類まれなる才能、そして熱い情熱を持つ二人の少女は高校に進学。「女子野球部」で頂点を目指すー!
「女子野球」に青春のあらん限りをつぎ込む少女たちを描く、迫真のガールズ・ベースボール・ロマン。伊図透(いずとおる)さんの漫画『オール・ザ・マーブルズ!』レビューです。
本作はKADOKAWA「月刊ビームコミックス」に掲載されていた漫画『全速力の。』を改題したもの。2024年4月現在、単行本1~5巻が刊行中。
以下『オール・ザ・マーブルズ!』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『オール・ザ・マーブルズ!』あらすじ
野球がオリンピック種目から除外・復帰を繰り返していた頃。中学で男子に混ざり野球をする結城愛(ゆうきめぐみ)は、顕著になる体格差、そして進路に悩んでいた。
野球を続けるか、それとも…?
そんな彼女が偶然見かけたのは、ひとりピッチング練習に励む長身の少女・草吹恵(くさぶきめぐみ)。そのしなやかなフォーム、しなる左腕から繰り出される速球に釘付けとなる。
やがて愛は、全国でも数少ない、本格的な「硬式女子野球部」のある高校に進学。そこで野球に情熱をかける仲間たち、そして草吹恵とチームメイトになり、野球のさらなる高みを目指していく…!
『オール・ザ・マーブルズ!』レビュー
伊図透・初の本格スポーツ漫画
女性兵士の葛藤と孤独な戦いを綴る『銃座のウルナ』や、鉄道敷設に命をかける男たちの矜持を描く『犬釘を撃て!』など、渋みのあるドラマを独特の筆致で描いてきた作者・伊図透さん。
その新作は、なんとスポーツ漫画!しかも「女子野球」というマイナースポーツが題材。おそらく本格的なスポーツ漫画は初めてであろう作者、その描写は果たして…
実際に『オール・ザ・マーブルズ!』本編に触れてみると、これが予想以上に本格的!
力強く、しかし流れるような線で表現される選手たちの動きに、他のどのスポーツ漫画とも似ていない独特の躍動感が。
その中でも目を引くのが、主人公の一人・草吹恵のピッチング。めぐまれた体と高い運動能力、そして何より野球への飽くなき情熱を持つ彼女。
その長身がしなり、誰もが「彼女は特別だー」と認める瞬間に、思わず気持ちが昂ぶっていく…!
女子野球を取り巻く現実
しかし『オール・ザ・マーブルズ!』で描かれるのは、はつらつとしたスポーツ描写だけではない。
それは「女性が野球をすること」の壁にぶち当たり、もがく主人公たちの姿。
成長が進むにつれハッキリしてくる男子との体格差。女子野球を受け入れる環境の狭さ。そして野球を続けたとしても、その先にあるものが見えない…。
個人の力ではどうにもならない「女子野球の現実」が、彼女たちの青春に影のようにつきまといます。
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野球に懸ける情熱が熱い!
が、そんな影を吹き飛ばすのが若さ、そして野球への情熱!
ストイックに野球に打ち込んできた、もう一人の主人公・結城愛。一時は野球の道を諦めることも考えた彼女は、草吹恵という「ホンモノ」に出会い、情熱を新たに燃やしていく。
そして「女子野球ができる高校」に集まってきた、野球が好き過ぎる!仲間たちが、「二人のめぐみ」を中心にまとまっていく。「今を野球に懸ける」チームの様子が、読み手の心に爽やかで熱い風を吹かせます。
なおタイトルの『オール・ザ・マーブルズ!“(go for)all the marbles”』の意味は、「いちかばちかやってみる」「すべてを懸ける」。
文字通り野球に青春の全てを注ぎ込む彼女たちは、どんな場所へたどりつくのか…?
レビューまとめ
以上、伊図透さんの漫画『オール・ザ・マーブルズ!』のネタバレなしレビューでした。
巧みな表現力で描かれる野球描写と、悩みを抱えつつも成長していく女子野球選手たちの躍動が魅力の、新感覚スポーツ漫画です。
そして、野球選手としてさらなる高みへ登っていかんとする、恵と愛。その活躍が描かれるであろう、今後の新たなステージに期待が高まります。
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