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漫画レビュー『ブランチライン』枝葉のごとく伸びる家族の群像劇

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母のもとから巣立った四姉妹は、枝葉が伸びるがごとく、その人生を豊かに広げていく―。

母と娘たち、それぞれの生活にクローズアップしたエピソードを中心に、女性や家族のあり方を描いていく家族群像劇。池辺葵さんの漫画『ブランチライン』レビューです。

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連載は祥伝社の女性漫画誌「FEEL YOUNG」。2024年6月現在、単行本1~6巻が刊行中。以下『ブランチライン』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。

『ブランチライン』あらすじ

山の上の一軒家で暮らす母。長男を一人で育てる長女。公務員の次女。喫茶店を営む三女。アパレル通販ショップ勤務の四女。そして彼女たちに囲まれ育った、長女の息子…。

そんな「家族」で構成される八条寺家の面々。現在はそれぞれ独立、社会で生活を送っているが、ときどき母のもとに集いゆるやかに交流する。その様子が作者・池辺葵さんの柔らかなタッチで紡がれていきます。

また女性たちだけでなく、四女・仁衣の同僚・山田くんや、長女の息子で八条寺家唯一の男子である岳の視点からも、物語が展開。家族やその周辺の人々の生活を「群像劇」的に描く、という性質も併せ持つ作品です。

『ブランチライン』レビュー

心地よさのあふれる姉妹たちの生活

姉妹・母・甥らが毎日の生活を、ごくごく「普通」に生きていく様子を綴る『ブランチライン』。

そのところどころで描かれる、家族や周囲の人々の思いやりや、何気ない成長を感じる瞬間に、フワッと光が差すような、明るく暖かな瞬間が印象的

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淡い線、ふんわりした絵柄・空気感に包まれた、流れるようなその日々に、何とも言えない心地良さを感じます。

何気に心を抉る出来事も…

が、世の中には決してハッピーだけが詰まっているわけではない。彼女たちの日常のそこかしこには突如、予想外に心を抉ってくる出来事が。

仕事や恋愛・結婚に対して「女性であるがため」に向けられる偏見。家庭環境から不意に投げかけられる心無い仕打ち。身近な人間との埋めようのない溝に傷つくことも…。

決してセンセーショナルに描かれるわけではないのだけれど、心に不意に楔を打ち込んでいかのような何気ない悪意・敵意に、読みながら気持ちがザワつく…!

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「ブランチライン」の意味するもの

それらを簡単に消化はできないけれど、しかし清濁併せ呑んで前を向いていく。家族がそんな味わい深い生き様を見せていくのが、『ブランチライン』の魅力。

悲しいこと、悔しいこと、眠れぬ夜もありながら、家族や友人たちと心を通わせ、顔を上げて新たな一歩を踏み出していく。その過程に感じる「強かさ」が心に残ります

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八条寺家の人々は血縁関係にありながらも、当然その生き方・考え方はそれぞれ異なるもの。タイトルにある「ブランチ(枝)」のように枝分かれしながら、各自の思うまま、しなやかに生きていきます。

ですが枝は「幹」があるから生まれてくるわけで。個性豊かな姉妹たちの生き様を遡ると、本流とも言うべき「幹」である家と母にたどり着く。幹があるからこそ、枝も先へ先へと伸びていける、そんな関係性が印象的。

豊かな漫画表現力が伝える感情

そんな家族の感情を伝えてくるのが、作者・池辺葵さんの豊かな漫画表現力

漫画に限らず、最近のエンタメ作品は、とかく人物の心情を「語りがち」な印象があります。が、そこをあえて「漫画」の枠組みで表現していくのが、池辺葵漫画の真骨頂。

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喜びや悲しみに出会った彼女たちが感じているものを、人物の表情や背景、コマとコマの「間」など、漫画ならではの表現で提示。それにより感情がより深く、胸の中に伝わってきます。

豊かな表現力と味わい深さを持つ『ブランチライン』、読めば読むほど、噛めば噛むほど「染みてくる」漫画。キャラクターの心情をじっくり味わってみてください。

レビューまとめ

以上、池辺葵さんの漫画『ブランチライン』のネタバレなしレビューでした。

じっくり読み込むも良し、サラリと読んで繰り返し読み返すも良し。落ち着いた雰囲気の中に込められた確かな感情とメッセージが、読む度にジワジワと伝わってくる漫画です。

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なお池辺葵さんの過去作では『プリンセスメゾン』もオススメ。「年収200万女性のマンション購入」+「女性と住まいの群像劇」が、豊か過ぎる表現力で紡がれる全6巻です。

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