不幸体質な主人公の傍らによりそうヒロインは、「物言わぬ幽霊」。彼女がジェスチャーで訴えかけるものは…?
オカルト・ホラー漫画『死人(しびと)の声をきくがよい』。作者はひよどり祥子(さちこ)さんで、全12巻完結済み。以下、『死人の声をきくがよい』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『死人の声をきくがよい』あらすじ
オカルト現象に近づくと鼻血が出る体質を持つ、極端な受け身で不幸体質な高校生・岸田純。
オカルト研究会会長・式野の強引な行動や、何故か引き寄せてしまう怪奇現象により、毎回ピンチに陥ります。
そんな彼の窮地を救うのは、幼馴染みの少女・早川涼子、の「霊」。
岸田くんの傍らに常に寄り添い、無言・無表情ながら「ジェスチャー」で彼に危険を知らせてくれる、不思議な存在。
そんな二人が毎回、恐怖の出来事に遭遇するのが『死人の声をきくがよい』の基本的な構図。怖いけどなぜか笑ってしまう、コメディ・ホラーです。
なお早川さんは危険を察知したり、その回避方法を示すことはできるのですが、いかんせん「喋らない霊」なので、身振り手振りでしかそれを岸田くんに伝えられない、というのが物語のミソ。
『死人の声をきくがよい』のココが面白い!
美麗で妖艶な雰囲気が漂うオカルト・ホラー漫画
『死人の声をきくがよい』は、全体的に暗い雰囲気の、ベーシックなオカルト・ホラー漫画。
ですがただ暗いというだけではなく、全編から漂う妖艶な雰囲気がその最大の特徴。
ひよどり祥子さんの安定感のある作画により、岸田くんや早川さんのような主人公格の描写は非常に美麗。
黒を基調とした色合いも相まって、一コマ一コマをじっくり見ると、ハッと息を呑むような美しさがあります。
その美麗さとは対象的に、恐怖を演出するホラー表現はグ口成分高めで容赦のないもの。
これは慣れればなんてことは無いのですが(多分)、耐性の無い人は少しご注意を。いや、慣れればなんてことは無いんですよ…。
バラエティ豊か過ぎるオカルト・ホラーネタ
不幸体質ゆえに毎回事件発生、死にそうな目に遭う岸田くん。そこで描かれる恐怖案件は、心霊・怪奇現象にとどまらないバラエティに富んだもの。
都市伝説・宇宙人・謎の生物・伝説のモンスター・妖怪・パラレルワールド・犯罪・病原菌・カルト宗教などなど。
オカルト・ホラー分野に属しているものならほぼ網羅している、と言って過言では無いほどの多彩さ。
3巻収録の『粘土マンが来る!!』や5巻収録の『不気味な絵』など、ちょっと不思議系の話は、他のホラー漫画ではなかなか味わえない面白さ。
また毎回どんな恐怖現象が起こるかわからないので、常にドキドキ。コミカルな描写も交えつつ、怖い部分はきっちり怖く。各話ちゃんとオチがつき、満足の読後感があります。
ホラー漫画とギャグ漫画は紙一重、怖い表現が過ぎると笑いに転化してしまう可能性も。
ですが本作は、その加減が作者・ひよどり祥子さんのセンスと計算で絶妙。バランスのいいホラー感があります。
30日間無料トライアル実施中
心霊ヒロイン・早川さんが面白い!
その『死人の声をきくがよい』で毎回、安定して死にそうな目に合う(笑)岸田くん。
彼は主人公ですが役割としては狂言回し的な存在で、積極的に恐怖案件を解決する立場ではありません。
そんな彼の窮地を救うのが、心霊ヒロイン・早川さん。霊が見える岸田くんのもとにどこからともなくあらわれ、ジェスチャーで危険や解決手段を伝えます。
両手を前に出して「進むな」のポーズをしたり、発見したものを指し示したり。時にはランニングの格好をして走れ!と促すことも。
指差しのポーズに岸田くんが「がきデカ?」と突っ込んだのには笑ったw(※秋田書店つながり)。
その早川さん、実は「1話ですでに殺されてしまっているヒロイン」(ネタバレ風味でごめん)。
なぜ彼女が岸田くんのそばにいるのか?、というのは全くの謎。しかし非実在なのに、不思議と存在感のある稀有なキャラクターです。
最終12巻の結末は…
そんな二人のほか、傲岸不遜なオカ研会長の式野さん、リアル霊能力者でもあるダーク系アイドル・魔子ちゃん、そして岸田くんに一方的な恋心を抱く美少女殺人鬼・ゴーストが活躍?する『死人の声をきくがよい』。
12巻ではこれまでに積み上げられたパーツが回収・消化されながら、世界の危機へと発展。そして迎えたラストは…?
このブログはネタバレサイトじゃないので詳細には触れませんが、ちょっと賛否両論があるかもしれないですね。
が、私は好きです。『死人の声をきくがよい』らしさがある、というか。
個人的には岸田くんと早川さんの不健全(?)な関係に、ひねりの効いた決着を付けたところを評価したい。余韻の残るオカルト・ホラーストーリーです。
感想・レビューまとめ
以上、ひよどり祥子さんのオカルト・ホラー漫画『死人の声をきくがよい』感想・レビューでした。
内容的に決して一般向けとは言い難い作品ではありますが、読めばそのおもしろさにヤミツキになることうけあい!な漫画です。
何より10巻を超えてもマンネリ感がなく、高いクオリティを保っているのがスゴイ。
バラエティに富んだストーリーで、毎回笑いとドキドキが複雑に交錯する全12巻。どの巻を読んでもあますところなく楽しめる、オススメのホラー漫画です。
コメント