漫画『GROUNDLESS(グランドレス)』―復讐を誓う隻眼の女性狙撃兵+架空世界の戦場群像劇

愛する家族を奪われた女性は、長身の狙撃銃を手に取り復讐を誓う―。

影待蛍太さんの漫画『GROUNDLESS(グランドレス)』。一人の女性の復讐劇を起点に、架空の国家における激烈な内乱と兵士たちの過酷な戦いを描く、本格ミリタリー漫画です。

『GROUNDLESS』はもともとはWeb発の作品。作者サイトに記載の「架空世界の戦場群像劇」という言葉が、作品の本質を良くあらわしています。2021年3月現在、9巻まで刊行。以下続刊です。

『GROUNDLESS』感想・レビュー

あらすじ

疫病の流行により、総人口の1/6が死亡した島国アリストリア。母体である大陸政府から封国処置を受け、慢性的な物資不足と経済恐慌に陥り不安定な情勢に。

そのアリストリアにおいて、武器産業により独自の自治を確立している街・ダシア。武器商・ウォルドロンは、島軍の将校より大口の武器調達依頼を受ける。

しかし裏切りにあい、ウォルドロンは死亡。巻き添えを食った妻・ソフィアも、左眼と幼い娘を奪われる

将校に復讐を誓うソフィアは、狙撃銃を手にダシア自警団に志願。だが狙撃精度の低さから戦力としてみなされない

そんな折、解放軍と島軍の一部が蜂起を予定し、ダシア自警団も参加を促される。しかし街を守ることを選択した自警団は、解放軍と交戦状態に

そこで後方での「支援」狙撃を任されたソフィア。復讐と娘の奪還を目指し、仇である将校の姿を探すが…?

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隻眼のスナイパー・ソフィアの復讐劇

以上が『GROUNDLESS(グランドレス)』1巻の、3分の2ぐらいまでのストーリー。悲劇の女性スナイパー・ソフィアの復讐劇が描かれます。

実は超正確な狙撃の腕を持つソフィア。敵を油断させるため、味方まであざむいて隠した実力を、自警団と開放軍の戦いで解禁。次々とヘッドショットを決め、一気に戦場の主役へと躍り出ます

※ネタバレごめん。ただこれを書かないと以降の説明ができないのでご了承を。

『GROUNDLESS』の世界観は、実際の歴史に例えると第一次世界大戦ぐらい。戦車や航空機も存在しますが、小銃携行の歩兵が戦闘の中心。

その中で味方に腕のいい狙撃兵がいるかどうかは、戦局を左右する大きな要素。その役割を担うソフィア、「戦場における狙撃手の圧倒的な存在感を強烈に印象づけていきます。

緊迫の「穀物地接収作戦」

『GROUNDLESS』序盤で強烈な活躍を見せるソフィア。しかし彼女の復讐劇は1巻前半でひとまず終わり。

1巻後半からはダシア自警団の戦いに物語がシフト。市民の暴徒化に対抗し食料源を確保せんと、近隣の穀倉地を接収する自警団の作戦行動が描かれます。

武装はしていても、軍隊ではなくあくまでも「自警団」である彼ら。しかし混乱する島内で自らの立場を守るため、銃を手に取る他は選択肢が無い…。

そのためメンバーは、軍務経験者から一般市民レベルまで様々。部隊としてはやや不安の残る彼らが、到着した穀倉地で待ち受ける開放軍の罠にかかり、絶体絶命のピンチに。果たして彼らは生き残ることができるのか?

そんな緊迫の戦いが2~3巻で展開。その中で描かれる戦術や兵士の動き、兵器の運用などミリタリー描写が、実にリアルで迫力あり。面白さとともに、まるで自分が戦場にいるような高揚、はたまた恐ろしさを感じます。

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島を舞台にした「戦場群像劇」

さらに『GROUNDLESS』は巻を重ねるにつれ、「戦場群像劇」へと変容。ダシアのみならず、開放軍や島軍の兵士たちの思惑・心情にもスポットが当たるように。

仲間と故郷の弟のために、自らの体を武器に戦車隊で地位を築いていく島軍の戦車長・レジーナ

穀倉地帯で恋人をソフィアに射殺され、復讐を誓う解放軍兵士・マリカ

驚異的な戦闘能力でダシア自警団を苦しめる天才狙撃兵・リドリー

『大陸統治論』を著したがために担ぎ上げられ、混乱の元凶となったことに恐れを抱く反体制派の盟主・リビンダ

それぞれの思惑・立場でアリストリア島内の戦闘に参加した人間が、しかしすでに個人の力ではどうしようもなくなった過酷な「戦争」の、一つの歯車となっていく。

これら多様・複雑な登場人物の一人ひとりにそれぞれの戦場があり、それを戦史の中にきっちりとまとめ上げているのが、『GROUNDLESS』の面白み、大きな魅力。

「正義VS悪」という単純な図式に留まらない広い視点での戦場が、物語全体で描かれていきます。

隻眼の狙撃兵が行き着く場所は…?

そして劇中でやはり目を離せないのは、隻眼の女性狙撃手・ソフィア

復讐を果たし一度は戦列を離れるも、自警団に復帰した彼女。驚異的な狙撃能力でダシア自警団の要となっていきます。

しかし街のため、仲間のために引き金を引けば引くほど、血塗られていくその手。相棒である観測手・モンドに支えられながらも、相手兵士たちから恐れられ憎まれ、その精神は徐々に張り詰めていく。

そして戦いが終焉を迎える時、戦争という抗えない渦に巻き込まれた彼女の、心の行きつく先は…?

架空世界の戦場群像劇『GROUNDLESS(グランドレス)』。リアルな戦争描写に手に汗握りながらも、その中に練り込まれた空恐ろしさを感じずにはいられない、迫真のミリタリー漫画です。

『GROUNDLESS』まとめ

以上、影待蛍太さんの漫画『GROUNDLESS』感想・レビューでした。

読み始めると一気読み必至のミリタリー・ドラマ。1巻の復讐劇はもちろん、2・3巻で描かれる穀倉地の戦いは圧巻。特に2巻終盤は震える展開で、忘れられないインパクトがあります。

まずはぜひ1巻を。そして2~3巻と続けて読むと、もうこのおもしろさからは引き返せない!巻を重ねてますます盛り上がってきた『GROUNDLESS』の世界に、どっぷりハマってみてください。

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