小さな町で起こった”ある異変”は、やがて渦を巻くように町全体を覆いはじめ…
『富江』シリーズなどで著名な伊藤潤二さんの長編ホラー漫画『うずまき』。美しさとグロテスクさを併せ持つ、作者の代表作品の一つです。
連載は小学館ビッグコミックスピリッツで、全3巻完結済み。映画など各種メディア化もされました。以下、漫画『うずまき』のレビューです。
『うずまき』あらすじ
これからお話するのは…
この町で起こった奇妙な怪異の数々です…
(「うずまき」第一話「うずまきマニア(その1)」冒頭より)
という主人公の女子高生・五島桐絵のモノローグから始まる、ホラー漫画『うずまき』。彼女とボーイフレンド・斎藤秀一の住む黒渦町が、「”うずまき”にまつわる怪異」に覆われていく様が、得も言われぬ恐怖とともに描かれていきます。
『うずまき』レビュー
“うずまき”が巻き起こす恐怖
模様・デザインから物理現象まで、実際に身近にある「渦巻き」。じっと見つめていると、その中心に吸い込まれるような気もする、不思議な形。
しかしその形が人々の生活や身体に影響を及ぼし始めたら…?
その異変がまず現れたのは、秀一の父親。突如、身の回りにある「うずまき」にこだわり始めた彼は、部屋をうずまき模様やグッズで埋め尽くすように。それを眺める彼の目もグルグルと回りはじめ、そして驚愕の最期を迎える…。
そんなある家庭に起こった怪異は、やがて桐絵と秀一の周辺、そして町全体を覆いはじめ、人々を恐怖のどん底へと突き落としていくことに。
その恐怖の起因は、得体のしれない”うずまき”。物語のそこかしこに出現する不気味な模様を目にするうちに、「この町は”うずまき”に汚染されている…」と心に不安が渦巻いてきます。
気持ち悪さの中にある「美」
そんな漫画『うずまき』で描かれる怪異の数々。ショッキング・グロテスクなシーンも多々あり、ホラー漫画「らしい」気持ち悪さを感じます。
が、その中にある種の「美しさ」を感じるのが、伊藤潤二作品ならでは。
特に本作では、作者の丁寧な描写力と「渦巻き」模様の持つ自然な美が、見事に融合。「気持ち悪さ」と「美しさ」が同時に伝わってくるという、他のホラー作品には無いインパクトがあります。
その魅力が大きく発揮されているのが、第3話「傷跡」。秀一に興味を持った、桐絵の同級生・あざみ。美しい顔と、その額にある三日月型の傷跡が魅力の少女なのですが、“うずまき”の影響を受けてその顔は徐々に変容を…?
『うずまき』ならではのビジュアルと、短編ホラーとしても成立しそうなストーリーは、恐怖と美しさを同時に感じる迫力の一編。一度読むと忘れられない、伊藤潤二さんならではの魅力が詰まった一話です。
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予想外過ぎる!終盤の展開
物語前半では、”うずまき”の怪異は桐絵と秀一の身近にとどまります。しかし話が進むにつれ、その影響は黒渦町全域へと拡大。町は壊滅し、人々の精神や肉体にも”うずまき”の影響が出始めることに…。
…ぶっちゃけて言うと、その内容はちょっと笑えるもの。ホラー漫画はその荒唐無稽さから、時にギャグ漫画とギリギリ紙一重になることがありますが、この『うずまき』でもそれは同様。
ですがホラーから外れそうな内容を大真面目にやり通して、「ホラー以上のホラー」に昇華させてしまうのが、伊藤潤二という漫画家さんの不思議な力。本作でも予想外のラストへと、読者を導いてくれます。
桐絵と秀一、そして黒渦町が巻き込まれる恐怖。「うずまき」はどこへと繋がっているのか…?
レビューまとめ
以上、伊藤潤二さんの漫画『うずまき』全3巻のネタバレなしレビューでした。“うずまき”の端に居たと思ったら、いつの間にかその中心に巻き込まれていた…。そんな不思議な吸引力を持つホラーです。
なお本作では主人公・桐絵の美しさも見逃せないポイント。端正な顔の美少女なのですが、常に漂わせる不安感がその美しさを増幅、ついつい見入ってしまいます。「伊藤潤二ヒロイン」の魅力が詰まっている、彼女の美麗さを堪能してみてください。
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