戦乱で愛する家族を奪われた女性は、狙撃銃を手に取り復讐を誓う―。
影待蛍太さんの漫画『GROUNDLESS(グランドレス)』。女性スナイパーの復讐劇を起点に、架空の国家における苛烈な内乱を描く、本格ミリタリー漫画です。
オリジナルはWeb発表の『GROUNDLESS』。作者サイトに記載の「架空世界の戦場群像劇」という言葉が、作品の本質を良くあらわしています。
コミックスは双葉社より1~11巻が刊行中(2024年6月現在)。以下『GROUNDLESS』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『GROUNDLESS』あらすじ
島国アリストリアの中で、武器産業により自治を確立している街・ダシア。武器商の妻・ソフィアは将校の裏切りで夫と左眼を失い、幼い娘も奪われる。
復讐を誓い、狙撃銃を手にダシア自警団に志願したソフィア。折しも不安定な情勢から、ダシアは解放軍と交戦状態に。
果たして彼女は将校を撃ち、家族の仇を取れるのか…?
…以上が『GROUNDLESS(グランドレス)』1巻の2/3までで描かれる、悲劇の女性スナイパー・ソフィアの復讐劇。以降、彼女が属するダシア自警団を中心に、アリストリアを舞台とした戦場群像劇が展開されていきます。
『GROUNDLESS』レビュー
「戦場のスナイパー」の強烈な存在感
『GROUNDLESS』の世界観は、実際の歴史に例えると第一次世界大戦ぐらい。戦車や航空機も存在しますが、小銃携行の歩兵が戦闘の中心。
その中で腕のいい狙撃兵(スナイパー)の存在は、戦局を左右する大きな要素。遠距離からの攻撃で敵の行動を制限すると同時に、味方の行動を活発化させていきます。
ダシア自警団の中でその役割を担うのが、長身の狙撃銃を手にするソフィア。1巻では超正確な狙撃能力で次々とヘッドショットを決め、一気に戦場の主役に。
続く2~3巻で描かれる「穀倉地接収作戦」でも、敵に待ち伏せされ絶体絶命のピンチに陥った自警団を、夜間のスナイプで救っていきます。
観測手とともに狙いを付け、ひとり、またひとりと確実に頭を撃ち抜いていくソフィア。その迫真の狙撃描写が、実にリアルで迫力あり。
そして彼女が活躍すればするほど感じる高揚感、そして恐怖…。「戦場における狙撃手の驚異」が強烈に脳に焼き付きます。
※非常に凄惨な描写もあるので注意。
島を舞台にした「戦場群像劇」
そして『GROUNDLESS』は巻を重ねるにつれ、「戦場群像劇」へと変容。ダシアのみならず、島の独立を目指す「開放軍」や、島を守る「島軍」の兵士たちにもスポットが当たるように。
- 仲間と故郷の弟のために、自らの体を武器に戦車隊で地位を築いていく島軍の戦車長・レジーナ。
- 穀倉地帯で恋人をソフィアに射殺され、復讐を誓う解放軍兵士・マリカ。
- 驚異的な戦闘能力でダシア自警団を苦しめる天才狙撃兵・リドリー。
- 『大陸統治論』を著したがために担ぎ上げられた反体制派の盟主・リビンダ。
など、それぞれの思惑・立場で、アリストリア島内の戦闘に参加した人々の描写が。
しかし、すでに個人の力では如何ともし難い過酷な戦争の、一つの歯車となっていく…。
そんな多様・複雑な登場人物の一人ひとりに「それぞれの戦場」があり、それを戦史の中に組み込み大きな歴史を描いていくのが、『GROUNDLESS』の面白み。
「正義VS悪」という単純な図式に留まらない広い視点での戦場に、読みながら引き込まれていきます。
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隻眼の狙撃兵が行き着く場所は…?
そんな物語の中でやはり目を離せないのが、隻眼の女性狙撃手・ソフィア。復讐を果たし一度は戦列を離れるも、自警団に復帰。驚異的な狙撃能力でダシア自警団の要となっていきます。
しかし街のため、仲間のために引き金を引けば引くほど、血塗られていくその手。相棒の観測手・モンドに支えられながらも、敵兵士たちから恐れられ憎まれ、その精神は徐々に張り詰めていく…。
そして戦いが終焉を迎える時、戦争という抗えない渦に巻き込まれた彼女の、心の行きつく先は果たして…?
レビューまとめ
以上、影待蛍太さんの漫画『GROUNDLESS』ネタバレなしレビューでした。
巻を重ねてますます盛り上がってきた『GROUNDLESS』。読み始めると一気読み必至!のミリタリー・ドラマです。
まずは1巻の復讐劇、そして2~3巻で描かれる「穀倉地の戦い」をどうぞ。緊迫感あふれすぎる迫真の戦いを読み終えた時、心は戦場から抜け出せなくなっている…!
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