ネット・SNSでついついキツイ言葉を使っちゃうけど、訴えられないかな…?
そんな心配があるならば読んでおきたいのが、漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』。ネット・SNSの炎上トラブル案件と、その裁判を請け負う弁護士を描く、リアルな法律ドラマです。
原作は左藤真通さん、漫画は富士屋カツヒトさん。白泉社の電子漫画雑誌『黒蜜』連載で、コミックス1~7巻が刊行中(2024年10月現在)。以下『しょせん他人事ですから』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』あらすじ
いわゆる「ネット案件に強い弁護士」である保田理(やすだおさむ)。
彼がパラリーガル・加賀見灯(かがみあかり)とともに、ネット・SNSの炎上案件を本格的な法律知識でスパッと解決!(?)する様、そして被害者または加害者の悲喜こもごもが描かれていきます。
そんな保田弁護士の依頼内容に対するスタンスは、「所詮は他人事(ひとごと)」。親身に相談に乗る、というスタイルとは縁遠いものですが、そこには彼なりの矜持があって…?
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』感想・レビュー
とある主婦ブロガーがSNSで炎上…?
「え…ウソ…私のブログ…炎上してる…?!」
1巻で描かれる炎上案件。心当たりの無い誹謗中傷をネットに書かれた主婦ブロガーは、弁護士・保田に相談。取るべき対応は「削除申請」か「情報開示請求」か。
だが最終的に賠償金を取れるとしても、「(対応は)オススメはしない」と言う保田。その理由は「金がかかり、時間がかかり、精神が削られる」、つまり「しんどい」から。
ネットのトラブルに弁護士を入れても、手間や費用の割にはリターンが少なく、良くてトントンの世界。最終的には「気持ちの問題」に行きつくことが多いもの。
しかし!主婦ブロガーは熟慮の末、自分を誹謗中傷する人間の顔を拝みたい!と保田に依頼。かくして情報開示請求が本格的に動き出すことに。
そして2ヶ月後(!)、プロバイダからの発信者情報開示請求の照会を受けたのは、意外な人物で…?
…といった感じで展開されていく炎上案件。もちろんフィクションですが、実際の手続きの流れや時間のかかり方も織り込まれ、とてもリアル。
「スカッとする」系の話では無いが…
一方、炎上案件には被害者だけではなく「加害者」も存在。『しょせん他人事ですから』では、そんな加害者が時に提訴相手として、時に依頼者として、両方向から描かれます。
大した悪意はなく、はたまた歪んだ正義感から、有名人やゲーム実況者など目につく相手に、「悪質」な誹謗中傷をしてしまう彼・彼女たち。
しかしある日、プロバイダから情報開示に関する通知書が手元に届き、「マズイ事態」に陥っていることに気づく…。
そんな加害者たち、最終的には示談金を払ったり、果ては家族関係が崩壊したりと「痛い目」を見るのですが、その様子を見ても決してスカッとはしません。
なぜなら先述の通り、弁護士を通したやり取りは「しんどいもの」であり、「誰も得をしないもの」だから。
ですが「誰しもが被害者・加害者、どちらにも成りうる可能性がある」と思わせるストーリーは非常にリアルで、決して「他人事」には思えない。現実的かつ示唆に富んでいて、読み応えがあります。
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「他人事」なスタンスが大事?
そんな『しょせん他人事ですから』。弁護士が主人公なのに、「他人事」というワードに気になる響きがあるのですが、この言葉は監修の弁護士・清水陽平氏が大切にしている言葉だそう。(1巻末・作品解説より)
依頼者の感情に同化するのではなく、あくまでも第三者として一歩引いた視点から紛争の解決を目指すため、あえて取る「他人事」のスタンス。劇中にも所々その姿勢が登場し、納得感があります。
一方、「しょせん他人事ですから」という言葉は、作中の「加害者」にも当てはまるもの。2巻で保田弁護士は、同僚・加賀見に対して語ります。
「SNSにどっぷり浸かると”モノ申したくなる”でしょ?」
「そこから書き込むまであと一歩だよ?」
「ネットの向こう」に対してその「一歩」を踏み出してしまった人々も、送信ボタンを押す前に「しょせん他人事」と踏みとどまっていれば…?
どこに境界線を引くかはなかなか難しいところもあります。ですが誰しもがネットで簡単に繋がれる世界で、その言葉を心の片隅に置いておくと、痛い目を見ずに済む…のかもしれません。
感想・レビューまとめ
以上、漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』の感想・レビューでした。
「私、ネットでちょっとイキりがちかも…?」と不安な人に、オススメの漫画。非常にリアリティのあるストーリーで、読むとネットとの付き合い方に必ず変化が起こるでしょう。
さて本作をフィクションとして心置きなく楽しめるか、もしくは冷や汗を流すのかは、あなた次第…。
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