カップル間のDVに端を発した凄惨な事件。
心に闇を抱える女性警察官が、捜査の果てに見たものは―?
ドラマ・アニメ化もされた警察コメディ漫画、泰三子さんの『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』。
その登場人物の一人・黒田カナにスポットを当てたスピンオフが、「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」。
本編とはひと味もふた味も違う、社会派サスペンスが展開される全1巻です。
『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス』感想・レビュー
あらすじ・概要
『ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス』は、『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の作者・泰三子さん本人の手による公式スピンオフ。
岡島県町山警察署の女性警察官・黒田カナが主人公の全1巻ストーリーです。
生活安全課に所属し、身分を秘匿して事件にあたる「くノ一捜査官」として活躍するカナ。
上司・西川の命令で、DV被害の相談をしてきた女性の引っ越しを手伝うことに。
一方、同僚の警察官・源と藤は、女性の交際相手であるDV男を説得し、彼女との付き合いをやめることを約束させる。
一件落着…かと思いきや、二日後に事態は急変。
DV男のアパートから異臭がし、部屋は血まみれ。そして住人は行方不明との連絡が入る。
果たして彼らに何が起こったのか…?
…という町山警察署管内で起こる凄惨な事件が、『ハコヅメ』本編の準レギュラーであるカナを主体に描かれます。
本格的な社会派サスペンス
本編『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』は川合麻衣と藤聖子、二人の女性警察官を中心に、警察の日常をコミカル7:シリアス3ぐらいで描く、基本コメディな漫画。
が、この『別章 アンボックス』は本編と同じキャラクターが登場しながらも、笑いを廃したシリアスオンリーなテイスト。
とあるDV事案とそこから起こる「事件」、そして関連する出来事がリアルに展開されていきます。
その物語の中心となる、警察官・カナ。彼女は『ハコヅメ』本編では4巻から登場する人物で、岡島県警警察学校「不作」の期の一人。
しかし持ち前の飄々としたキャラクターと要領の良さで、周囲から信頼を集める警察官です。
しかしその心の中にはある「闇」、そして「正義」に対する不信感が。
彼女に関しては本編でも気になる描写・伏線がちらほらあるのですが、『別章 アンボックス』でその詳細が明らかに。
それは一つ上の期の先輩刑事・源とも関わりが…?
カナがたどり着く「真実」とは?
その「闇」により、事件を追ううちに徐々にその内面を変化させていく彼女。結果取った行動は…?
これが『ハコヅメ』本編からはとても想像できない、非常にショッキングな内容。
しかし否応無しに進んでいく時の流れの中、仲間たちの「絆」を感じながら、やがてカナがたどり着く一つの真実、そして進むべき道が、全1巻で描かれていきます。
実際に警察官として10年のキャリアを持つ作者・泰三子さんの手により描かれるその物語は、予想以上にリアルな社会派サスペンス。
DV被害の現実と警察官たちの矜持を迫真の筆致で訴えかけてくるストーリーは、警察を題材にした同種の漫画・小説の中でも群を抜いて本格的。
息の詰まるような緊張感と、満足の読後感を与えてくれるでしょう。
まとめ
以上、漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』スピンオフ『別章 アンボックス』感想・レビューでした。
本編と大きく異なる雰囲気に、最初は戸惑うかもしれません。が、一度読み始めると、女性警察官・黒田カナの物語に惹き込まれること必至です。
なお『別章 アンボックス』は『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』17~18巻の間の出来事。
また本編の知識が必要となるので、17巻まで読んでからの読書をオススメします。
ちなみに『ハコヅメ』本編第一話のタイトルは『ハコから逃げろ アンボックス』なのですが、その意味を考えながら別章を読むと、物語がより腑に落ちるのでは。
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