「GROUNDLESS」―隻眼の女性狙撃兵が激戦の果てに見る景色は

一人の女性の復讐劇を起点に、激烈な内乱と兵士たちの過酷な戦いを緻密に描き上げていく、影待蛍太さんの漫画「GROUNDLESS(グランドレス)」を読みました。

Web発のミリタリー漫画で、作者サイトから言葉を借りると「架空世界の戦場群像劇」。記事作成時で8巻まで刊行、以下続刊です。

「GROUNDLESS」レビュー

あらすじ

疫病の流行により総人口の1/6が死亡し、母体である大陸政府から「封国処置」を受けている島国アリストリア。慢性的な物資不足と経済恐慌により市民が暴徒化。「アリストリア開放市民軍」を名乗る民兵組織により、不安定な情勢に陥っている。

そのアリストリアの中で、武器産業により独自の自治を確立している街・ダシア。武器商・ウォルドロンは、島軍の将校より大口の武器調達依頼を受ける。しかし将校の裏切りにあい、ウォルドロンは死亡。その妻であるソフィアも左眼を失い、娘を奪われる。

影待蛍太「GROUNDLESS」1巻
[影待蛍太 著 双葉社「GROUNDLESS」1巻より引用]

復讐を誓うソフィアは、夫の遺した狙撃銃を手にダシアの自警団に志願。しかし狙撃の精度は低く、お荷物扱い。そんな折、解放軍と島軍の一部が蜂起を予定し、自警団も参加を促される。

参戦の空気の流れる中、ひとり解放軍への参加に異を唱えるソフィア。その意見を汲んでか、街を守ることを決定した自警団は、解放軍と交戦状態に。後方での「支援」狙撃を任されたソフィアは、復讐、そして娘の奪還を目指して将校の姿を探すが…?

GROUNDLESS : 1-隻眼の狙撃兵- (アクションコミックス)影待蛍太:双葉社

隻眼のスナイパー

ちょっと前置きが長くなりましたが、そんな出だしの「GROUNDLESS(グランドレス)」。1巻の3分の2ぐらいまで、悲劇の女性スナイパー・ソフィアの復讐劇が描かれます。

実は超正確な狙撃の腕を持つソフィア。敵を油断させるため、味方まであざむいて隠した実力を、自警団と開放軍の戦いで解禁。次々とヘッドショットを決め、一気に戦場の主役へと躍り出ます。(※ネタバレごめん。ただこれを書かないと以降の説明ができないのでご了承を。)

影待蛍太「GROUNDLESS」3巻
[影待蛍太 著 双葉社「GROUNDLESS」3巻より引用]

この「戦場における狙撃手」の存在が、リアルで興味深い内容。「GROUNDLESS」の兵器は実在の戦争に例えると、第一次世界大戦ぐらいのものでしょうか。戦車や航空機もありますが、小銃を携行した歩兵がまだまだ戦闘の中心。

その中で味方に腕のいい狙撃兵がいるかどうかは、戦局を左右する大きな要素。その役割を、伏兵とも言うべきソフィアが担い、驚異的な活躍を見せていく。1巻の大きな見どころです。

島を舞台にした戦場群像劇

ソフィアの復讐劇は、1巻中盤でひとまず終わり。1巻後半からはダシア自警団の戦いに物語はシフト。市民の暴徒化を抑えるために、まずは食料源を確保。近隣の穀倉地を接収することに。

武装はしていても、所詮は「自警団」である彼ら。そのメンバーは軍隊経験者から一般市民レベルまで様々。しかし徐々に混迷に巻き込まれていく島内で、銃を手に取る他は選択肢が無い。

影待蛍太「GROUNDLESS」2巻
[影待蛍太 著 双葉社「GROUNDLESS」2巻より引用]

そして目指す穀倉地では、開放軍の参謀による罠にかかり、絶体絶命のピンチに。果たして彼らは生き残ることができるのか?という緊迫の戦いが展開されます。このミリタリー描写、戦術や兵士の動き、兵器の運用などが、実にリアルで迫力あり。まるで自分が戦場にいるような高揚、はたまた恐ろしさを感じます。

さらに巻を重ねるにつれダシア自警団の戦いのみならず、開放軍や島軍の兵士の思惑・心情も物語はクローズアップ。主体はあくまでもダシアですが、単純に正義VS悪という戦いではない。戦局がフラットに描かれ、一つの戦史をなぞっているかのような気分に。俯瞰的とも言える物語展開に、グイグイと引き込まれていきます。

ソフィアの行き着く先は…?

1巻後半以降、戦場群像劇へとその姿を変える「GROUNDLESS」。その中でも目を離せないのは、やはりソフィアの存在。

復讐を果たし一度は戦列を離れるも、取り戻した娘を夫の親族に取り上げられ、再び自警団に復帰。驚異的な狙撃の腕前で、ダシア自警団の要となっていきます。

影待蛍太「GROUNDLESS」4巻
[影待蛍太 著 双葉社「GROUNDLESS」4巻より引用]

しかし街のため、仲間のために引き金を引けば引くほど、血塗られていくその手。相手兵士たちからも恐れられ、憎まれていくソフィアは、戦いが終焉を迎える時、果たしてどのような人間になっているのか。どのような気持ちで娘を抱くのか。

戦争という抗えない渦に巻き込まれた彼女が、辿り着く場所。戦争の行方とともに、物語で大きく気になるところです。

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まとめ

以上、影待蛍太さんの「GROUNDLESS」8巻までのレビューでした。

一度読み始めると一気読み必至のミリタリー・ドラマ。1巻の復讐劇はもちろん、2・3巻で描かれる穀倉地の戦いは圧巻。特に2巻終盤は震える展開が待っているので、まずは1・2巻を手にとってみてください。

8巻の巻末では、物語もいよいよクライマックスへ向かうという告知が。9巻の刊行が待ちきれません。

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