かつて徳間書店から出版されていたマンガ雑誌「月刊少年キャプテン」。ご存知でしょうか?
「キャプテン」自体は知らなくても、『強殖装甲ガイバー』や『宇宙家族カールビンソン』が連載されていた雑誌、と言えばわかる方もいるでしょうか。
今はビッグコミック系で活躍されている、星里もちる氏も連載をしていました。
そんなキャプテン誌で、個人的に特にインパクトを受けたマンガが、たがみよしひさ氏の『GREY(グレイ)』。1985~1986年にかけて連載されていた、SFハード・アクション漫画です。
『GREY デジタル・ターゲット』としてアニメ化もされた『GREY』。今読んでも面白い、独特の魅力を持っています。
コミックスは徳間書店版全3巻がオリジナル。現在はぶんか社版・上下巻を読むことができます。
『GREY(グレイ)』レビュー
あらすじ
荒廃した世界。日々の暮らしにも事欠く「町(タウン)」の住人は「戦士(トループス)」となり、管理コンピュータに指定されたバトルに身を投じる。
その目的は「市(シティ)」で生活を保障された「市民(シチズン)」となること。そのポイントを稼ぐため、今日もタウン同士の戦いに明け暮れる。
そのトループスだった恋人・リップを亡くした主人公・グレイは、自身もトループスに。驚異的な生還率を見せ、「死神グレイ」と呼ばれるように。
着実にランクを上げるグレイだったが、行方不明になった友人・レッドを探すために、相棒・ノーヴァとともにタウンを出奔。
タウンに反抗する地下組織(レジスタント)と相まみえるうちに、やがてグレイはタウンやシチズンの存在に疑問を抱いていく―。
ニヒルな主人公・死神グレイ
荒廃した世紀末の殺伐とした空気の中で展開される、ミリタリー・アクションSF『GREY』。
そんな世界で「死神」とあざなされるグレイは、誰もが一目置く存在。ニヒルで世の中を斜めに見ている感じが、実にカッコよい!主人公。
少年誌連載ながら、少年漫画の王道とは真逆をいくキャラクター性を持つグレイ。セクシーなその魅力にシビれます。
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洒脱なたがみよしひさ節
たがみよしひさ作品共通の魅力は、その洒脱な会話にあり。
ともすればちょっと痛々しくなりそうなセリフを、いい感じに「カッコいいライン」に留める。その絶妙なさじ加減が、たがみよしひさ氏のセンスの光るところ。
もちろんGREYも読んでてニヤリとするセリフまわしばかり。
連載当時、中二病真っ盛りの心をわしづかみにされたことを思い出します。特に上巻終盤の戦闘中に交わされる会話が好き。
敵襲を受け、シャワーから飛び出してきた相棒・ノーヴァとグレイのやり取り。
「パンツをはいたらどうして死ぬのよ!?」
「おれのやる気がなくなる」
「なるほど…」
とかねw。
独特のメカ描写と緊迫のアクション
スカした(死語)キャラクターとともに、GREYの魅力を形作っているのが、若干アジアンテイストの入った独特なメカ描写。他のSF漫画と較べて異彩を放っていました。
序盤はバイクや戦車、自走砲など、ややクラシックとも言えるメカニックが中心でしたが、レジスタント「ナゴシ」の登場とともに、独自色を強めたメカデザインに。
仏像型の巨大浮遊ベース・ナゴシや、土偶・モアイを模したロボットなど、カッコイイわけではないんだけど、妙に味のあるメカたち。
そしてそれらと死闘を繰り広げるグレイ。息つく暇もない、小気味いいアクションが展開されます。
世界の秘密
『GREY』は前半と後半で大きめな転換のある構成。
前半はミリタリー色の強い内容。シティのソルジャーとして、戦闘に身を投じるグレイ。消息不明となった恩人・レッドを、相棒の女性ノーヴァとともに捜索するうち、レジスタントの存在を知るように。
そして後半では、ぐっとSF色を強めた展開へ。自らの生きている世界の秘密に触れたグレイはナゴシ、そして自分たちを支配する存在への戦いへと、その歩みを進めます。
世界に興味の無い体で、実はその奥底に熱い気持ちを秘めたグレイ。彼が戦いの末にたどりついたのは?その結末はぜひコミックスを手にとってご覧ください。
『GREY(グレイ)』まとめ
以上、たがみよしひささんのSFコミック『グレイ』のご紹介でした。
1985年から1986年の連載という、かれこれ30年以上前の作品ですが、今読んでも面白い、独特の魅力がある漫画です。何より、孤独なソルジャーであるグレイの生き様が、読み手の心を掴んで離しません。
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