巨大彗星「メランコリア」の接近により滅亡寸前の地球。その各所で繰り広げられる奇想天外な物語たち。迎える意外な結末は―。
道満晴明さんの『メランコリア』。作者らしい、シュールなSF系コメディ(+ちょいエロ)が詰まったショート・ストーリーです。
コミックスは集英社より全2巻が刊行。以下『メランコリア』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『メランコリア』概要
「私が部屋で引きこもっている間に 世界は終末を迎えていた」
というモノローグから始まる第一話『Apocalypse(終末)』。
滅亡寸前の世界で突如喋りだした飼い猫に、引きこもりの女性が「最後の審判」を受ける、というSF系コメディ。突飛過ぎるシチュエーションにいきなり笑いがw。
以降『メランコリア』では、
- 殺し屋に巨大な「マリオ穴」に連れて行かれる女子高生三人組。その一人が殺し屋に持ちかけた取引とは―。(第3話『Cutthroat』)
- ホテルの一室で、死んだ作家の小説世界に閉じ込められたメイド。作家の執筆を引き継ぐことになるが―?(第4話『Do not disturb』)
- 突如、空から降ってきた魚の群れ。その謎を追う女子高生二人が遭遇したものは―。(第6話『Fafrotskies』)
など、アルファベットA~Zからタイトルの始まる、世界の滅亡が絡んだり絡まなかったりする不思議なショート・ストーリー全26編が展開されていきます。
『メランコリア』レビュー
笑いと毒
ポップでクオリティの高い作画と、それにのせて繰り広げられる、ゆるやかな笑い。
道満晴明さんならではのユーモアあふれるストーリーが、シンプルに面白い!しかし不意にドギツイ展開があらわれて、ドキッとすることも。
第3話『Cutthroat』では、とある犯罪に手を染めた女子高生たちが、敵対勢力の殺し屋にサクッと始末される、というカワイイ絵柄とは真反対のえげつない内容。
しかしそのラストでは、妙に余韻の残る別種のえげつなさが、これまたサックリと描かれます。
道満晴明マンガならではの洗練された絵柄とシュールな笑い、そしてほんの少しの「毒」が、妙に中毒的。
個人的に特に印象的な一編は、第8話『Handspinner(ハンドスピナー)』。
助けた宇宙人から、1度だけ過去に戻ることのできるハンドスピナーをもらった女子学生。その後、親しい同級生の男子がある事件を起こす。彼女が取った行動は?というお話。
その結末は予想される安易な展開ではなく、なかなか考えさせられるもの。淡々としながらも、心に強いインパクトと、ちょっとのモヤモヤを残していきます。
徐々に見えてくる繋がり
そんなバラエティに富んだ各話を楽しんでいるうちに、徐々に世界の全体像が浮かび上がってくる、という趣向の『メランコリア』。
序盤で登場した人物が別の話に再登場したりして、微妙な繋がりとゆるやかな時の流れが見えてきます。
そして迎える、物語全体としての結末。果たして巨大彗星メランコリアは地球に落ちるのか?人類は滅亡してしまうのか?
局所的にも全体的にも、ユーモアとひねりの効いたSF展開が楽しめる物語。
全26話を読み通したあと、再び第1話からページをめくりだしたくなる、そんな面白さ・中毒性のある全2巻です。
レビューまとめ
以上、道満晴明さんの『メランコリア』上下巻のネタバレなしレビューでした。
単話としても、全体としても、クオリティの高い全2巻完結漫画。随所に埋め込まれた仕掛けを何度もめぐって読み解く、という楽しみもあり。ユーモアのあるSF漫画が好きな方にオススメ。
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