独特の作風で描かれたアジアの景色。こんな世界を気ままに旅行できたら―。
読みながら自然とそんな気持ちが湧き上がる、森泉岳土(もりいずみ・たけひと)さんの漫画「ハルはめぐりて」。
2016年にKADOKAWA / エンターブレインより刊行されている作品です。
森泉さんは水で描いた描線に墨を落とし、爪楊枝・割り箸などで細部を仕上げていくという、独特の表現技法で漫画・イラストを描かれる作家さん。
その作風、一度ふれたらやみつきになる魅力があります。
「ハルはめぐりて」レビュー
概要
漫画「ハルはめぐりて」の主人公は中学生の女の子・山渕ハル。
彼女がベトナムや台湾など、アジアを中心に一人旅をする様子が、特徴的な画風で写実的、かつファンタジックに描かれます。
本作は、森泉岳土さんの単行本「祈りと署名」に収録の連作短編「ハルはきにけり」の続編。
小学生だったハル、同作においては空想の中で世界を旅していました。
「ハルはめぐりて」で中学生になった彼女は単身、世界へ飛び出していきます。
アジアの国々を少女は巡る
というわけで少しだけ成長した少女・ハルが、ベトナム・台湾・モンゴル・そして日本と、アジアの国々を一人旅する様子を描く「ハルはめぐりて」。
ページをめくると、独特の技法で描かれた世界がブワッと広がり、ハッと息をのみます。
ベトナムの段々畑、台湾の町並み、モンゴルの平原…。
写実的、それでいてじっと眺めていると、どことなく幻想的な雰囲気が漂ってくる不思議な作風。
何度も繰り返し眺めたくなる魅力がそこにあります。
その風景を楽しそうに歩くハル。
彼女の飾らない、ありのままに旅路を楽しむ姿を見ていると、なんだか読んでいる方も旅をしているような気分に。
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味わい深いのセリフ・コマの数々
時おり彼女がつぶやくセリフも素敵。
「良い本を読むのと旅をするのは似ている」
(P28より)
ああ、そうなのかもしれないですね。
そしてこのあとに続く言葉がまた良いのですが、それは本書にてお楽しみください。
もともと空想癖のある彼女。そのせいでしょうか、旅先でも不思議な体験をして…?
ただの旅行記ではない、漫画ならではのおもしろさがあります。
森泉さんの漫画は「祈りと署名」や「夜よる傍に」など他作品もそうなのですが、一コマ一コマに本当に魅力が詰まっています。
それを眺めていると、その世界についつい没頭してしまいます。不思議。
…まあね、森泉さんの漫画の魅力をド素人が言葉で表現するのはホントに無謀なことなんで(笑)、実際の素晴らしさはぜひ手にとって感じてみてください。
きっと新しい漫画体験ができると思いますよ。
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