不幸続きの派遣OLが、キャンプ場で出会った「何か」。それは人か?猿か?それとも―。
民俗学や都市伝説をベースに、リアルな筆致で「魔」を描き出すオカルト・ホラー漫画。宮尾行巳さんの『怪異界(かいいかい)』感想・レビューです。
連載は日本文芸社の漫画アプリ「マンガTOP」。2024年8月現在、単行本1~3巻が刊行中。以下『怪異界』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『怪異界』あらすじ
派遣切りにあい、人生に絶望したOL・稲生玲(いのう・れい)。死を求めてひとり、人食い妖怪「山客(さんきゃく)サマ」伝説のある、「攫猿山(かくえんざん)」のキャンプ場を訪れる。
その夜、玲を襲う「猿のような異形」!そこをオカルトライター風の男に助けられるが、その男もまた「人ならざる雰囲気」を放ち、やがて姿を消してしまう。
かくして「山客サマのエサ場」に一人となった玲。不気味な妖怪たちに囲まれるが、異形の姿へと変貌した「あの男」が現れ、次々と山客サマを喰らってゆく!果たして男は何者なのか?そして玲の運命は…?
『怪異界』感想・レビュー
巨大な化け物の正体は…
『怪異界』第一話で、薄幸のOL・玲が遭遇した「人知を超えた怪異」。その正体は…「ヌエ(鵺)」。猿の頭・狸の胴・虎の手足・蛇の尾、そして腹部に巨大な口を持つ、伝説の妖怪。
↑1巻カバー、主人公・玲の横で恐ろしい姿を見せるのが、そのヌエ。自身を「何者でもない”何か”」と語り、「こっちの世界に関わるな」と恐ろしい形相で玲を山から遠ざけます。
そして恐怖の一夜を過ごし街へと戻った玲は、しかし意外な形でヌエと再会。なんとヌエの方から玲の部屋へ転がりこんできた!(しかも素っ裸でw)あんた、「こっちの世界に関わるな」言うてたやん!
ホラーだがコメディ風味が面白い!
そんな恐ろしくも奇妙な妖怪・ヌエと出会った玲は、「”なにか”から”何者か”になる」、つまり「人間になりたい」彼と同居。すったもんだあって、「怪異の解決屋」として活動するように。
その中で二人はオカルトの絡んだ数々の怪異に遭遇、恐怖の渦に巻き込まれる…のですが、その過程で描かれる、玲とヌエのすっとぼけたコミュニケーションが、ホラー漫画らしからぬコミカルさで奇妙に面白い!
幸薄そうな雰囲気ながらも意外にバイタリティのある玲と、マッチョな見た目で妙に人間臭いヌエ(バナナ好き)。ツッコミどころ満載な二人のやり取りに、思わず笑いがこぼれます。
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オカルト・ホラーとしてもしっかり怖い
もちろん『怪異界』はオカルト・ホラー漫画。怖いところはしっかり怖い!
『五佰年BOX』『アンダープリズン』などの過去作でも発揮された、作者・宮尾行巳さんのリアルな筆致。そこから生み出される怪異・怪奇現象の数々にはきっちり「恐怖」が織り込まれ、クオリティの高いホラー感あり。
扱われるオカルトネタも、民俗的怪異現象から「一人かくれんぼ」のような近代都市伝説まで幅広く、チョイスもユニーク。幅広い恐怖体験が楽しめます。
そこに「玲の秘められた過去」も絡んできたり、ヌエの性質に変化も起こってきたり。高い画力と気になるストーリーに惹きつけられ、二人の行き着く場所が気になる!漫画。読み応えのあるホラーです。
感想・レビューまとめ
以上、宮尾行巳さんの漫画『怪異界』感想・レビューでした。
ガチガチのオカルト・ホラーかと思いきや、随所に織り込まれたコメディ要素が絶妙なバランスを形成。良い意味で意外な読み心地・満足感のあるホラー・ドラマです。
リアルな作画ながらホラー描写も程よくマイルド(※個人的感想)で、「怖すぎるのはちょっと…」という方にもオススメ。玲とヌエのこれからの「恐怖の冒険」に期待!
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