「我らコンタクティ」全1巻―手作りロケットは宇宙を目指す

森田るいさんの「我らコンタクティ」。個人によるロケット開発で宇宙とのコンタクトに臨む男女をコミカルに描く、全1巻のストーリー漫画です。

作者の森田るいさんは、2013年に講談社アフタヌーンの四季賞を受賞した漫画家さん。本作「我らコンタクティ」が連載デビュー作品だそうです。

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「我らコンタクティ」レビュー

街の片隅の宇宙開発

会社を辞めたい冴えないOLのカナエ

兄の工場で一人コツコツとロケットを組み上げるかずき

そんな二人が小学校以来に再会し、「ある目的」のためにロケットを宇宙へ飛ばそうと、ドタバタを繰り広げます。


[森田るい 著 講談社「我らコンタクティ」より引用]

折り合いの悪いかずきの兄・テッペイと、テッペイと不倫する飲み屋のママ・梨穂子も巻き込みながら、やがて本格化するロケットの打ち上げ。

街の片隅に生きる人々が地べたに足をつけながら、その胸に宇宙への想いを抱いて突き進む様が、笑いを混じえて描かれます。

ロケットの目的は?

ロケットというとNASAやJAXAなど、官製の大事業というイメージがありますが、実は個人でも打ち上げることが可能(もちろん法律や各種申請をクリアすることが必要)。

作中のロケットは町工場でかずきが独力で開発したものですが、それは読者が想像する以上に本格的。そして彼がロケットを打ち上げる目的は、幼い頃にカナエと見た「ある体験」に由来します。

その目的のために、彼がロケットに搭載したものとは…。

おもしろい!笑っちゃうんだけど、何気にすごいことをしている。

ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、「町工場のロケット開発」らしさがあふれるそのアイデア。現実の宇宙開発では考えられない、ユーモアがあります。

元気でゲスいヒロイン

「我らコンタクティ」、物語を引っ張るのは、ヒロイン・カナエ

小柄でやや猫目。社会に鬱屈を感じる彼女がロケットエンジンの迫力を目にして、まず考えたのは「金」(笑)。また小学生時分の印象からかずきを格下扱いするなど、とにかくゲスいw

そんなカナエ、ロケットのスポンサーを連れてきたり、かずきの作業を手伝ったりと、持ち前の行動力を発揮。最初はロケットをお金儲けの道具としてしか見ていませんでしたが、密かな情熱を燃やすかずきの心にあてられ、自身もロケットにのめり込んでいくことに。


[森田るい 著 講談社「我らコンタクティ」より引用]

「手段」が「目的」となったカナエ。次第にその顔つきも変わってきます。最初はゲスいけど、次第にその輝きから目が離せなくなってくる、ユニークなヒロインです。

人間ドラマのおもしろさ

ロケット開発ということで理系的なイメージがあるかもしれませんが、「我らコンタクティ」のおもしろさは実は人間ドラマにもあり

カナエとかずきの噛み合わなさ。

一見ほがらかだが、心の中に闇を抱く梨穂子。

かずきと兄・テッペイの間にあるわだかまり。


[森田るい 著 講談社「我らコンタクティ」より引用]

そんな4人のちょっと変わった人間関係が、全1巻というコンパクトな物語の中で、まとまっていく様が描かれます。終盤の盛り上がりを形作っていく人間関係の描き方がおもしろい。森田るいさんの構成力が光ります。

ロケット打ち上げの行方

そして後半でカナエとかずきがコツコツと進めてきたロケットが完成。いよいよロケットの打ち上げが近づきます。

しかし民間でもOKとは言え、ロケットは誰でも勝手に打ち上げて良いものではありません。宇宙に到達するほどの規模を持つものでは、当然のことながら関係各所に了解を取る必要があります。

そこでやはり起こるスッタモンダ。このドタバタがおもしろい。二人の距離をグッと近づけるエピソードもあり、映画を見ているような感覚。果たしてかずきとカナエの想いをのせたロケットは、宇宙へ届くのか…?

カナエの変化に注目

以上、森田るいさんの漫画「我らコンタクティ」全1巻のレビューでした。

ユニークなキャラクターとテンポの良い流れ、そして手に汗握る緊迫感。序盤からコツコツと作り上げてきたものが、後半に収束していく流れが素晴らしい。全1巻のストーリー漫画として、満足の読後感がある作品です。

そして徐々に盛り上がってくる物語と共に、注目したいのはカナエの表情。ロケット開発を通して彼女はどのように変わっていったのか?ぜひ本編でご覧ください。

漫画データ
我らコンタクティ (アフタヌーンコミックス)著者:森田るい出版社:講談社発行日:2017-11-22

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