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漫画レビュー『最果てのセレナード』雪降る町の少女たちが抱いた「殺意」

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「わたし お母さん殺しちゃおうかな」

最果ての地で出会い、心を通わせた二人の少女が、雪降る夜に抱いた「秘密」とは―?

北海道を舞台に描かれる、儚くも美しいサスペンス・ストーリー。ひの宙子(ひのひろこ)さんの『最果てのセレナード』感想・レビューです。

最果てのセレナード(1) (アフタヌーンコミックス)

連載は講談社の漫画雑誌「アフタヌーン」で2024年6月現在、単行本1~3巻が刊行中。以下『最果てのセレナード』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。

『最果てのセレナード』あらすじ

北海道の中学生・小田嶋律(おだじまりつ)と、東京から転校してきた白石小夜(しらいしさよ)。二人は小夜が律の母親のピアノ教室に通う縁で、友人関係となる。

しかしピアニストとしての才能を持つ小夜は、母親からの過度な期待と支配に苦しんでいた。そして母親の矛先は、目標の「邪魔」となる律にも向けられ…

その律に音楽室で、ピアノを前にして小夜は語りかける。

「律ちゃん わたし お母さん殺しちゃおうかな」

小夜の告白、そして歪な親子関係を目の当たりにした律。その心の中には仄かな「殺意」が芽生え―?

『最果てのセレナード』感想・レビュー

音楽を通した二人の交流

物語の始まりには地元を離れ、週刊誌記者として働く律の姿が。

卒業後、小夜と律は離れ離れに。以来10年、顔を合わせることは無かった二人。ですが同窓会の話題をきっかけに、律が過去を振り返るという形で、二人の出会いと交流が描かれていきます。

最果てのセレナード(2) (アフタヌーンコミックス)

ピアノ教室の娘だがピアノを弾けない律に対し、「小田嶋さんのために弾くね」と真摯な眼差しを向ける小夜。

一方、コンクール会場で、小夜の類まれなピアノの才能、そして自身に向けられた思いを感じ取った律。

音楽をきっかけに互いに思いを寄せていく二人。友情とも恋愛ともつかない、思春期ならではの純粋な感情が育まれていくその様子に、思わず心が吸い寄せられるような。

1巻ラストが衝撃的―!

しかしそんな二人に暗い影を落とすのが、小夜の母親。娘の才能に過度に入れ込むあまり、周囲に対して高圧的・攻撃的に振る舞う彼女。その存在・姿勢は、小夜と律の心に仄暗い炎を灯していくように。

そしてその炎がやがて、取り返しのつかない事態を招き―?

最果てのセレナード(1) (アフタヌーンコミックス)

丁寧に描かれる、少女たちの交流と精神的な繋がりが印象的な『最果てのセレナード』。ですがその描写が、逆に彼女たちの心の苦しみ・葛藤・苛立ちを如実に伝え、読み手の心の不安を掻き立てます。

そして不安と緊張感が高まった瞬間に迎えた、1巻のラスト。これが非常に衝撃的…!それはビックリするほど美しく、胸が締め付けられるほど苦しく、そして背筋が凍るような戦慄を与えてくる、驚愕のシーン。

そこで彼女たちが見せる「表情」は、一度見たら忘れられない…!

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読み応えのある繊細な人間描写

連作短編集『グッド・バイ・プロミネンス』でデビューを飾ったひの宙子さん。人と人との繋がり、微細な関係性を、優しい筆致で紡ぐ作風が特徴的な漫画家さんです。

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その初の長編連載作品となる『最果てのセレナード』では、その人間描写はそのままに、それがために起こるサスペンスを展開。繊細にして息が詰まるような物語が、読み手の心を捕えて離しません。

そして物語は「過去」から「現在」へ。卒業以来連絡を取っていなかったが、しかし心の片隅にお互いを置いていたであろう二人は、どのような「未来」へ向かうのか…?

レビューまとめ

以上、ひの宙子さんの漫画『最果てのセレナード』感想・レビューでした。

雪の降る町で出会い、気持ちを交わし、やがて大人になった二人は、果たしてどのような道を歩むのか…?2巻ではさらなるサスペンス要素が加わり、物語の深みがますます濃厚に。二人の女性の運命が気になるところです。

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