「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」―Vガンダム後の混沌世界を生きる”塵”たち

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映画「機動戦士ガンダムF91」のその後の宇宙世紀を描く、長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム」シリーズ。

木星帝国~ザンスカール帝国との戦いを経て、ついに新章「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」へと突入。Vガンダム時代のさらに先、未知のガンダム世界が描かれます。

「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」は2020年5月現在、既刊10巻で以下続刊。本シリーズから「クロスボーン」の英字表記が「CROSS BONE」から「CROSS BORN」へと変更。宇宙海賊の物語から、新世代のクロスボーン・サーガへの移行を指し示しています。

「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」レビュー

あらすじ

リガ・ミリティアVSザンスカール帝国の戦いから16年が経った、宇宙世紀0169年。地球連邦の力は弱体化し、各コロニーの争いが激化。宇宙世紀のゆるやかな終焉を予感させる、混沌の時代へと突入。その世界に抗うような「塵(DUST)」の一人、武装輸送団「無敵運送」を率いるアッシュ・キングは、盗賊団に襲われたコロニーで少女レオ・テイルを助ける。

メカニックの腕を持ち「争いの無い世界を作りたい」というレオを、無敵運送で雇うアッシュ。新体制の仕事第一弾として、フリーの傭兵カグヤ・シラトリから依頼された「連邦の戦艦による女性2千人輸送計画の妨害」に臨むことに。

その計画を主導するのは、一つ目のMS軍団を駆る連邦の部隊「キュクロープス」。リーダーであるアーノルドを追い詰めるアッシュたちだが、そこに謎の可変MSが割って入り―?

機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST(1) (角川コミックス・エース)長谷川 裕一,矢立 肇,富野 由悠季 ほか:KADOKAWA

宇宙世紀末期のガンダム世界

以上が、「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」1~2巻のざっくりしたあらすじ。以後、連邦が弱体化し混沌とする、宇宙世紀末期のガンダム世界が描かれます。

これまでにも一年戦争~Z・ZZ間、ZZ~逆シャア間、F91~Vガンダム時代のクロスボーン・シリーズなど、時代の狭間を描いたガンダムは多々ありました。しかしVガンダム以後、映像化のされていない宇宙世紀を描くのは、この「クロスボーン・ガンダム DUST」がおそらく初めて。

感想としては…長谷川裕一さん、かなり好きにやってるな~(笑)という印象。宇宙世紀ガンダムの世界観と、オリジナリティあふれるクロスボーン・サーガの世界観を、冒険活劇色と独特のテイストを強めて融合。「世紀末ガンダム」とも言えるガンダム・ワールドを展開しています。

MSは再び大型化へ

その世界観の中で特徴的なのが「MSが再び大型化する傾向にある」という設定。進化の過程で恐竜的に大型化してきたMSが、技術革新とともに小型化していった、というのが映画「F91」で採用されたMS観。

しかし「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」では世界全体の疲弊が進み、MSの新規開発、およびビーム兵器の維持が困難になっている、という背景が。また実体弾の復活とともに、ビーム・シールドよりもブ厚い装甲が求められるように。

結果、再び18m級のMSが台頭。中古品のパーツを流用・組み合わせたミキシング・ビルドMSの増加や、かつての戦争で見た機体(のレプリカ)が多く見受けられるようになっています。ちなみに1巻冒頭の敵メカはガンダム、の顔をしたバイアラン、だったりします。

意外な出自の主人公・アッシュ

そんな傾向を背景に持つDUSTのMS群。主人公機である「アンカー」は、額にヒートカッターを持つ全高18mの機体。シルエット的にはガンダムを彷彿とさせますが、「ガンダム」とは呼ばれていません。

しかしその内部には「F89」の刻印が。これはかつてのフォーミュラ計画を想起させるものですが、アンカーの正体は果たして?

そのアンカーのパイロットは、運送会社社長で女好きのアッシュ。ちょっと唇厚めなナイス・ガイ。新しい登場人物、と思いきや、実はすでにクロスボーン・シリーズに登場済み。

前作「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」の序盤にて、コロニーでギロチンにかけられそうになるところをフォント(ゴーストの主人公)に救われた少年がいました。その成長した姿が、アッシュその人です。

そこから主人公を持ってくるか!と、意外すぎてニヤリ。本作が「ゴースト」と地続きの世界観であることを強く認識させます。

敵となるのはかつての主人公

そのアッシュの前に立ちふさがるのは、連邦のキュクロープス。そして彼の命を救ったフォントその人。前作「ゴースト」で人類滅亡の危機を救うため、クロスボーン・ガンダムX1のパイロットであるカーティスらと共に、ザンスカールのキゾ中将と戦ったメガネの主人公フォント。

しかし「DUST」では、ティターンズの流れを汲むキュクロープスの黒い軍服に身を包む彼。自ら「幽霊(ゴースト)」を名乗り、伝説の機体「ファントム」でアッシュの前に立ち塞がります。

え?なんで?あんなに熱い主人公だったのに…???

と思うところですが、フォントにはフォントの考え、目指す世界があるよう。彼を「兄ちゃん」と慕うアッシュと、それを跳ね除けるかのような厳しさを見せるフォント。新旧ふたりの主人公たちがどのように交わっていくのか、DUSTの大きな見どころです。

新しい世界の構築へ

冒頭でも少し触れましたが、「DUST」で描かれるのはこれまでに描かれていない、未来のガンダム世界。混沌、そしてゆるやかな崩壊へ向かっていくであろう地球圏。その流れを食い止めようと、様々な思惑が交差し、絡み合います。

争いのない世界を作りたいと願うレオと、その気持ちに寄り添うアッシュ。

効率を求め、自身の考える理想の世界を、権力を利用しても作り上げようとするフォント。

一方、自らの力の及ぶ限りで、より良い世界への礎を築こうと地道な努力を続ける人々。

歴史を超え、「CROSS BORN」の名に沿った新たな世界の構築が、どこへ行き着くのか?「機動戦士ガンダム」としても、長谷川裕一さん描く「クロスボーン・サーガ」としても、注目です。

「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」、ぶっちゃけて書くと、非常にクセが強いガンダム漫画。無印クロボン~ゴーストまでは、個性の強い長谷川裕一テイストが漂いながらも、あくまでも「機動戦士ガンダム」の延長上にある物語、と捉えることができました。

が、長谷川裕一オリジナルと言ってもよいVガンダム以降のDUST世界(※一応サンライズ公認です)は、キャラクター・MS・物語背景など、どれを取っても既存のガンダムの世界観から大きく外れるもの。宇宙世紀の末期を描く物語は、まさに「世紀末ガンダム」。

なかなか破天荒ではありますが、しかし読み進めると、なるほど、こういうガンダムもアリかな、と思えてくるから不思議。主人公VSライバル、軍VS軍が描かれて来たこれまでのシリーズとは、ひと味もふた味も違う、さらにスケールの大きいストーリーに、グイグイ引き込まれていきます。

特に新たなボス敵・首切り王の登場、そして9巻で描かれる宇宙の危機は、「これは長谷川裕一で無いと書けないガンダムだわ!」と思わずにはいられない。今後の展開と、物語の決着が、気になるところです。

まとめ

以上、長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST」のレビューでした。

上記でご紹介した以外にも、ZZで登場したムーン・ムーンが絡んできたり、◯◯◯ガンダムが出てきたり、クロスボーンの過去作に登場した人物たちが活躍したり、6巻ではこれまでに見られない鬱展開があったりと、見どころ満載です。

さらに10巻では新機体と「衝撃のモード」が登場。ますます目が離せません。DUSTが気になった方は、ぜひ無印クロスボーンから、クロスボーン・サーガの世界に触れてみてください。

ところで以下は余録。1巻では、アッシュのアンカーとズゴック・ゾック軍団が戦います。宇宙で。

ズゴックやゾックは大気圏内用の水陸両用機ですが、水中で運用するために気密性も高く、実際に宇宙空間でも利用可能であると考えられます(MS IGLOOのゼーゴックという例もあり)。

旧機体が多く利用されているという世界観で、一年戦争時の局地戦用MSが登場する、というのは不思議ではないのですが、まあこれは岡崎優版「機動戦士ガンダム」のオマージュなんだろうな、と。

機動戦士ガンダム (サンライズ・ロボット漫画コレクションvol.1)矢立 肇,富野 由悠季,岡崎 優 ほか:マンガショップ

1980年前後に執筆されたこの漫画。後年、アムロがやたら好戦的だったりしてネタにされますが、宇宙空間で戦うガンダムVSズゴック・ゾックも有名なシーン。

最後、突進するゾックが真っ二つにされるところまで、そのまんま再現されています。まさか21世紀に入ってかつての戦いを見ることになるとは。歴史は繰り返す…のか…(そうじゃない)。

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