「街の七不思議」の真実を知りたい少女たち。その冒険にはどこか不穏な空気がつきまとい…?
コメディタッチの中にオカルトでミステリアスな雰囲気が漂う、ちょっと「ゾワゾワ」する冒険(?)漫画。道満晴明(どうまんせいまん)さんの『ビバリウムで朝食を』感想・レビューです。
連載は秋田書店「チャンピオンRED」。2024年12月現在、単行本1~3巻が刊行中。以下、『ビバリウムで朝食を』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『ビバリウムで朝食を』あらすじ
雲雀(ひばり)市に住む小学6年生女子ヨキ・ミコト・キクリは、夏休みの自由課題で「街の七不思議」を調べることに。
しかし「7つ目の不思議」の中身がどうしてもわからない。
その後、秘密基地での会合から帰宅するヨキは、道端で「謎の幽霊」から「鍵」を渡される。
それはかつて不慮の死を遂げた友人からのメッセージなのか…?
さらに秘密を追ううちに、七不思議の1つ「ノッポマン」に出会うヨキ。
現代では考えられない便利な道具を使う彼を「師匠」と慕い、「人探し」に協力することに。
やがて「謎の転校生」も現れ、不思議な冒険は加速していく、が…?
『ビバリウムで朝食を』のココが面白い!
ミステリアスな夏の冒険
過去作『メランコリア』では、コメディの中に「終わりを迎える世界」の退廃的な空気を。
『バビロンまでは何光年?』では、スチャラカなSFコメディの中にお下品な下ネタをふんだんに。
ポップで親しみやすい絵柄と、ゆるやかでシュールな笑いをベースに、物語のそこかしこにドッキリするような「毒」を仕込んでいる。そんな作風が特徴的な道満晴明さん。
本作『ビバリウムで朝食を』は同じくコメディ風味ながら、とにかく「空気が不穏」。
小学生の他愛無い冒険、しかし次に何が起こるかわからない、どこへ連れていかれるかわからない、そんなゾワゾワするような「不安感」がつきまといます。
自分が読んだ道満晴明マンガの中では、南国の不思議リゾートで起こる悲喜こもごもを描く『ヴォイニッチホテル』に近い感じ。
本作はここまでエログロ感は無いけれど、その分ミステリアス成分強め、という印象。
随所に仕込まれた『ドラえもん』パロディ(笑)
さて『ビバリウムで朝食を』の中心となるのは、少女ヨキと謎の青年(?)ノッポマン。
「自分は探偵で4人の人間を探している」というノッポマンに興味を持ち、ヨキはその助手を務めるように。
その過程でヨキは、異なる言語間での会話を可能にするこんにゃくや、壁に貼ると別の場所に通り抜けできるポスターなど、不思議な「ナイショ道具(仮)」に触れていきます。
…それって『ドラえもん』じゃん!(笑)
と思わずツッコんでしまうのですが、作者ならではのコメディセンスが相も変わらずバツグン。露骨過ぎるパロディに、噴飯必至!
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不穏な空気がたまらない!
しかし物語が進むにつれ、徐々に高まる不穏な空気。
全身タトゥーのワイルドなお姉さんなど、街に新たに現れる人たち。
ノッポマンと同じく不思議な「ナイショ道具」を使う彼女たちは、どうやらノッポマンが探すターゲットのようで…?
そして「街の七不思議」研究を続けるヨキは、知らず「街の暗部」へと近づき、そこで命の危険にさらされる!
そこをノッポマンに助けられるのだが、素性の知れない彼は本当に「味方」なのか…?
…といった物語のスタート。色々と謎がバラまかれ、オカルティックでミステリアスな展開へ。
ゆる~い笑いの中に漂う「得体の知れない空気」は、果たしてどのように転化していくのか?続きが気になる!ところです。
感想・レビューまとめ
以上、道満晴明さんの漫画『ビバリウムで朝食を』感想・レビューでした。
道満晴明さんは上記でご紹介した『メランコリア』や『バビロンまでは何光年?』を読んでいただけるとわかるのですが、伏線の散りばめ方や回収が非常に上手い漫画家さん。
本作『ビバリウムで朝食を』でも様々な「謎」が散りばめられているのですが、それらが結末に向かってどのように収束していくのか、今から楽しみです。
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