漫画「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」―元・警察官が描くリアル過ぎる警察コメディ

「私はそれからの人生で この日の出会いを何度も後悔することになる」

とびっきりの美人婦警(※中身はゴリラ)とコンビを組むことになった新人婦警を中心に、警察官たちの日常をコミカル&シリアスに描き出す、漫画「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」のあらすじ紹介&感想です。

作者は泰三子(やすみこ)さんで、連載は講談社モーニング。単行本は2021年9月現在、18巻+別章が刊行中で以下続刊。

なお本作は、戸田恵梨香さん・永野芽郁さん主演のドラマ「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」の原作。また2021年8月にTVアニメ化も発表されました。

「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」感想

あらすじ・概要

漫画「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」は、岡島県(※誤字ではない)町山市の町山警察署および交番を舞台に、公務員としての業務に従事する警察官たちの日常を、コメディ色強めに綴る物語

主人公は、特に志無く警察官となった新人婦警・川合麻衣。あまりの激務から警察官を辞めようと思っていたところ、「刑事課のエースだったけどパワハラで交番に飛ばされた」と噂の先輩警察官・藤聖子とペアを組むことに。

労働環境的に非常にブラックかつ理不尽な職場に疲弊しながらも、聖子や先輩刑事・源らと共に職務に従事。警察官としての本分を全うしていく姿が、ユーモアを交えて描かれていきます。

なお作者の泰三子さんは、実際に10年の警察勤務を経てから漫画家になったという変わり種。「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」ではその経験が随所に反映されており、コメディでありながら他の警察漫画とは一線を画すリアルさが、大きな特徴です。

市民のサンドバッグ”おまわりさん”

交通取り締まりや職質・補導で市民から悪態をつかれ、気に食わなければ「ウザイ」「税金ドロボウ」と罵られ…。普通に仕事をするだけで市民のサンドバッグとなる仕事、おまわりさん。

頑張れば頑張るほど理不尽な目に合う仕事模様が綴られていくのですが、その過程でテンポ良く交わされる川合・聖子ら警察官の会話が、軽妙かつユーモアにあふれていてとても!面白い。

例えばとある未成年少女の補導事件における、調書作成時のやり取り。

川合「セックスのときのバックって体位、警察文書的にどう書けば」
聖子「後背位」

といった、普通の職場ではまず無いだろう会話が真顔で行われる様子に、乾いた笑いがこぼれます。

コミカルな事件の裏側に隠されたリアル

しかしコミカルな雰囲気の中に、サラッと「リアル」がぶっ込まれてくるのが、「ハコヅメ」の侮れないところ。

非行で補導された少女の取り調べが終了。厳重注意して家に帰すだけ…のところを、聖子が呼び止める。「ちゃんと言わなきゃいけないこと、あるでしょ」

不良少年の家族である、寝たきり老人が亡くなった。死因に不審な点がないか検視したところ、ある事実が明らかに…

ごくありふれた事案の数々。しかしその中には隠れた真実が。元・警察官だから描けるであろうその「リアル」に、社会に対する新たな視点を植え付けられる感じ。コミカルとシリアスの絶妙なコントラストが、じわじわと心を侵食します。

緊迫の長編シリーズ

そしてその「リアル」の延長線上で数話に渡って描かれるのが、物語の要所要所に挟み込まれる長編シリーズ。その緊張感のある内容・サスペンス感がめちゃくちゃ面白い!

その一つが、10~12巻に収録の「同期の桜」編。川合と藤がペアを組む三年前、聖子の同期の婦警が、人身事故現場での交通整理中にひき逃げに!現場の混乱から容疑者を取り逃がすが、その事故には婦人警官を見守る謎の男・通称「守護天使」が関係して―?

サスペンス仕立てのストーリー、警察官の絆を示すエピソードなど、非常に読み応えがあり、かつそこで「ハコヅメ」序盤の伏線が回収されているのがスゴイ

聖子が川合とペアを組むきっかけとなった「パワハラ」の真実、そして1巻冒頭の「私はそれからの人生で この日の出会いを何度も後悔することになる」という川合のモノローグの真の意味など、「ここにそれ持ってくるか!」と素直な驚きが

当初は「警察コメディ」だった「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」が、コメディとしての顔を崩さずに、巻を重ねるにつれ別の顔を見せてくる。泰三子さんの緻密な物語構成に、読めば読むほどグイグイ惹き込まれていきます。

実務経験に裏打ちされた警察フィクション

そんな「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」、その最大の特徴は、エンタメとしての面白さの裏に「ホンモノ警察官ならではの経験」が感じられること。

交番勤務のみならず、交通課・捜査課・警察署幹部、果ては警察学校まで、多彩な部署で活躍する警察官の心理や、各種事案の加害者・被害者・関係者の持つ視点が巧みに織り込まれたストーリーの完成度は、「漫画家」と「(元)警察官」という2つの顔を持つ作者・泰三子さんならでは

実務経験に裏打ちされ、「エンタメとしての面白さとリアル」を共存させた「ハコヅメ」は、本作以前の警察漫画をある意味、陳腐化させてしまいました

…だって「本職警察官の知識を持った漫画家が描く警察漫画」なんて、最強じゃん?

漫画はあくまでもエンタメなので、その全てが必ずしもリアルである必要はありませんが、この「ホンモノ感」は唯一無二。笑えるコメディ要素とともに、ほかの警察漫画とはひと味もふた味も異なる読後感を与えてくれる作品です。

まとめ

以上、泰三子さんの漫画「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」感想でした。コミカルさとシリアスさが良いバランスで混じり合った警察コミック。これを読むと警察のことがきっと好きになる!

…かどうかは分かりません。積年の恨みを募らせている方もいるでしょう(笑)。が、警察官や警察という組織に対する見方が、良い意味で変わるのではないでしょうか。

また元・警察官ならではのリアルな警察ネタと、漫画家・泰三子による巧みに構成された演出・ストーリーが、シンプルに面白い!一話一話が非常に濃密、かつその濃度が全く薄まらないことに素直に驚きます。

巻数も二桁を超えてその勢いがますます増した「ハコヅメ」。今が読みごろの漫画です。

なお「ハコヅメ」は、本編のサブキャラクター・黒田カナが主役のスピンオフ「別章 アンボックス」が、17巻と同時刊行されています。

コメディ要素を一切廃し、主人公の「心の闇」と「警察官の正義と絆」を描くシリアスなストーリーは、泰三子さんの「エンタメ&リアル」の一つの結実とも言える内容。緊張感あふれる迫真の警察フィクションに触れてみてください。

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