大切な人を失った義理の姉妹。明るく、楽しくも、どこか漂うせつなさ―。
くずしろさんの描く漫画「兄の嫁と暮らしています。」。
7月25日に待望のコミックス第3巻が発売されました。
いつも楽しみにしている漫画の一つ。
発売日に速攻読みましたが、満足の読後感。安定感あっていいですね。
というわけで1~3巻を読んでのレビュー。
「兄の嫁と暮らしています。」レビュー
概要
主人公は高校生の志乃と小学校教師の希(のぞみ)。
二人を結びつけていたのは志乃の兄であり、希の夫であった大志(たいし)。
ですが大志は仕事中に突然死してしまいます。
志乃にはすでに両親もいない、という状況で、彼女との同居を躊躇なく選ぶ希。
「他人だけど家族」。
そんな兄嫁と義妹の同居生活が、「兄の嫁と暮らしています。」ではゆっくり、やさしく描かれます。
連載はスクウェア・エニックスより刊行のヤングガンガン。単行本は現在1~3巻まで発売、以下続刊。
下記より1~3話及び最新話が試し読みできます。
ユーモラスなやりとり
1・2巻と良い雰囲気で巻を重ねた「兄の嫁と暮らしています。」。
3巻も引き続き全巻までの空気そのままに、なおも安定のクオリティ。面白いです。
まず引き込まれるのは軽妙でユーモラスな会話。
今時女子高生の志乃、なんでもできる有能さを持ちながら天然な希、そして志乃の友人たち。
彼女たちが軽いノリで繰り出す言葉のジャブが、読者のボディにジワジワ来ます。
作者のくずしろさんは4コマ漫画も描かれているのですが、4コマ的なテンポなのでしょうか。
軽妙なやり取りが心地よくって、つい笑ってしまいますね。クセになるおもしろさ。
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物語の根底にある「悲しみ」
しかし物語の根底に常に流れるのは、兄を、そして夫を失った、二人の女性の悲しみ。
日常の笑いの中に垣間見える、何気ない行動や出来事の中に潜む寂しさ・やるせなさの描写が秀逸で、キュッと胸を締め上げるような感覚を覚えます。
「笑ったあとにふと気づく、一抹のさみしさ」みたいな表現が実にウマイ。
セリフで多くは語らないけれど、表情や目線・仕草でキャラクターの心情を類推させる、いや類推せざるを得ない描き方。
ページを、コマを何度も読み返したくなるその魅力。漫画読みとしてはたまらないおもしろさがあります。
義理の姉妹、その絶妙な距離感
そして志乃と希の距離感の描き方が絶妙。
戸籍上は姉妹だけど、血のつながりはなく、同居の必然性もない二人(同義的なものは別にして)。
「一緒に住もう」という希に甘えているけど、本心では希に幸せになって欲しいと願う志乃。
一方、望んでする彼女との同居だが、それは志乃に亡き人への面影を重ねるがゆえを自覚する希。
そんな二人が日々の暮らしを重ねる中で、傷を癒やしながらまた新たな絆をつくり、少しずつ心の距離を縮めていく。
その様子がゆっくり、あせらず、丁寧に描かれていて、実に読ませます。
「兄の嫁と暮らしています。」、笑った後、残り香のように、ほどよく切なさが残る読後感を味あわせてくれます。
まとめ
以上、漫画「兄の嫁と暮らしています。」1~3巻のレビューでした。
くずしろさんは百合漫画(女性同士の恋愛を描いた漫画)も手がけられており、本作も百合系統に属するという評価を時折見かけます。
「兄の嫁と暮らしています。」も女性二人が主人公ですが、個人的には百合漫画とはちょっと違うのではないかと感じます(あまり詳しくないけど)。
なので、そっち方面を期待して読むと少し肩透かしを食うかも?
逆に一般漫画の部類に入る方だと思うので、多くの人が楽しめる作品です。
ぜひ読んで、その絶妙な空気に浸ってください。
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