人間とチンパンジーの交雑種(ハイブリッド)として生まれた少年。やがて成長しハイスクールに通うが、そこには偏見と”危険な予兆”が…?
うめざわしゅんさんの漫画『ダーウィン事変』。ヒトであり、ヒトでない、不思議な少年が主人公の、異色のヒューマン・ドラマ&サスペンスです。
連載は講談社アフタヌーン誌で、コミックス1~7巻が刊行中(2024年6月現在)。以下『ダーウィン事変』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『ダーウィン事変』あらすじ
カリフォルニアの生物科学研究所に武装して侵入した動物解放同盟(ALA)。研究用動物を逃がす最中に、流産しかけているチンパンジーを発見。動物病院に運び逃走する。
やがて生まれた赤ん坊は、人間とチンパンジーの交雑種「ヒューマンジー」であることが判明。高い知能と運動能力を持つ彼は“チャーリー”と名付けられ、人間の養父母のもとで成長する。
それから15年後、ハイスクールに通うことになったチャーリー。周囲から奇異な目で見られるが、とある出来事をきっかけに陰キャの少女ルーシーと友人になり、彼なりに学校生活を楽しんでいく。
しかしチャーリーが過去に起こした「ある事件」から、警察はその動向をマーク。またALAも密かにその成長に注目する中、ニューヨークで動物保護を名目にした凄惨なテロ事件が起こり…。
『ダーウィン事変』レビュー
「オンリーワン」な少年の物語
ヒトとチンパンジーのハイブリッド「ヒューマンジー」であるチャーリー。「動物愛護の象徴」として熱視線を注がれることもあれば、その特異性より保守層から攻撃の対象となることも。
「オンリーワン」な存在は望むと望まざるにかかわらず、世界にさざ波を起こしていくことに。
しかし世間の目などどこ吹く風。ハイスクールで偶然の出来事から、ナード(陰キャ)の少女・ルーシーと友人に。
育ての親・スタイン博士夫妻を含めて、交流を深めていくのですが、その様子が実に興味深く、また微笑ましいもの。このルーシーがいい子なんだわ…!
緊迫のサスペンス
チャーリーとルーシーが送る学校生活の一方で、合衆国内におけるチャーリーの法的立場、そして過去に起こした事件の顛末が徐々に明らかに。
それに反感を抱く住民たちとの軋轢も強まる中、さらに「人間と動物の中間」として彼をシンボルにしたい動物愛護組織ALAにより、世間を震撼させる大きな事件が発生。
その中心となるALAのリーダーは、動物愛護のためには過激なテロも辞さない危険な存在なのですが、その真の狙いは別のところにあって…?緊迫のサスペンスが展開されていきます。
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予想外のアクション
緊張が張り詰める中で、チャーリーはたびたび危険な目に遭うことに。そこで描かれるアクションが、『ダーウィン事変』ならではのもの。
チャーリーは「人間とチンパンジーのハイブリッド」ですが、実際には頭脳・肉体ともに両者を大きく凌ぐ存在。
「手のように」使える足、強靭なバネ、そして瞬発力を持ち、それが人間には成し得ない動きを生み出すことに。このアクション・シーン、実に迫力があって面白い!
銃社会・アメリカの中で、時には銃口にさらされることになるチャーリー。そこで驚異の運動能力を見せ、人間たちを翻弄していく姿に、手に汗握ること必至…!
新たな「視点」を得る感覚が面白い!
そして『ダーウィン事変』の面白さの本質は、緊迫のサスペンス&アクションの合間で描かれる「(読者の)チャーリーに対する視点の変化」。
人間の言葉をしゃべるが故に勘違いしてしまうのですが、チャーリーはあくまでも別種の生物。
大事なことは「彼が人間にとってどのような存在か」ではなく、「彼がどのような立場で、どのように世界を見ているか」。
その視点に気づいた時に、物語の見え方がガラッと変わってくる。最初はサイエンス色を強く感じる物語でしたが、次第に人間の本質や自身の考え方が試されている気分になる。そんな奥行きの深さを味あわせてくれます。
そんな物語の中心に位置するヒューマンジー・チャーリー。自らの思いとは関係なく動いていく世界の中で、彼はどのようなポジションに立っていくのか。そしてルーシーら人間たちは、彼とどのような関係を築いていくのか…?
レビューまとめ
以上、うめざわしゅんさんの漫画『ダーウィン事変』のネタバレなしレビューでした。
緻密な設定と構成で、非常にリアリティを感じる物語。チャーリーへの視点を変化させることで、物語の捉え方が大きく異なってくるのが実に面白い!
そして「もし自分がチャーリーの立場だったら?またはチャーリーの友人であったなら?」なんてことを頭の片隅に置きながら読むと、より面白みが増してくるでしょう。濃密なサスペンス&アクション&ドラマが楽しめる漫画です。
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