東京は亀戸で「立ち呑みが出来る設計事務所」を営む27歳。その名は「一級建築士矩子(かなこ)」!
鬼ノ仁(きのひとし)さんの漫画『一級建築士矩子の設計思考』。漫画としては珍しい「女性一級建築士」を主人公に、「本格建築」+「お酒のあれやこれや」が語られていきます。
連載は日本文芸社の漫画雑誌「漫画ゴラク」。2024年6月現在、コミックス1~3巻が刊行中。以下『一級建築士矩子の設計思考』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『一級建築士矩子の設計思考』あらすじ
20歳で青森から上京し、建築設計事務所に就職、のちに一級建築士として独立した古川矩子(こがわかなこ)。
東京・亀戸で、「立ち呑み併設の設計事務所」を切り盛りする彼女の「建築&酒飲みライフ」が、『一級建築士矩子の設計思考』で描かれていきます。
作者の鬼ノ仁さんは、実際に「一級建築士」「1級建築施工管理技士」の資格保有者であり、かつ成人向け漫画の作者としても長いキャリアを持つ、という異色の漫画家さんです。
『一級建築士矩子の設計思考』レビュー
本格知識が魅力の建築士漫画
建築うんちく、建築トラブル解決、成長物語、街歩き・飲み歩きなど、バリエーション豊かな『一級建築士矩子の設計思考』各話。
そのどれもに「実際に一級建築士の有資格者である作者」ならではの本格的な建築知識が、自然に織り込まれているのが、本作ならではの面白み。
建築関連の半端無い知識をもとにストーリーを作り上げ、それをハイクオリティな絵でダイレクトに漫画化、物語として楽しめるというのは、他の漫画では味わえないもの。
1巻序盤では建築要素を物語に組み込むため、相当試行錯誤されている様子ですが、それも徐々に落ち着きを見せるように。
物語の安定感と主人公・矩子の魅力的な造詣が、良い相乗効果を生み出しています。
興味深い「一級建築士」誕生物語
実はこの『一級建築士矩子の設計思考』、連載継続は「売れ行き次第」だったようですが、好評のため連載再開。
1巻刊行より約1年後、めでたく2巻が刊行されたのですが、その約半分を使って描かれる「矩子が一級建築士となるまで」が、とても興味深いもの。
「合格率10%前後」の狭き門を目指し、資格学校へ入学した矩子。そこで知り合った女性二人とともに働きながら勉強、やがて受験へと臨んでいく。
作者・鬼ノ仁さんが実際に通った専門学校を、本作のために取材。単に過程を追うだけでなく、矩子たちがどのような思考で受験と向き合ったのか?に面白さを感じます。
【ebookjapan新規限定クーポン】
内容はやや専門的?
そんな『一級建築士矩子の設計思考』、他に類例を見ないぐらい本格的な「建築士マンガ」なのですが、やや専門的・マニアックな内容。
「建築士探偵」的なエピソードもあるのですが、どちらかと言えば「エンタメ」よりは「うんちく・知識」の比重が高いように感じます。
1~2巻を読んだ限りは、
- 建築知識・業界に興味がある
- 建築士を目指している
- 設計や図面が好き
といった方にオススメしたい漫画です。
現在は3巻に向けて構想中とのことですが、今後は「実際の住まいに即した建築エピソード」や「グルメ・お酒関連」の充実も期待したいところ。
レビューまとめ
以上、鬼ノ仁さんの漫画『一級建築士矩子の設計思考』のネタバレなしレビューでした。
先述の通り、鬼ノ仁さんはエロ漫画業界でも大変著名な方。現在の絵柄はその頃の面影を残しつつも、洗練されてより美麗に。
そして何より、実際に一級建築士の資格をお持ちだという、多彩・多芸さに驚きます。他に類例を見ない唯一無二の作品。読むと新しい地平が開けるでしょう。
コメント