「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」―Vガンダム後の混沌世界を生きる”塵”たち

映画「機動戦士ガンダムF91」のその後の世界を描く、長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム」シリーズ。

木星帝国・ザンスカール帝国との戦いを経て、ついに新章「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」へと突入。Vガンダム時代のその後、未知の世界のガンダムが描かれます。

記事作成現在、既刊6巻で以下続刊。このDUSTから、「クロスボーン」の英字表記が「CROSS BONE」から「CROSS BORN」となりました。海賊の物語から新たなストーリーへ移行したことが窺えます。

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あらすじ

リガ・ミリティアVSザンスカール帝国の戦いから16年が経った宇宙世紀0169年。地球連邦の力は弱体化し、各コロニーの争いが激化。宇宙世紀のゆるやかな終焉を感じさせる、混沌の時代へと突入。

その世界に抗うような「塵(DUST)」の一人、武装輸送団「無敵運送」を率いるアッシュ・キングは、盗賊団に襲われたコロニーで、メカニックの腕を持つ少女レオ・テイルを助ける。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」1巻より引用]

「争いの無い世界を作りたい」という彼女を、無敵運送で雇うアッシュ。その後フリーの傭兵カグヤ・シラトリから、連邦の戦艦による女性2千人輸送計画の妨害を依頼される。

その計画を手動するのは一つ目のMS軍団を駆る連邦の部隊「キュクロープス」。そのリーダーであるアーノルドを追い詰めるアッシュたちだが、そこに謎のMSが割って入り―?

機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(1) (角川コミックス・エース)長谷川 裕一:KADOKAWA / 角川書店

宇宙世紀末期のガンダム世界

以上が、「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」1~2巻のざっくりしたあらすじ。以後、連邦が弱体化し混沌とする宇宙世紀末期のガンダム世界が描かれます。

これまでにも時代の狭間を描いたガンダム(一年戦争~Z・ZZ間、ZZ~逆シャア間、そしてF91~Vガンダム時代のクロスボーン・シリーズなど)は多々ありました。しかしVガンダム以後、映像化のされていない宇宙世紀を描くのはこの「DUST」がおそらく初めて。

感想としては…長谷川裕一さん、かなり好きにやってるな~(笑)という印象。これまでに作り上げたオリジナリティあふれる世界観を、かなり自身のテイストに近づけている感じです。

MSは再び大型化へ

その中でも特徴的なのが、MSが再び大型化する傾向にある、という設定。恐竜的に大型化する傾向のあったMSが、技術革新とともに小型化していった、という映画「F91」の流れ。

しかしDUSTでは世界全体の疲弊が進み、MSの新規開発、およびビーム兵器の維持が困難に。

そのためMSは中古品のパーツを流用・組み合わせたミキシング・ビルドが増え、また実体弾の復活とともにビーム・シールドが外され、厚い装甲が求められるように。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」1巻より引用]

結果、再び18m級のMSが台頭。またかつての戦争で見た機体が多く見受けられるようになっています。

意外な出自の主人公・アッシュ

そんな傾向を背景に持つDUSTのMS群。主人公であるアッシュが搭乗するMSは「アンカー」。額にヒートカッターを持つ全高18mの機体。シルエット的にはガンダムを彷彿とさせますが、「ガンダム」とは呼ばれていません。

しかしその内部には「F89」の刻印が。これはかつてのフォーミュラ計画を想起させるものですが、アンカーの正体は果たして?

そしてアンカーに搭乗する、運送社の社長にして女好きの主人公アッシュ。実は彼は、すでにクロスボーン・シリーズに登場済みの人物。

前作「クロスボーン・ガンダム ゴースト」の序盤、コロニーでギロチンにかけられそうになる所をフォント(ゴーストの主人公)に救われた少年の成長した姿が、アッシュその人。

そこから主人公を持ってくるか!と、意外すぎてニヤリ。本作が「ゴースト」と地続きの世界観であることを強く認識します。

敵となるのはかつての主人公

そのアッシュの前に立ちふさがるのは、彼の命を救ったフォントその人。前作「ゴースト」でカーティスらと共に、人類滅亡の危機を救うためにザンスカールのキゾ中将と戦った彼。

しかし「DUST」ではティターンズの流れを汲む、キュクロープスの黒い軍服に身を包むフォント。自ら「幽霊(ゴースト)」を名乗り、伝説の機体ファントムでアッシュの前に立ち塞がります。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」3巻より引用]

え?なんで?あんなに熱い主人公だったのに…???

と思うところですが、フォントにはフォントの考え、目指す世界があるよう。フォントを慕うアッシュと、それを跳ね除けるかのような厳しさを見せるフォント。二人の道がどのように交わっていくのか、気になるところ。

新しい世界の構築へ

冒頭でも少し触れましたが、「DUST」で描かれるのはこれまでに描かれていない、未来のガンダム世界。

混沌、そしてゆるやかな崩壊へ向かっていくであろうその世界。しかしその流れを食い止めようと、様々な思惑が交差し、絡み合います。

争いのない世界を作りたいと願うレオと、その気持ちに寄り添うアッシュ。

効率を求め、自身の考える理想の世界を、権力を利用しても作り上げようとするフォント。

一方、自らの力の及ぶ限りで、より良い世界への礎を築こうと地道な努力を続ける人々。

歴史を超え、「CROSS BORN」の名に沿った新たな世界の構築がどこへ行き着くのか?「機動戦士ガンダム」としても長谷川裕一さん描く「クロスボーン・サーガ」としても、注目です。

まとめ

以上、長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」6巻までのレビューでした。

上記でご紹介した以外にも、ZZで登場したムーン・ムーンが絡んできたり、〇〇◯ガンダムが出てきたり、クロスボーンの過去作に登場した人物たちが活躍したりと、見どころ満載。物語もまだまだ続くようですが、6巻ではこれまでに見られない鬱展開も見られ、先が気になるところです。

ところで1巻では、アッシュのアンカーとズゴック・ゾック軍団が戦います。宇宙で。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」1巻より引用]

ズゴックやゾックは大気圏内用の水陸両用機ですが、水中で運用するために気密性も高く、実際に宇宙空間でも利用可能であると考えられます(MS IGLOOのゼーゴックという例もあり)。

旧機体が多く利用されているという世界観で、一年戦争時の局地戦用MSが登場する、というのは不思議ではないのですが、まあこれは岡崎優版「機動戦士ガンダム」のオマージュなんだろうな、と。

機動戦士ガンダム (サンライズ・ロボット漫画コレクションvol.1)岡崎 優:マンガショップ

1980年前後に執筆されたこの漫画。後年、アムロがやたら好戦的だったりしてネタにされますが、宇宙空間で戦うガンダムVSズゴック・ゾックも有名なシーン。

最後、突進するゾックが真っ二つにされるところまで、そのまんま再現されています。まさか21世紀に入ってかつての戦いを見ることになるとは。歴史は繰り返す…のか…(そうじゃない)。

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