「水」をテーマとした作品を多数手がけている漫画家、安堂維子里(あんどう・いこり)さん。
安堂さんの全1巻完結SF漫画、「Silent Blue(サイレントブルー)」を読みました。
舞台は現代ですが、ジャンルとしてはSF・ファンタジー、でしょうか。
私が安堂氏の世界に初めて触れた漫画は「世界の合言葉は水」。
描かれるシーンの瑞々しさに感銘を受けたのを覚えています。
この「Silent Blue」はどんな水の世界を見せてくれるのでしょうか。
あらすじ
20年前、とある街に隕石が落下。その後、落下跡に雨が20日間降り注いでできた湖は、「二十日湖(はつかこ)」と呼ばれる。
移動カフェを営む女性・あおこ。
彼女はウェットスーツに身を包み、素潜りで湖に潜る。
4歳の時、街に住んでいたあおこだが、当時の記憶が無くなっていた。
深く、もっと深く潜れば失われた「何か」を取り戻せるかもしれない。
今日も湖に潜るあおこ。
やがて彼女は、同じく湖の秘密を探る保険会社員・青木と出会い、彼の協力を得て湖の底を目指す―。
「Silent Blue」感想・レビュー
湖の底の街
いやー、隠れた名作ってまだまだあるんやなぁ…(しみじみ)。
1本の映画・ドラマを見終わったような満足感。良かったです。
湖の底に向かって真っ直ぐ潜るあおこ。
次第に光りが届かなくなって、視界に入ってくるのはかつて街だったもの。
「モノなのか思い出なのか場所なのかわからないけど
なにかすごく大切なことがあった気がする
みつければ納得できると思う」
あおこの純粋な気持ちと、水の底深くにただ横たわるかつて街だったもの。
モノクロの漫画なのに、不思議と蒼い景色が広がるようで、不思議な感覚です。
湖に眠る真実とは?
人間というものは呼吸をしないと生きていけないわけで。
水の、その深くを目指す時、それは「限りある時間」と切り離せません。
刹那とも言えるその時間の中で、あおこが見た真実。
暗い水の底で輝くきらめきがいつまでも心に残ります。
【ebookjapan新規限定クーポン】
印象的な「水の表現」
さてそんな「Silent Blue」。その魅力は「水の表現」にもあります。
P66・67の見開きで潜水するあおこの足元から生まれる泡。
その一つ一つが、かつて街に住んでいた人々の生活をあらわしていたり。
P116で、あおこと青木がカウンターをはさんで湖の話をする。
その背景イメージが湖の底だったり。
描かれる水のイメージ、ハッとするような表現の美しさがあります(イメージの美しさを文章で表現することのなんともどかしいことか!)。
またヒロイン・あおこの表情がすごく魅力的。
マジメな顔、驚く顔、そしてはじけるような笑顔。
あおこの豊かな表情を見ていると、つられて読み手も同じ顔しちゃいますね。
まとめ
というわけで、安堂維子里氏描く漫画「Silent Blue」の感想・レビューでした。
全1巻完結がさびしいぐらいの良い漫画です。
さわやかな感動、良質のSFをどうぞ。
コメント