町の心霊スポットを取材することになった女子中学生。ひとりでは怖いから、転校生に声をかけてみた。
「帰り道、ふたりで心霊スポットに寄り道しませんか?」
不思議な懐かしさのある坂の町を舞台に、二人の少女のふんわりな冒険を描く、”ともひ”さんの『ゆうやけトリップ』。連載は芳文社のWeb漫画メディア「COMIC FUZ」で、コミックス1~2巻が刊行中(2024年6月現在)。
以下『ゆうやけトリップ』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『ゆうやけトリップ』あらすじ
中学校の新聞部員・蜷森茜(になもりあかね)はクジ引きの結果、「宵の坂町の心霊スポット」を一人で取材することに。だが怖がりなため気乗りがしない…。
そんな彼女に「どうしたの?」と声をかけたのは、転校生・雨村藤乃(あめむらふじの)。これをきっかけに二人は友人となる。
以降、「幽霊とすれ違うトンネル」「異界に迷い込むループ階段」などの心霊スポットを、学校の帰りに寄り道して回る二人。ちょっと怖いけれど不思議な「二人だけの放課後」を過ごしていく―。
『ゆうやけトリップ』レビュー
町の風景描写が圧巻!
第一話で友人となった二人の女子中学生が、町の心霊スポットを回るというささやかな冒険を繰り広げる漫画『ゆうやけトリップ』。
読み始めてまず引き込まれるのが、舞台となる「宵の坂町」の風景描写。上部と下部で非常に高低差があり、町の各所が多数の階段で繋がれている、名前の通り随所に坂のある町。
そこを登ったり下ったりする二人、その背景として描かれるそれが、圧巻の迫力。水彩っぽい淡いタッチながら、ギュッと詰まった家屋群。その中を這うように配置された階段の、緻密な描写がとにかくスゴイ!
上・下・横と多彩なアングルで描かれる「坂の町」に目が釘付け。特に上から見下ろす感じの風景は「空中庭園」ぽくって、その「高さ」に思わずブルッと来てしまう。
恐怖?の心霊スポット
その階段をひたすら上下しながら、茜と雨村さんの二人が目指すのは、学校で噂となっている心霊スポット。
- 歩いていると「幽霊の足音だけ」が聞こえる謎のトンネル
- 逢魔が時に4周すると「異界」に迷い込む円周状のループ階段
- 鳥居の下を通ると血が垂れ落ちてくる「生首神社」
など、ちょっと凝った設定の「いかにも」な場所。
これが作者・ともひさんの緻密な描写力とも相まって、なかなかの迫力。
ですが実際に怪奇現象が起こるのかと言うと、さにあらず。
『ゆうやけトリップ』の公式漫画説明に「懐かしくて切ない、優しい世界の怪談漫画」とありますが、実は怪談的な展開はあまりありません。
メインは「女子中学生の心霊スポット探訪」なので、そのあたりは安心(?)。ですが時には「ゾクリ」とする出来事もあったりして…。
暗めの風景を抜けた先に待ち構える展開に、ドキドキするつくりになっています。
【ebookjapan新規限定クーポン】
縮まるふたりの距離。しかし…?
そんな『ゆうやけトリップ』、その最大の魅力は茜と雨村さん、二人の親交と友情。
お団子頭で元気が取り柄の小柄な茜と、長身・ロングヘアーでおっとりしつつも大人びた雰囲気を持つ雨村さん。
二人が心霊スポットを巡る内に、互いの距離を縮めていく様子に、何だかほっこり。雰囲気ある背景描写との良いコントラストを演出。
ですが1巻終盤では、雨村さんにちょっと「?」となる、思わせぶりな描写が。
茜は雨村さんとは別の友人が二人おり、彼女たちとお昼ごはんを食べたりするのですが、その時でも雨村さんはひとりだったりして、何だか不自然…?
この「思わせぶり」は果たして次巻でスッキリするのか?注目です。
レビューまとめ
以上、ともひさんの漫画『ゆうやけトリップ』のネタバレなしレビューでした。
坂の町の背景描写、心霊スポットのおどろおどろさ、そして女子ふたりのほんわかした冒険が、独特の読後感を残す作品。面白いです。
そして二人の探訪はまだまだ始まったばかりですが、次巻以降、どのような心霊スポットが登場するのか?また二人の関係性に変化が訪れるのか?続きが気になる物語です。
コメント