漫画『勇気あるものより散れ』―不死者と眷属の哀しき戦い描く剣撃アクション

「おれがこれまで生き永らえたのは この娘と出会う為だったのかもしれない」

不死の少女と、その眷属となったサムライ。一蓮托生となった二人の悲壮な戦い、その結末は―。

『GUNSLINGER GIRL』『1518! イチゴーイチハチ!』の相田裕さん新作は、明治を舞台に不死者の戦いを描く『勇気あるものより散れ』。白泉社ヤングアニマル誌連載で、2022年3月現在2巻まで刊行中。

『勇気あるものより散れ』感想・レビュー

『勇気あるものより散れ』あらすじ

時は明治7年(1874年)、所は東京府。元会津藩士・鬼生田春安(おにうだはるやす)は、少女・菖蒲(あやめ)の仇討ちに肩入れ。内務卿・大久保利通の馬車を襲撃する。

その最中、馬車から飛び出た九皐(きゅうこう)シノより剣撃を受ける春安。戦いのすえ彼女を斬るが、髪を銀(しろがね)に変化させ復活した彼女の返り討ちにあう。

瀕死となる春安だが、その後シノの血を飲み回復。不死者である彼女の眷属となりその目指すところ「母を殺して自分も死ぬこと」に協力していく―。

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哀しき不死者「化野民」

第一話・大久保利通暗殺未遂を経て、主従関係となったシノ・春安。以降、シノの「目的」を果たすために、行動を共にしていくことに。

その目的とは「化野民(あだしののたみ)であるシノの母・九皐三千歳(きゅうこう・みちとせ)を殺す」こと。

何百年も昔、飢えのために神々の住む土地「化野(あだしの)」を目指し、やがて飢えから解放され不死者となった人間たち「化野民(あだしののたみ)」。

シノはその「化野民」である三千歳と人間の間に生まれた、「半隠る化野民(はたかくるあだしののたみ)」という存在。血を流すと銀髪となり、驚異的な再生能力と運動能力を発揮します。

「死を求める少女」と「死に損ねた男」

ですが権力に利用されてきた三千歳は、長い年月を生きるうちに精神が破綻。シノたち子どものことも認識できぬように。

そんな母を救うためにその命を絶ち、さらに自身の死をも望むシノ。不死者を殺す妖刀「殺生石」を求め、悲しい道を歩んでいきます。

一方、シノの血を分け与えられ“半不死”となった春安。元会津藩士である彼は戊辰戦争で家族を失い、また自身も傷を負って入院中に戦争が終わり、「死に損ねた」と感じている男

しかしシノの眷属となった春安は、彼女に仕えることを新たな大義と感じるように。「この五年間 どう命を捨てるかばかり考えてきたが… 使うものだと思い出したわ!」とその命を捧げていきます。

シノと春安。死ぬことを目的とした女と、女の目的の成就に生き様を見出した男。哀しくも皮肉的な構図を持つ二人は、『勇気あるものより散れ』の中で、さてどのような運命を辿るのか?

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迫力の剣撃アクション

かくして同士となった二人は、目的を成し遂げることのできる刀「殺生石」を求め、敵対する幕府の侍たちと刀を交えていくことに。

そこで展開されるアクションが『勇気あるものより散れ』の見どころの一つ。刀と刀がぶつかり合い肉体を突き刺し切り裂く剣撃シーン。スピード感あふれるその戦いは、「化野民」の特殊な力も加わって息を呑む迫力。

相田裕はなぜ“戦う女の子”を描くのか? 新作『勇気あるものより散れ』の制作秘話を聞く
武士の世が終わりを迎えようとしていた明治の東京。死に場所を求めて大久保利通の暗殺計画に参加した元会津藩士の鬼生田春安は、ある人物に暗殺を阻まれたうえ、斬られてしまう。その人物というのは袴姿の少女で、しかも不死の力を持つシノ。死を望む春安だったが、シノは彼をある方法で助け、自らの眷属とする。それは「不死…

『勇気あるものより散れ』1巻刊行とともに公開されたインタビューでは、相田裕さんは実際に模造刀を振ったり、着物を着た時の動きをイメージして作画をされているそう。

また劇中には「伊庭八郎」「山川浩」といった実在の人物も登場。こだわりのアクション描写とともに、物語にリアリティを与えています。

折しも世は、刀から鉄砲へと戦いの姿を変えていく時期。死に場所を求めるサムライたちが、最後に切っ先を向けるのは果たして…?

まとめ

以上、相田裕さんの漫画『勇気あるものより散れ』の感想・レビューでした。

明治初期を舞台に描かれる哀しき物語。”不死者”というファンタジー要素と迫力のチャンバラ・アクションがいい感じに絡み合い、ぐいぐい引き込まれます。

そしてシリアスなストーリーの中に、時折挟まれるカワイイ描写が相田裕さんならではのご愛嬌(笑)。迫真の侍アクションとのアクセントも楽しんでみてください。

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