コメディ・ホラー漫画「死人の声をきくがよい」―物言わぬ美少女の霊は何を訴える?

不幸体質な主人公の傍らによりそうヒロインは、「物言わぬ幽霊」。彼女がジェスチャーで訴えかけるものは…?

オカルト・ホラー漫画「死人(しびと)の声をきくがよい」。作者はうぐいす…あ、間違えた。ひよどり祥子(さちこ)さん。2019年2月に刊行された12巻を持って完結した人気ホラー作品です。

「死人の声をきくがよい」感想

あらすじ・概要

主人公は、極端な受け身で不幸体質、死人が見える高校生・岸田純。死霊に近づくと鼻血が出る体質で、オカルト研究会会長・式野の強引な行動や、何故か引き寄せてしまう怪奇現象により、毎回ピンチに陥ります。

そんな彼の窮地を救うのは、幼馴染みの少女・早川涼子、の「霊」。岸田くんの傍らに常に寄り添い、無言・無表情ながら「ジェスチャー」で彼に危険を知らせてくれます。

そんな二人が毎回、恐怖の出来事に遭遇するのが「死人の声をきくがよい」の基本的な構図。多くの回は1話完結ですが、時おり2話・3話とシリーズ的に続くこともあります。

なお早川さんは危険を察知したり、その回避方法を示すことはできるのですが、いかんせん「喋らない霊」なので、身振り手振りでしかそれを岸田くんに伝えられない、というのが物語のミソ。怖いけどなぜか笑ってしまう、というホラー・コメディです。

妖艶な雰囲気が漂うオカルト・ホラー漫画

「死人の声をきくがよい」は、全体的に暗い雰囲気の、ベーシックなオカルト・ホラー漫画。ですがただ暗いというだけではなく、全編から漂う妖艶な雰囲気がその最大の特徴。

ひよどり祥子さんの安定感のある作画により、岸田くんや早川さんのような主人公格の描写は非常に美麗。黒を基調とした色合いも相まって、一コマ一コマをじっくり見ると、ハッと息を呑むような美しさがあります。

その美麗さとは対象的に、恐怖を演出するホラー表現はグ口成分高めで容赦のないもの。これは慣れればなんてことは無いのですが(多分)、耐性の無い人は少しご注意を。いや、慣れればなんてことは無いんですよ…。

心霊ヒロイン・早川さんが面白い!

「死人の声をきくがよい」の主人公は岸田くんですが、役割としては狂言回し的な存在。積極的に何かを求めたり、解決するという立場ではありません。ですがその不幸体質ゆえに、毎回事件発生。死にそうな目に遭います

その窮地を救うのは心霊ヒロイン・早川さん。霊が見える岸田くんのもとにどこからともなくあらわれ、ジェスチャーで危険や解決手段を伝えます。

両手を前に出して「進むな」のポーズをしたり、発見したものを指し示したり。時にはランニングの格好をして走れ!と促すことも。指差しのポーズに岸田くんが「がきデカ?」と突っ込んだのには笑ったw(※秋田書店つながり)。

そんな早川さん、実は「1話ですでに殺されてしまっているヒロイン」(ネタバレ風味でごめん)。なぜ彼女が岸田くんのそばにいるのか?、というのは全くの謎。しかし非実在なのに、不思議と存在感のある稀有なキャラクターです。

物語を引っ張るサブキャラクターが強烈

岸田くん・早川さんと共に物語を引っ張る、準レギュラーたちも粒ぞろい。

メガネで美人、スタイルバツグンだけど自己中で傲岸不遜、自分が助かるためならば他人を犠牲にしても構わない、というオカ研会長の式野さん

リアルに霊能力を持ち取り憑かれ体質、様々な事件に巻き込まれて不幸にも干され気味なダーク系アイドル・魔子ちゃん

そして岸田くんに一方的な恋心を抱く美少女殺人鬼・ゴーストなど。

これら準レギュラーたちがコミカルに立ち回ることで物語に奥行きを産み出し、また殺伐としすぎない「死人の声をきくがよい」独特のコミカルな空気を作り上げています。

特に注目なのは、自分勝手過ぎる式野さん。異常なほど自己中、行動力のあり過ぎる彼女のせいで岸田くんは何度も死にそうになるのですが、なんか憎めないんだよなぁ…。

オカルト・ホラーネタが幅広すぎる

そんなキャラクターたちが遭遇する恐怖案件は、心霊・怪奇現象にとどまらないバラエティに富んだもの

都市伝説・宇宙人・謎の生物・伝説のモンスター・妖怪・パラレルワールド・犯罪・病原菌・カルト宗教など、オカルト・ホラー分野に属しているものならほぼ網羅しているといって過言では無いほどの多彩さ。

3巻収録の「粘土マンが来る!!」や5巻収録の「不気味な絵」など、ちょっと不思議系の話は、他のホラー漫画ではなかなか味わえない面白さ。ホラーでここまでのジャンルをカバーしている漫画は、決して多くはないでしょう。「死人の声をきくがよい」の大きな魅力です。

また毎回どんな恐怖現象が起こるかわからないので、常にドキドキ。コミカルな描写も交えつつ、怖い部分はきっちり怖く。各話ちゃんとオチがつき、満足の読後感があります。

常々、ホラー漫画とギャグ漫画は紙一重だと思っています。怖い表現が過ぎると笑いに転化してしまうというか。しかし本作はその加減が絶妙。バランスのいいホラー感があります。

これは作者・ひよどり祥子さんのセンスと計算だと思うのですが、各話とも自然な流れで読みやすく、かつ恐ろしい。毎回、安定して岸田くんが死にそうな目に合うのがいいですね(笑)。

最終12巻の結末は…

そんな「死人の声をきくがよい」も、12巻を持っていよいよ完結。収録の各話ではこれまでに積み上げられたパーツが回収・消化されながら、世界の危機へと発展

そして迎えたラストは…。

このブログはネタバレサイトじゃないので詳細には触れませんが、ちょっと賛否両論があるかもしれないですね。が、私は好きです。「死人の声をきくがよい」らしさがある、というか。

個人的には、岸田くんと早川さんの不健全(?)な関係に、ひねりの効いた決着を付けたところを評価したい。

まとめ

以上、ひよどり祥子さんのオカルト・ホラー漫画「死人の声をきくがよい」感想でした。

内容的に決して一般向けとは言い難い作品ではありますが、読めばそのおもしろさにヤミツキになることうけあい!な漫画です。何より10巻を超えてもマンネリ感がなく、高いクオリティを保っているのがスゴイ。

バラエティに富んだストーリーで、毎回笑いとドキドキが複雑に交錯する全12巻。どの巻を読んでもあますところなく楽しめる、オススメのホラー漫画です。

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