『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』―Vガンダム後の混沌世界を生きる”塵”たち

映画『機動戦士ガンダムF91』のその後の宇宙世紀を描く、長谷川裕一さんの『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズ。

木星帝国~ザンスカール帝国との戦いを経て、新章『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(ダスト)』全13巻へと突入。Vガンダム時代のさらに先、未知のガンダム世界が描かれます。

なお本シリーズから「クロスボーン」の英字表記が「CROSS BONE」から「CROSS BORN」へと変更。宇宙海賊の物語から、新世代のクロスボーン・サーガへ移行したことを指し示しています。

『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』感想・レビュー

あらすじ

リガ・ミリティアVSザンスカール帝国の戦いから16年が経った、宇宙世紀0169年。地球連邦の力は弱体化し、各コロニーの争いが激化。宇宙世紀のゆるやかな終焉を予感させる、混沌の時代へと突入。

その世界に抗うような「塵(DUST)」の一人、武装輸送団「無敵運送」を率いるアッシュ・キングは、盗賊団に襲われたコロニーで少女レオ・テイルを助ける。

メカニックの腕を持ち「争いの無い世界を作りたい」というレオを、無敵運送で雇うアッシュ。新体制の仕事第一弾として、フリーの傭兵カグヤ・シラトリから依頼された「連邦の戦艦による女性2千人輸送計画の妨害」に臨むことに。

その計画を主導するのは、一つ目のMS軍団を駆る連邦の部隊「キュクロープス」。リーダーであるアーノルドを追い詰めるアッシュたちだが、そこに謎の可変MSが割って入り―?

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宇宙世紀「末期」のガンダム世界

『Vガンダム』『クロスボーン・ガンダム ゴースト』の背景にあったザンスカール紛争ののち、地球連邦軍が弱体化

と同時に、各コロニーも長期の戦乱で疲弊。そこにはジオンもザンスカールも無く、「宇宙世紀がゆっくりと終わり始めている」というのが、『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(ダスト)』の世界観。

そこでは新型MSの開発が困難になり、整備の容易な旧機体やレプリカ、またはそれらのミキシングビルドが戦場の主流に。

同時にビーム兵器の維持が難しくなり、実体弾を使う武器が増加。必然的に装甲も厚くなりMSのサイズが大型化(というより18m級に回帰)、という兵器事情。

そんな既存のガンダム世界には無い背景を持つ『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(ダスト)』。混沌とする宇宙世紀末期「未知のガンダム世界」が描かれていきます。

主人公・アッシュの意外なルーツ

しかし!時代の終わりに抗うかのように、各所で立ち上がる「塵(DUST)」たち。その一人が、主人公・アッシュ。女好きが玉に瑕だが、『無敵運送』社長でやや唇厚めなナイス・ガイ。

そんな彼、全く新しい登場人物…と思いきや、実はすでにクロスボーン・シリーズに登場済み

前作『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』の序盤にて、の主人公・フォントにギロチンにかけられそう寸前で救われた少年がいたのですが、その成長した姿がアッシュその人

そこから主人公を持ってくるか!と、意外すぎてニヤリ。本作が『ゴースト』と地続きの世界観であることを強く認識させます。

そのアッシュが搭乗するMS「アンカー」は、額にヒートカッターを持つ18m級の機体。シルエット的にはガンダムを彷彿とさせますが、「ガンダム」とは呼ばれていません。

しかしその内部には「F89」の刻印が。これはかつてのフォーミュラ計画を想起させるものですが、アンカーの正体は果たして?

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敵となるのは前作の主人公

そのアッシュの前に立ちふさがるのは、ティターンズの流れを汲む連邦のキュクロープス。そして彼の命を救ったフォント

前作『ゴースト』で人類滅亡の危機を救うため、クロスボーン・ガンダムX1のパイロットであるカーティスらと共に、ザンスカールのキゾ中将と戦ったメガネの主人公・フォント。

しかし『DUST』では、キュクロープスの黒い軍服に身を包む彼。自ら「幽霊(ゴースト)」を名乗り、伝説の機体「ファントム」でアッシュの前に立ち塞がります。

え?なんで?あんなに熱い主人公だったのに…???と思うところですが、フォントには「目指すべき世界」があるようで。

彼を「兄ちゃん」と慕うアッシュと、それを跳ね除けるかのような厳しさを見せるフォント。新旧ふたりの主人公たちがどのように交わっていくのか、『DUST』の大きな見どころ。

新しいガンダム世界の構築へ

冒頭でも少し触れましたが、『DUST』で描かれるのはこれまでに描かれていない、未来のガンダム世界。

混沌、そしてゆるやかな崩壊へ向かっていく地球圏ですが、その流れを食い止めようと様々な思惑が交差し、絡み合います。

  • 争いのない世界を作りたいと願うレオと、その気持ちに寄り添うアッシュ
  • 効率を求め、自身の考える理想の世界を、権力を利用しても作り上げようとするフォント
  • 一方、自らの力の及ぶ限りで、より良い世界への礎を築こうと、地道な努力を続ける人々

そして中盤では新たなボス敵・首切り王が登場。さらに9巻~終盤では、首切り王に狙われたコロニーを救うため「DUST計画」が描かれます。

これまでのガンダム世界の歴史を超えた、「CROSS BORN」の名に沿った新たな世界の構築は、果たしてどこへ行き着くのか?

熱すぎる全13巻!

そんな『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』、クロスボーン・シリーズ最長となる全13巻で完結、大団円を迎えました。

振り返って見ると、ガンダム漫画としては非常にクセが強い本作。無印クロボン~ゴーストまでは、個性の強い長谷川裕一テイストが漂いながらも、あくまでも『機動戦士ガンダム』の延長上にある物語、と捉えることができました。

が、長谷川裕一オリジナルと言ってもよい『DUSTの世界観』は、キャラクター・MS・物語背景など、どれを取っても既存のガンダム作品から大きく外れるもの。なかなか破天荒で、正直取っ付きにくさもあります。

しかし読み進めると、「なるほど、こういうガンダムもアリかな」、と思えてくるから不思議。

主人公VSライバル、軍VS軍の戦争が描かれて来たこれまでのシリーズとは、ひと味もふた味も違うスケールの大きいストーリーに、グイグイ引き込まれていきます。

特にガンダムの主人公らしからぬ熱血っぷりを見せるアッシュと、凶悪なラスボス・首切り王の最終決戦は、圧巻の大迫力。むしろ「これは長谷川裕一で無いと描けないガンダムだわ!」と思わずにはいられない。

上記でご紹介した以外にも、ZZで登場したムーン・ムーンが絡んできたり、サイコガンダムが出てきたり、クロスボーンの過去作に登場した人物たちが活躍したり、6巻ではこれまでに見られない鬱展開があったりと、見どころが満載です。

読むと思わず手に汗握ってしまう、「ガンダム漫画を超えた熱血ガンダム漫画」である『DUST』。ぜひその世界に触れてみてください。きっと大きな「ワクワク」を感じることができるでしょう。

『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』まとめ

以上、長谷川裕一さんの『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』感想・レビューでした。

シリーズ最長となる13巻で完結した『DUST』。既存のガンダム作品では決して味わえない、手に汗握り過ぎる!ストーリーを味わってください。

シリーズをまだ読んだことが無い、という方は、無印クロスボーン・ガンダムからどうぞ!

余録

以下は余録。1巻では、アッシュのアンカーとズゴック・ゾック軍団が戦います。宇宙で

ズゴックやゾックは大気圏内用の水陸両用機ですが、水中で運用するために気密性も高く、実際に宇宙空間でも利用可能であると考えられます(MS IGLOOのゼーゴックという例もあり)。

旧機体が多く利用されているという世界観で、一年戦争時の局地戦用MSが登場する、というのは不思議ではないのですが、まあこれは岡崎優版「機動戦士ガンダム」のオマージュなんだろうな、と。

機動戦士ガンダム (サンライズ・ロボット漫画コレクションvol.1)矢立 肇,富野 由悠季,岡崎 優 ほか:マンガショップ

1980年前後に執筆されたこの漫画。後年、アムロがやたら好戦的だったりしてネタにされますが、宇宙空間で戦うガンダムVSズゴック・ゾックも有名なシーン。最後、突進するゾックが真っ二つにされるところまで、そのまんま再現されています。

まさか21世紀に入ってかつての戦いを見ることになるとは。歴史は繰り返す…のか…(そうじゃない)。

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