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漫画『プリンセスメゾン』感想―柔らかに紡がれる「住まいと女性」の物語

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決して高年収では無いけれど、マンション購入に静かな情熱を燃やす独身女性・沼ちゃん

漫画『プリンセスメゾン』では、彼女とマンションギャラリーの人々の交流を中心に、「住まいと女性」が優しい筆致で描き出されます。

プリンセスメゾン(1) (やわらかスピリッツ女子部)

作者は『繕い裁つ人』『雑草たちよ 大志を抱け』の池辺葵さん。2019年1月刊行のコミックスをもって、全6巻完結となりました。

『プリンセスメゾン』感想・レビュー

概要

漫画『プリンセスメゾン』で描かれる物語の、軸は大きく二つ

一つは年収200万台の居酒屋店員・沼越幸(沼ちゃん)のマンション購入と、彼女と深い親交を持っていくマンションギャラリー社員たちの物語

プリンセスメゾン(2) (やわらかスピリッツ女子部)

もう一つはその合間合間にオムニバス的に描かれる、様々なシチュエーションの女性と住まいの物語。

それぞれの家庭事情・住宅事情・ライフスタイルなどを背景に、住まいの群像劇が展開。

沼ちゃんたちのストーリーを基本線として、女性と住まいの在り方が紡ぎ出されていきます。

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若き独身女性のマンション購入物語

オムニバス的に挿入される女性たちの物語も素敵なのですが、まずは『プリンセスメゾン』の本筋である、沼ちゃんのマンション購入物語をクローズアップ。

居酒屋の社員として働く20代半ばの沼ちゃん。親類はいるが両親はすでに無く、東京の築五十年を超えるアパートで一人暮らし。

プリンセスメゾン(3) (やわらかスピリッツ女子部)

年収200万円台ながら、マンション購入を夢ではなく、実現可能な目的として行動。理想の住まいを求めて、マンションギャラリーに足繁く通います。

勤続8年を超える居酒屋「じんちゃん」で懸命に働き、無駄遣いは一切なし。そしてマンション購入に関しては一切の妥協をしない、鉄の意志を持つ彼女。その一途さがとても魅力的なキャラクターです。

理想の住まいを手に入れた沼ちゃんは…?

そんな沼ちゃん、様々なモデルルームを見たけど、なかなか踏ん切りが付かない。

しかし物語中盤、彼女はついに理想のマンションに出会います

プリンセスメゾン(4) (やわらかスピリッツ女子部)

目を血走らせ、震える手で契約書に判を付く。マンションという高価な買い物をする彼女を、心配する周囲。しかし沼ちゃんの心境は、

「いつくるかわからない日を待つよりは、今のベストをつかみたいんです。」

ついに手に入れた「自分の居場所」にワクワクしつつも、自分の身の丈に不相応な高望みをしてしまったのではないか、と逡巡を見せる沼ちゃん。

でも今の幸せな気持ちを胸に頑張ろう、と前を向いて歩いていきます。

プリンセスメゾン(5) (やわらかスピリッツ女子部)

また住まいを愛する気持ちは、新居だけではなくこれまで住んでいた古アパートにも向けられる。

ひとり上京し、8年間暮らした部屋。引き払う前に、「8年間、ありがとう」と語りかけるその姿に、ジワリと来る。

マンションを手に入れてハッピーだけど、それだけではない、一人の女性の生き方。強い意思と優しい心を併せ持つ彼女の姿勢が、心を打ちます。

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心温まるマンションギャラリーとの交流

そのマンション購入物語と平行して描かれるのが、沼ちゃんとマンションギャラリーに勤務する人々との交流

これがとても素晴らしい内容で、『プリンセスメゾン』の中で個人的に一番好きなところ。

特に心に残るのは、受付の女性契約社員・要さんとの友情

要さんが沼ちゃんの職場(じんちゃん)に訪れたことをきっかけに親交を深め、部屋でともに寝転ぶような関係に

プリンセスメゾン(6) (やわらかスピリッツ女子部)

社会人になってから友人を作るというのは、そうは多くないこと。それが店員とお客という関係なら尚更。

それだけに、互いに相手を思いやり、友情を築いていく二人の姿が、とても印象的。素敵な気持ちになります。

そして何かと沼ちゃんのことを気にかける、マンションギャラリー社員・伊達さんのメガネの奥に隠された優しいまなざしにも、ほっこり。

「絵でセリフを語る」漫画表現がスゴイ

これら『プリンセスメゾン』の世界を形作るのは、作者・池辺葵さんの巧みな漫画力

セリフの全くない連続シーン、風景の中の人物の立ち位置、登場人物の背中など、文章が無いコマでキャラクターの心情を描き、読者に訴えかけてくるその手法がスゴイ

またあえて背景を描かずに、コマ内のキャラクターの位置、顔の向き、光の当たり具合などで、人物の胸の内を表現。

この漫画ならでは、漫画でしか表現できない、「絵で語る心」。何度も読み返したくなる、そして新しく何かを発見する魅力があります。

『プリンセスメゾン』まとめ

以上、池辺葵さんの『プリンセスメゾン』全6巻の感想・レビューでした。

感想の構成上、沼ちゃん周辺の出来事に内容を絞りましたが、オムニバス的に都度挿入される「女性と住まい」の物語にも注目

社会での女性の立場やライフスタイルを「住まい」と絡めて描く短編。そのどれもが短いながらも、心に残る素晴らしい話ばかりです。

本作は「住まいと女性」がテーマですが、もちろん男性が読んでも面白い内容。オススメです。池辺葵さん描く巧みな漫画の世界に浸ってください。

プリンセスメゾン(1) (やわらかスピリッツ女子部)

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