映画『機動戦士ガンダムF91』のその後の宇宙世紀を描く、長谷川裕一さんの『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズ。
木星帝国~ザンスカール帝国との戦いを経て、新章『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(ダスト)』全13巻へと突入。Vガンダム時代のさらに先、未知のガンダム世界が描かれます。
なお本シリーズから「クロスボーン」の英字表記が「CROSS BONE」から「CROSS BORN」へと変更。宇宙海賊の物語から、新世代のクロスボーン・サーガへ移行したことを指し示しています。
以下、『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』概要
時は宇宙世紀0169年。リガ・ミリティアVSザンスカール帝国の戦いで、地球連邦は弱体化。同時に各コロニーも長期の戦乱で疲弊し、宇宙世紀はゆるやかな終焉を予感させる混沌の時代へ。
そんな混乱する世界で立ち上がり、独自の道を切り開いていく「塵(DUST)」のような人間たち。物語の主体となるのはその一人、武装輸送団「無敵運送」を率いるアッシュ・キングと、盗賊団に襲われたところを助けられた少女レオ・テイル。
メカニックの腕を持ち「争いの無い世界を作りたい」というレオと、「燃えつきぬ灰」の異名を持つアッシュ。二人が手を取り、混沌とする宇宙世紀で熱き炎を燃やしていく様が、『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』で描かれていきます。
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『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』のココが面白い!
アッシュの意外なルーツと「新ガンダム」
女好きが玉に瑕だが、男気あふれるナイス・ガイな『DUST』の主人公・アッシュ。全く新しい登場人物…と思いきや、実はすでにクロスボーン・シリーズに登場済み。
前作『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』で、ギロチンにかけられる寸前に主人公・フォントに救われた少年がいたのですが、その成長した姿がアッシュその人。
そこから主人公を持ってくるか!と、意外すぎてニヤリ。本作が『ゴースト』と地続きの世界観であることを強く認識させます。
またアッシュの愛機「アンカー」も、ちょっとクセのあるMS。額にヒートカッターを持つ18m級の機体。シルエット的にはガンダムを彷彿とさせますが、「ガンダム」とは呼ばれていません。
しかしその内部には「F89」の刻印が。これはかつてのフォーミュラ計画を想起させるものですが、アンカーの正体は果たして?
ちなみにコロニーの疲弊とともに新型MSの開発が困難になった、という『DUST』世界。そこでは整備の容易な旧機体やレプリカ、またはそれらのミキシングビルドが戦場の主流に。
またビーム兵器の維持も難しくなり、実体弾を使う武器が増加。必然的に装甲も厚くなりMSのサイズが大型化(というより18m級に回帰)、という兵器事情。バラエティ豊かな機体が登場し、迫真の戦いを繰り広げます。
「敵」は前作の主人公!
そのアッシュの序盤の敵となるのは、ティターンズの流れを汲む連邦の部隊「キュクロープス」。
「キュクロープスによるう女性2千人輸送計画」妨害作戦において、リーダー・アーノルドを追い詰めるアッシュ。そこに「謎の可変MS」で割って入ったのは、かつて彼の命を救ったフォント!
前作『ゴースト』で人類滅亡の危機を救うため、クロスボーン・ガンダムX1のパイロット・カーティスらと共に、ザンスカールのキゾ中将と戦ったメガネの主人公・フォント。
しかし『DUST』では、キュクロープスの黒い軍服に身を包む彼。自ら「幽霊(ゴースト)」を名乗り、伝説の機体「ファントム」でアッシュの前に立ち塞がります。
え?なんで?あんなに熱い主人公だったのに???…と思うところですが、フォントには自分なりの「目指すべき世界」があるよう。
彼を「兄ちゃん」と慕うアッシュと、それを跳ね除けるかのような厳しさを見せるフォント。新旧ふたりの主人公たちの交わりが、『DUST』の大きな見どころとなります。
新しいガンダム世界の構築へ
ゆるやかな崩壊へ向かっていく地球圏。その流れを食い止めようと、
- 争いのない世界を作りたいと願うレオと、その気持ちに寄り添うアッシュ
- 自身の理想の世界を、権力を利用しても作り上げようとするフォント
- 自らの力の及ぶ限りで、より良い世界への礎を築こうと、地道な努力を続ける人々
など様々な思惑が交差し、絡み合っていく『DUST』世界。
その中でムーン・ムーンの末裔が絡んできたり、サイコガンダムが出てきたり、クロスボーンの過去作に登場した人物たちが活躍したり、これまでに見られない鬱展開があったり。
混沌とした雰囲気の中、物語中盤では「恐怖」で世界を独裁せんと目論む、新たなボス敵・首切り王が登場。
さらに9巻~終盤では、首切り王に狙われたコロニーを救うための「DUST計画」が描かれていきます。
これまでのガンダム世界の歴史を超えた、「CROSS BORN」の名に沿った新たな世界の構築は、その決着は…?
熱すぎる全13巻!
そんな『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』、クロスボーン・シリーズ最長となる全13巻で完結、大団円を迎えました。
振り返って見ると、ガンダム漫画としては非常にクセが強い本作。
無印クロボン~ゴーストまでは、個性の強い長谷川裕一テイストが漂いながらも、あくまでも『機動戦士ガンダム』の延長上にある物語、と捉えることができました。
が、長谷川裕一オリジナルと言ってもよい『DUSTの世界観』は、キャラクター・MS・物語背景など、どれを取っても既存のガンダム作品から大きく外れるもの。
正直取っ付きにくさもありますが、読むうちに「なるほど、こういうガンダムもアリかな」と思えてくるから不思議。
主人公VSライバル、軍VS軍の戦争が描かれて来たこれまでのシリーズとは、ひと味もふた味も違うスケールの大きいストーリーに、グイグイ引き込まれていきます。
特にガンダムの主人公らしからぬ熱血っぷりを見せるアッシュと、凶悪なラスボス・首切り王の最終決戦は、圧巻の大迫力。
むしろ「これは長谷川裕一で無いと描けないガンダムだわ!」と思わずにはいられない!
読むと思わず手に汗握ってしまう、「ガンダム漫画を超えた熱血ガンダム漫画」である『DUST』。ぜひその世界に触れてみてください。きっと大きな「ワクワク」を感じることができるでしょう。
感想・レビューまとめ
以上、長谷川裕一さんの『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』感想・レビューでした。
シリーズ最長となる13巻で完結した『DUST』。既存のガンダム作品では決して味わえない、手に汗握り過ぎる!ストーリーを味わってください。
シリーズ未読の方は、無印クロスボーン・ガンダムからどうぞ!
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