同じ時間の繰り返しが描かれる、タイムトラベルSFの一種「ループもの」。かつて進研ゼミ「高一Challenge」(1997年4月号~1998年3月号)に、そのループものを取り扱ったSF漫画が連載されていました。
それがこちら。伊藤伸平氏の「はるかリフレイン」です。当時、白泉社よりコミックス全1巻が発売されましたが、その後絶版。マンガ図書館Zでも一時期無料公開されていました(現在は公開終了)。
その「はるかリフレイン」が、TSUTAYAと復刊ドットコムの「コミック復刊プロジェクト」により復刊させたい一冊にセレクト。第一弾として11月26日に発売されました。
私も一度はマンガ図書館Zで読みましたが、今回装いも新たに発売されるということで、もう一度読みたい熱が高まることこの上なし。一冊所望の運びとあいなりました。
「はるかリフレイン」レビュー
あらすじ
幼馴染で同じ高校の新入生・はるかと啓太は、カップルになったばかり。毎日が楽しくてしかたないはるかだったが、ある日啓太は、携帯電話で通話中のドライバーに轢かれて死んでしまう。
葬式も済み、呆然とするはるか。ふと立ち寄った江ノ島植物園で、不細工な顔の怪しげなネコに出会う。
餌をやりながら、ネコに啓太のことを語るはるか。時計塔が4時の時刻を告げようとするその時、気がつくとはるかは事故の前日に戻っていた。
生きている啓太に再び会うはるか。しかし啓太はいずれ事故にあう運命だった。事故を防ごうと同じ時間をループするはるかは、果たして啓太を死の運命から救えるのか-。
さわやかな青春コメディSF
前回読んでから時間が経っていたので、新鮮な気持ちで再読しました。全1巻で、というより一年の連載できっちりまとめた秀作ですね。さわやかで面白いです。
ジャンルとしては「青春コメディSF」といった位置づけでしょうか。明るい高1女子・はるかの表情が実に豊か。啓太のために走り回る彼女の姿に、つい感情移入してしまいます。
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ループの結末は?
何回目かのループから、啓太が幽霊となってあらわれるびっくり展開もあり。進研ゼミギャグやエヴァンゲリオンネタも少し交えながら、繰り返す時間がコミカルに描かれます。
しかし、何度ループしても、啓太の運命は変わらない。やがてはるか達に残された時間もわずかに。
ユーモラスだけど、裏には常に悲壮な空気が潜んでい。それもまた「はるかリフレイン」の魅力。やがて来る結末はハッピーエンドかそれとも…?
学生たちのオアシス的な漫画
SFとしては、ツッコミどころもないではない、です。幽霊になった啓太自体がタイムリープしていたりとか、ネコは結局なんだったのか、とか。
しかし、ただ一途に愛する人を救うため、試行錯誤しながら同じ時間を繰り返すはるか。彼女の走る姿と成長は、読み終わったあとも読者の心に残ります。自分もこんな風に大切な人のために全力を尽くしたい、という思いとともに。
そして1年間、勉強の合間に「はるかリフレイン」を楽しみにしていた高校生がたくさんいたのかな、それが今回のリフレイン(復刊)につながったのかな。そんなことを考えると、なんだか優しい気持ちになれるのです。
その他「はるかリフレイン」について
今回の復刻版「はるかリフレイン」は2016年11月現在、紙書籍での発売。巻末には伊藤伸平氏による描き下ろしのメッセージマンガ(2P)が掲載されています。
コメント
当時読んでいた。
今でも結末が許せない自分です。
結局のところ、得をしたのは、加害者にならずに済んだケータイ男だけ。
もう1回タイムリープしていたら、多分助けられていた。
彼に死ぬことまで伝えていたのだから、最後はそれにプラスして、
「別の事故が起こるけど誰も死なないから取り乱さないで」と説得すれば…
進研ゼミでアンハッピーエンドの漫画なんて連載しなくても…
コメントありがとうございます。当時読んでおられた、という貴重な感想…!まあ予想外の結末だったから読者の記憶に残った、という面もあるのでしょうね。