地図を握ったら、街へ飛び出せ!そこにはきっと、見たことのない風景がある。
衿沢世衣子さんのポップな雰囲気が存分に楽しめる、街歩き漫画『ちづかマップ』のレビューです。
地図を片手に、今にもこちらに向かって駆け出してきそうな女の子が、主人公の鹿子木ちづか。これぞ衿沢ヒロイン!な魅力に満ちあふれています。
『ちづかマップ』概要
東京に住む女子高生・鹿子木ちづか(かのこぎ・ちづか)は、大の古地図好き。そんな彼女が地図を片手に、幼なじみの三四郎や祖父・善七とともに東京や地方の名所を訪ね歩く姿が、『ちづかマップ』では描かれます。
実は『ちづかマップ』には、新版と旧版があります。
こちらは講談社から発売されている旧版・全1巻。雑誌「メフィスト」で2007年~2009年に『尋ネ人探偵』として掲載されていたものを改題、『ちづかマップ』全1巻として刊行されました。
『ちづかマップ』旧版(講談社版)は全5話。連載時のタイトル『尋ネ人探偵』の通り、1・2話は人探し要素もあるライトな探偵風味。3話以降は街歩きがメインとなり、ちづか・三四郎コンビの街探索が描かれます。
そしてこちらが、小学館より発売されている新版『ちづかマップ』。
講談社版『ちづかマップ』をリブートしたもので、「凛花(増刊flowers)」に2010年~2015年にかけて連載。ちづか・三四郎・善七など、基本的なキャラクターは同一。細部の設定が変更され、より街歩きに特化した内容になっています。
新版は完全に街歩きに特化。ちづかたちレギュラーメンバーに加え、ちづかの従妹や友人たちなど、準レギュラーが登場。地図を片手に街を、田舎を駆け巡る、彼女らの冒険が全3巻で展開されます。
『ちづかマップ』レビュー
読むだけで「お出かけ気分」
衿沢世衣子さんの漫画、楽しいんですよね。さらりとした線で描かれるキャラクター達を見ているだけで「ほわっ」となる。
この『ちづかマップ』はそんな衿沢作品のゆるふわな雰囲気に、「街歩き」要素をプラス。ちづか達が訪れる街の風景や土地にちなんだ知識が、ストーリーに絡めて描かれます。
作中で描かれる歴史や文化は、綿密な取材に基づいたものなのでしょう。とても緻密に描かれるもの。しかしクドく成りすぎずに、物語とうんちくが丁度いいバランス。サラリと読めてためになります。
絶妙のヴァーチャル感
ちづか達の行動に沿って描かれる街歩きが、絶妙のヴァーチャル感を持って描かれるのも、『ちづかマップ』の大きな魅力。
例えば2巻収録の第六話「王子」編。落語を見たことをきっかけに、落語「王子の狐」の舞台・王子(東京都北区)を散策することになったちづかと同級生の竹井さん+三四郎。
明治時代から続く老舗の甘味屋 → 王子稲荷神社 → 名主の滝公園 → 和菓子店(狸屋)とめぐり、さらにおじいちゃんに頼まれた卵焼きを買いに、卵焼き店「扇屋」へ。
この卵焼きが実においしそうで…は置いといて、さらに音無親水公園 → 飛鳥山公園のモノレール・アスカルゴに乗って飛鳥山(高台のような標高)山頂へ向かう一行。
時に気の向くままに、時に歴史の足跡をたどって描かれる街歩きが、実に楽しそう。私は上記の土地へは行ったことがないのですが、まるで自分が訪れたかのような一体感を、漫画から感じました。
ゆるふわでありながら、細かい描写にも手抜き無し。それゆえに受けるヴァーチャル感に、漫画と街歩き、2つの満足を感じます。
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地方の街歩きも
東京人じゃないと楽しめないんじゃないの?と思われる方もいるでしょう。しかし『ちづかマップ』に抜かりなし。確かに基本は東京やその周辺ですが、時々地方編も描かれます。
第四話「近江編」ではびわ湖バレイや周辺の寺社仏閣など、びわ湖を中心とした滋賀探訪。第八話「紀州編」では従姉妹たちと和歌山の世界遺産めぐり。第十三話では「兵庫・坂越(さこし)編」では、兵庫と岡山の県境の一人旅、そしてひと夏の出会い(?)が。
そんな地方編を読みながら、「もし、ちづかがわが町に来たら、どの辺を散策するかな?」なんて想像しながら読むのも、また楽しいものです。
もちろん丁寧に描かれる東京の文化も、興味深く面白い。現住の方でも「ちつかマップ」を読むと、きっと新しい発見があるでしょう。
レビューまとめ
以上、衿沢世衣子さんの漫画『ちづかマップ』のレビューでした。
考えたら、高校生ぐらいの年齢ってお金はそんなに持ってないけど、自由がありましたね。私ももっと、色んなところに探検に行けば良かった…。
いや、今からでも遅くはない!知らない街に出かけるときっと楽しいことがあるはず!
と、そんな気分にさせてくれる楽しい漫画が、『ちづかマップ』。漫画で街歩きを体験したあと、ちょっとお出かけしてみようかな、という気持ちになる作品です。
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