かわいい絵柄で恐怖の展開、しかしシュールな笑いで独特の読後感を与えてくれる、「死人の声をきくがよい」でおなじみのうぐいす祥子さん。
その2冊めの短編集となるホラー漫画集「悪い夢のそのさき…」を読みました。
カバーでリコーダーを吹く男の子を怪しく見つめるのは、ゆるきゃら「タマッシー」くん。カワイイですね!(棒読み)
「悪い夢のそのさき…」感想・レビュー
概要
ホラー短編集「悪い夢のそのさき…」は、以下の10編を収録。
- 悪い夢のそのさき… 第1話 ぼくとタマッシー
- 悪い夢のそのさき… 第2話 古屋の染み
- 悪い夢のそのさき… 第3話 彼女のスーツケース
- 悪い夢のそのさき… 第4話 私の友達
- 悪い夢のそのさき… 第5話 雨の夜の降霊祭
- 恋の亡霊
- 囚われ人
- 同級生
- 旧友
- 死体と暮らすな子供たち
「悪い夢のそのさき…」は全5話ですが、おそらく掲載誌が同じという括りで、各話に特に関連はありません。
いい意味でモヤモヤの残るホラー
行方不明のお父さんの代わりにあらわれたゆるキャラ。
壁に浮かび上がる奇妙な模様。
死んだ子供の魂を呼び寄せる降霊術。
数多くのホラー短編を手がけられているうぐいす祥子さん。各話、短めのページ数ながら、オーソドックスなホラーが展開されます。
そしてラストは…。「ああ、そう来たか」と、どれもニヤリとするものばかり。
うぐいす祥子さんのホラー漫画は、ホラーの体をしているけど、どこか笑える要素があります。本作でもその系統の作品はいくつかありますが、今回は読後にちょっとモヤッとする漫画が多かったような。
というのは、イヤなモヤモヤではなく、「登場人物たちはこの後どうなってしまうのだろう?」という想像をせずはいられないモヤり方。
読み終わると、そんなことを考えながらちょっとニヤリとしたり、はたまた背筋が寒くなったり。深みのある、不思議なホラー感を味あわせてくれます。怖面白い!
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注目作品
そんな「悪い夢のそのさき…」から、個人的に特に印象に残った漫画をご紹介。
第3話 彼女のスーツケース
美人だがエキセントリックな彼女に、「飼い犬が死んだから埋葬してあげたい」とスーツケースを運ばされる彼氏。
穴を掘って埋めるように頼まれるが、果たしてその中身は…?
うぐいす祥子作品らしい展開。…と思いきや、グルッと世界が回るようなラスト。シンプルと複雑さが入り混じった作品。面白い。
囚われ人
古い洋館に盗みに入った男女。見張りをしていた彼女は、帰ってこない男を心配して屋敷に足を踏み入れる。
そこには鎖に繋がれた若い男、そして包帯まみれの醜い男が…。
どっちがいいヤツでどっちが悪いヤツなのか。想像通りの展開が繰り広げられるが、「その先」の描き方が秀逸。
そしてラスト、主人公に降りかかる恐ろしい現実。このモヤモヤ、最高に後味が悪くて素晴らしい。
死体と暮らすな子供たち
ゾンビとなった両親と暮らす、幼い姉弟。食料も底を尽き、恐る恐る街へ。そこはゾンビが徘徊する死の世界だった。
そしてスーパーでゾンビたちに囲まれた姉弟は…。
うぐいす祥子さんらしいグロテスクな表現と、表裏一体のコミカルさが、一番発揮されている作品。ラストの姉のモノローグが最高。不思議な読後感が残ります。
まとめ
以上、うぐいす祥子さんのホラー短編集「悪い夢のそのさき…」感想・レビューでした。
ホラーということで耐性の無い方にはオススメしませんが、個人的には怖さと笑いが共存した面白い漫画だと思います。
ホラーは苦手だけどちょっと読んで見ようかな?という方が読まれると、新たな地平が開くのではないでしょうか。なお責任は取れませんのでご注意を。
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