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漫画『勇気あるものより散れ』感想―不死者の哀しき戦い描く剣撃アクション

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「おれがこれまで生き永らえたのは この娘と出会う為だったのかもしれない」

不死の少女と、その眷属となったサムライ。一蓮托生となった二人の悲壮な戦い、その結末は―。

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相田裕さんの漫画『勇気あるものより散れ』。明治を舞台に、悲壮感あふれる不死者の戦いが描かれます。連載は白泉社の漫画雑誌「ヤングアニマル」。2024年1月現在、単行本1~5巻が刊行中。

『勇気あるものより散れ』感想・レビュー

どんな話?主なあらすじ

時は明治7年(1874年)、所は東京府。元会津藩士・鬼生田春安(おにうだはるやす)は、少女・菖蒲(あやめ)の仇討ちに肩入れ。内務卿・大久保利通の馬車を襲撃する。

その最中、馬車から飛び出た九皐(きゅうこう)シノより、剣撃を受ける春安。戦いの末、彼女を斬る。

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だが、髪を銀(しろがね)に変化させ復活したシノ!その人間離れした能力に、返り討ちに。

瀕死となった春安は、その後シノの血を飲み回復。不死者である彼女の眷属に。シノの「母を殺して自分も死ぬ」という悲壮な道を、一蓮托生の身となり歩いていく―。

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哀しき不死者「化野民」

大久保利通暗殺未遂を経て、主従関係となったシノ・春安。「シノの母・九皐三千歳(きゅうこう・みちとせ)を殺す」ことを目的に行動するように。

だがなぜ、シノは実の母を殺そうとするのか?それは母が不死者「化野民(あだしののたみ)」であることに理由が。

勇気あるものより散れ 3 (ヤングアニマルコミックス)

「化野民」とは何百年も昔、飢えのために神々の住む土地「化野(あだしの)」を目指し、やがて人を超える力を持った不死の人間たち。だがその力を時の権力に利用され続け、特に母・三千歳は、長い年月を生きるうちに精神が破綻…。

その三千歳と人間の間に生まれたシノは、血を流すと銀髪となり、驚異的な再生能力と運動能力を発揮する「半隠る化野民(はたかくるあだしののたみ)」。母を救うためにその命を絶ち、さらに自身の死をも望む彼女。政府の持つ不死者を殺す妖刀「殺生石」を求め、悲しい修羅の道を歩んでいきます。

「死を求める少女」と「死に損ねた男」

一方シノの血を分け与えられ、“半不死”の眷属となった元会津藩士・春安。戊辰戦争で家族を失い、また自身も傷を負って戦えぬ中に戦争が集結。「死に損ねた」と感じている男。

しかし「この五年間 どう命を捨てるかばかり考えてきたが… 使うものだと思い出したわ!」と新たな大義を見出し、その命をシノに捧げていくことに。

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シノと春安。「死ぬことを目的とした女」と、「女の目的の成就に生き様を見出した男」。この救いようの無い構図に漂う、哀しくも皮肉的な二人の戦いが、『勇気あるものより散れ』ならではの魅力。

全編からあふれる「悲壮感」が、じわじわと胸を締め上げてくる…!

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迫力の剣撃アクション

そんな「母殺し」という血塗られた道を歩んでいく二人。その前に立ち塞がるは、妖刀「殺生石」を守る幕府の侍たちだけでなく、母を守らんとする実の兄妹たちが…。

そこで展開される剣劇アクションが圧巻!の迫力。刀と刀がぶつかり合い、肉体を突き刺し切り裂く剣撃シーン。スピード感あふれるその戦い、「化野民」の特殊な力も加わって息を呑むこと必至!

勇気あるものより散れ 5 (ヤングアニマルコミックス)

そのアクションを作り上げているのは、作者・相田裕さんの緻密な取材と表現力。インタビューによると、実際に模造刀を振ったり、着物を着た時の動きをイメージして作画をされているそう。

人を斬った刀を鞘におさめる前に、血糊を拭き取る動作の描写があったり(3巻冒頭)と、さりげない所作の「リアリティ」にもこだわりを感じます。

また劇中には「伊庭八郎」「山川浩」「新選組」といった歴史上の人物や組織も登場し、史実とゆるやかにリンク。リアルとフィクションが良い感じで融合し、物語に深みを与えています。

折しも世は、刀から鉄砲へと戦いの姿を変えていく時期。死に場所を求めるサムライたちが、最後に切っ先を向けるのは果たして…?

『勇気あるものより散れ』まとめ

以上、相田裕さんの漫画『勇気あるものより散れ』の感想・レビューでした。

明治初期を舞台に描かれる哀しき物語。”不死者”というファンタジー要素と迫力のチャンバラ・アクションがいい感じに絡み合い、ぐいぐい引き込まれます。

そしてシリアスなストーリーの中に時折挟まれる、ユーモラスな描写も相田裕さんならではのご愛嬌(笑)。迫真の侍アクションとのアクセントも楽しんでみてください。

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