは、実際にスケスケメガネを手にした少年の物語、そして恐ろしい結末が語られる…。
…というお話。
空き地の立て看板で告知され、ある日なぜか届いた手紙を元にお金を振り込む、という「スケスケメガネ」の入手方法が、いかにも「昭和の都市伝説」。
前半だけでも不気味で少し怖いのですが、後半さらに恐怖をたたみかけてくるのが呪みちる作品の魅力。
短編「鬼貫きの針」もそうですが、読者が想定する結末の「もう一歩先」が描かれていて、ホラー漫画の枠におさまらない意外な驚きを読み手に与えてくれます。
妖艶な色香漂う独特の作風
また独特の「色香」とでもいうのでしょうか、全編から漂う妖艶な雰囲気が呪みちる漫画の特徴。
美形もそうでない者も、エロとは少しニュアンスの異なる不思議な淫靡さを身にまとい、読者の心を離さない。
それが恐怖とのギャップをより一層引き立て、病みつきになります。
もちろんホラー漫画ということでショッキングな描写もありますが、それ以上に印象的なのは、やはり全体に漂う昏い空気。
読み手の心をグッと掴む魅力、というか「魔力」があります。
「スケスケメガネ伝説」以外では、あの黒い飲み物の秘密を描いた「黒い清涼飲料水」、不気味な人形に魅入られた母子を描く「3本足の人形」などが特に印象に残った漫画。
「黒い清涼飲料水」はこれぞ都市伝説!なお話。怖さを感じると同時に、読んでしまったら少し複雑な気持ちになる…かも?
まとめ
不思議な美しさに見とれていたら、気づかない内に後戻りのできない裏道に迷い込んでしまった。
でも暗闇の先を見ずにはいられない…。
呪みちるさんの漫画にはそんな妖しさが詰まっています。
ホラー漫画という枠にとらわれない、独特の魅力がある漫画。ぜひその世界観に触れてみてください。
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