あまり予備知識を持たずに読んだ一冊。鶴谷香央理さんの「don’t like this」。
一人の女性が釣りを通して、いろいろな「好き」に目覚めていく漫画。
…え、釣り?
カバー見ると確かに主人公が釣り竿持ってますが、ビックリするぐらい釣り漫画でした(笑)。
が、これがなかなか味のあるおもしろさ。
概要
漫画「don’t like this」は、WEBマガジン「LILE THIS」に連載されていた作品(「LIKE THIS」に連載の「don’t like this」、ということ)。
釣りをしたことのない鶴谷香央理さんが、「釣りのマンガを描いてみたい」というところから始まった漫画だそう。
主人公は、親戚の家(豪邸)を借りて一人暮らしをするイラストレーター・吉田めぐみ。
彼女がふとしたきっかけから釣りを始め、いろいろな「好き」に目覚めていく様が、各話4Pで描かれます。
「don’t like this」感想・レビュー
好きなものは青いペプシのロング缶、うな重、ピザの出前、フールーのドラマ、そして帰り道に見上げる飛行機。
それ以外はそんなに好きじゃない、という主人公・めぐみ。彼女が「釣り」と、それが縁で関わった人々との交流を経て、ちょっとずつ「好き」を広げていくという物語。
一話一話は短く、あっさり。その形態ゆえ、劇的な出来事や、ことさら感動を煽るような展開はありません。
が、めぐみが釣りを通して少しずついろんな「初めて」に触れて、そして色んな「好き」を感じていく様。ほっこりするような心地よさがあります。
初めて買った釣り竿を室内で持ってみた時(これやるよね)。
小さいけれど、初めて魚を釣った時。
釣った魚をさばいて、おいしく調理できた時。
そんな時に、ふと彼女が見せる笑顔。そして「楽しい」の言葉。
めぐみを見ていると知らず知らず、微笑んでしまうような、そんな空気があります。
…
…っていうか、そんな感想、ぶっちゃけどうでもいいんです。(ぶっちゃけた!)
「don’t like this」、鶴谷香央理さんの絵柄と、全編に漂う雰囲気がすごくイイ!
鶴谷香央理さんは同時期に「メタモルフォーゼの縁側」を描かれていますが、「don’t like this」とは明らかにタッチが違うんですよね。
比較的シャープな線で描かれた「メタモルフォーゼの縁側」に較べ、「don’t like this」はやや太めの線で描かれたイラスト風なイメージ。
それがトーンと組合わさり、朴訥としながらも趣のある、いい意味でボンヤリした風味を醸し出しています。
そして人生ちょっとやる気なさげなめぐみが、自分の中の「好き」を広げて、少しずつ顔を輝かせていく。
その様子が、読んでいて不思議な心地よさを感じさせてくれます。
その空気を作り出しているのは、鶴谷香央理さんのセンスを感じるコマの数々。何度も繰り返し読みたくなる、浸りたくなる魅力が。この「雰囲気」そのものを感じ、楽しんで欲しい漫画です。
まとめ
ドラマティックな展開や、ハラハラ・ドキドキする物語、いわゆる「ストーリー物」をもとめている方には、やや不向き。
しかし休憩時間や寝る前の落ち着いた時間に、パラパラと漫画を読むのが好きという方には、強くオススメしたい。「don’t like this」、そんな漫画です。
特に休日の前の日に読んだりすると、ステキになるかもしれない明日を想像して、ハッピーな気持ちになれるかもしれません。
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