夢やぶれて傷つきながらも、新しい夢へ向かって歩きだす若者たち。その15歳から18歳までの輝ける青春を注ぐのは、新たな舞台「生徒会」。
相田裕(あいだ・ゆう)さんの学園漫画『1518!(イチゴーイチハチ!)』。学生生活の縁の下の力持ち「生徒会活動」に情熱を傾ける高校生たち描く、異色の青春群像劇です。
連載は小学館の漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」で、全7巻完結済み。以下、『1518!(イチゴーイチハチ!)』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『1518!(イチゴーイチハチ!)』あらすじ
『1518!(イチゴーイチハチ!)』の舞台となるのは、私立松栢(しょうはく)学院大学附属武蔵第一高校、通称「松武(しょうぶ)」。
県内トップの公立校を受験する学生たちの併願校で、そのモットーは「受験で負けたが高校生活では負けない」。ゆえに松武の生徒は気概のあるものばかり。
運動面でも学力面でも、全体的に向上心の強い生徒が集まっているその高校で、女性生徒会長、新入生の丸山幸・烏谷公志郎ら生徒会の仲間たちを中心に、生徒会の活動がつぶさに描かれていきます。
『1518!(イチゴーイチハチ!)』レビュー
私立高校の「気概ある」生徒会
学校生活において重要な役割を持ちながら、一部の生徒以外はその存在や活動を意識することのない生徒会。ですが、
- 目安箱の投書から、アイスの自動販売機設置を目指す「アイス大作戦」
- お祭り的な雰囲気を持つ学内行事「新歓マラソン」のサポート
- 生徒総会に向けた地味だけど辛い準備と「余興」の製作
などの地道な活動を通し、「学校の裏方の中心」として学生の生活を支えていく。その様子が生徒会メンバーたちの熱い気持ちとドラマを混じえて、丁寧に描かれていきます。
少年少女の挫折と成長
そんな学生生活の「縁の下の力持ち」である生徒会。目立つ存在ではないけれど、役員たちが矜持を持って活動、成長していく過程が、興味深くも面白い!
- 部活に情熱を持てず、受動的に生徒会に入った幸
- ケガで選手生命の危機を迎え、成すべきことを見失っていた公志郎
- 男子との体格差に絶望し、野球の道を諦めた会長
かつて挫折を経験した彼・彼女らが、生徒会の活動に真剣に向き合い、仲間たちと交流を通して成すべきことを見つけ再生、そして前を向いて歩き出していく。
そのプロセスが、読者に静かな感動と情熱の心を与えてくれます。
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主人公・公志郎の変化と成長から目が離せない!
そんな『1518!』、実は人によっては少し難しい漫画かもしれません。というのは、「公立進学校の受験に失敗したが、比較的優秀な学生が通う高校の雰囲気」をどれだけ理解できるかが、物語を楽しめるカギだから。
学生生活の経験は人それぞれなので、その雰囲気が伝わらないうちは少し「?」な部分もあるでしょう。しかし幸・公志郎・会長たちが生徒会活動に奔走する様をじっくり読み進めると、確実にじわじわと伝わってくるものがあるはず。
その中でも印象的なのは、元・野球少年である公志郎の変化と成長。1巻で生徒会に入り、2巻で新歓マラソンの旗手を務め、3巻で生徒総会の準備に奔走と、スポーツ漬けの部活時代とは全く異なる学生生活を送る彼。
入学当初は「野球」という目標と希望を失っていた彼が、しかし幸たちの温かな心に見守られながら、徐々にその内面を変化。新たに進むべき方向へと向かっていきます。
そして4巻で、松柏生として、生徒会の一員として、野球部の応援をすることになった公志郎。その心境に大きな動きが…?彼の家族も含めた、若者の変化と成長に、心を大きく揺さぶられます。
そんな公志郎をお姉さん的な?感情で見守っていた幸。公志郎を間近で見ているうちに、その胸の内に湧き出るものが…?学園ものならではの甘酸っぱい展開も見逃せない!(笑)
レビューまとめ
以上、生徒会メンバーの活動と成長をこれでもか!と丁寧に描く漫画、『1518!(イチゴーイチハチ!)』レビューでした。
青年誌連載ですが決してノスタルジックな空気を醸し出すものではなく、むしろ今を生きる力を読み手に与えてくれる、良質な青春漫画です。
残念ながら本作は、商業的にはあまり成功しなかった作品のよう。第7巻のあとがきや相田裕さんのツイートを見るに、志半ばでの完結であることが窺えます。
では漫画のクオリティが低いかというと、そんなことは全くなく、むしろ近年稀に見る、読み応えのある青春物語。各巻それぞれ、そして全7巻全体を通して、大きな感動と満足の読後感を味わえます。
ちなみに「1518」というキーワード。「15歳から18歳までの高校生活」を示しますが、それ以外にも作品の中で随所に現れます。どこに登場するのか?は、ぜひ本編を読んで探してみてください!
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