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漫画レビュー『ベントラーベントラー』衝撃の最終回がスゴイ!SFコメディ

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一般社会に宇宙人が溶け込んだ世界。日常で起こる宇宙人絡みのトラブルをコミカルに描く、野村亮馬さんのコメディSF『ベントラーベントラー』。

ベントラーベントラー(1) (アフタヌーンコミックス)

主人公の女子公務員・すみちゃんと、怪しい生物にしか見えない宇宙人・クタムくん。二人が織りなすゆるい笑いが魅力なのですが、最終回がなかなか衝撃的。記憶に残るSF漫画です。

2008~2010年の連載で全3巻完結済み。以下『ベントラーベントラー』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。

『ベントラーベントラー』あらすじ

外星人(=宇宙人)の存在が一般化した世界。日本の首都圏民営警察外星生物警備課では、「ベントラーベントラー」の方針のもと、外星人に関するもろもろのトラブルにあたる。

※「ベントラーベントラー」は「地球外より侵入した生物及び漂着物に対する処遇を在地球外星人に仰げ」の隠語。

その外星警備課にて、課長・三田、先輩・市河とともに働く牧原澄子=通称すみちゃん。外星からの無人探査機の処理に関して、地球在住の外星人・クタムに協力を要請することに。

認識票を追って彼を探すすみちゃんは、新宿のカレー屋でインド人に日本語を教える彼を発見する…。

『ベントラーベントラー』レビュー

ゆるい笑いの宇宙人コメディSF

第一話ですっとぼけた出会いを果たした、すみちゃんとクタム君。以降『ベントラーベントラー』では、外星人が絡んだ不思議な出来事に二人が関わっていく様子が、コミカルに描かれていきます。

そのコメディ要素の大きな部分を占めているのが、宇宙人クタム君。短期間で数カ国後を習得、漢字もかけるという高度な知能を有し、電波通信が「見え」たりする特殊技能も持つ、明らかに人類より優れた存在である彼。

ベントラーベントラー(2) (アフタヌーンコミックス)

が、やたらボケたりすみちゃんをからかったり。見た目や知能からは想像できない軽さと小憎たらさを持つ、人間以上に人間くさい不思議な宇宙人(笑)です。

そんなクタム君の相手をもっぱら務めるのが、外星課いちばんの若手であるすみちゃん。

上司である三田にいいように使われつつも、持ち前のあっけらかんとした動じない性格で、なんだかんだ言ってクタム君といいコンビに

ユーモアがあふれ過ぎるクタム君と、彼を「カニ野郎」と罵るすみちゃん。二人の愉快な掛け合いに、思わず笑いがこぼれます。

本格的なSFエピソードが面白い!

その笑いの背景に本格的なSF観が横たわっているのが、『ベントラーベントラー』の侮れないところ。

異星の探査機の前で記念写真を撮った双子の一人が、その個体情報を知らずにコピーされ、宇宙船内で復元。研究ののちに地球へ還され、「三番目の双子」となってしまう事件の顛末を描く『世田谷トリプレッツ』(1巻収録)。

2万メートル上空に浮かぶ謎の浮遊物の影響により、直下にある東京湾周辺の重力が8分の1Gに。軽いパニック状態に…ではなく、軽いお祭り状態になってしまう出来事を描く『低重力災害警報』(2巻収録)。

宇宙人と交戦状態に入っている平行世界で、兵士として戦車に乗る「墨子」となってしまったことに気づくすみちゃん。そもそもの原因は外星漂流物の調査にあったようなのだが…『澄子と墨子』(3巻収録)。

などなど、作者・野村亮馬さんの豊富なSF知識と描写力によって紡がれるSFエピソードが実に面白い!基本は「SFコメディ」ながら、随所に描かれるSF要素が本作をきっちり「SF漫画」にしています。

しかしそのSF観をくどくなり過ぎない加減でサラリと描いているのが、何ともウマイ。SF上級者から初心者まで、幅広く楽しめるつくりです。

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驚愕!の最終回

そんな本格的SF描写のもとにゆるい笑いを展開する、という絶妙な味わいを持つ『ベントラーベントラー』。ゆる~い感じでチャンチャン♪なエンドを迎えるのかと思いきや…

なんと最終2話で衝撃の展開が!

ベントラーベントラー(3) (アフタヌーンコミックス)

最終回のひとつ手前、第20回『処理係と睡眠者(スイーパーとスリーパー)』で、故郷への帰還を匂わすクタム君。一方、外星課としての業務中に、すみちゃんの身の上に「ある異変」が起こります

さて、すみちゃんに起こった異変とは?その異変を解決する手段はあるのか…?

本ブログは基本ネタバレ無しなので詳細は割愛しますが、これが実にビックリ!な展開で、度肝を抜かれること必至。このラスト2話で『ベントラーベントラー』は自分の中で忘れられないSF作品となりました。

すみちゃんとクタム君のキャラクターが遺憾なく発揮された、良いラスト。この驚きを、ぜひ本編でお楽しみいただきたい…!

レビューまとめ

以上、野村亮馬さん『ベントラーベントラー』のネタバレなしレビューでした。

全3巻というコンパクトさながら、衝撃的な展開を見せるラストで記憶に残るSF漫画。すみちゃんとクタム君の軽妙な会話(ボケ+ツッコミとも言う)もクセになる味わいです。

なお3巻末には、2巻より登場のサブキャラ女性型人造人間・セルマの「造物主探し」を描く短編『夢みる人造人間』を収録。こちらも秀逸なSF短編なので、本編と合わせてお楽しみを。

ベントラーベントラー(1) (アフタヌーンコミックス)

野村亮馬さんは本作の他にも『キヌ六』全2巻や、自主レーベルより刊行の『第三惑星用心棒』など、魅力的なSF漫画を発表されています。どれから読んでも面白い!ので、ぜひその世界観に触れてみてください。

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