くさばよしみ・編、中川学・絵「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」(汐文社)を読みました。
妻がテレビ番組で本書の紹介を見て、何やら感激したよう。
即ネットで注文…といきたかったところですが、やっぱり同じように興味をもった方がいっぱいいたのでしょうね、なかなか手に入らず。
昨日やっと届いた本がこちら。
青々とした背景が美しい表紙です。中央で鶏を抱いている老人が、南米・ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領。
彼が2012年、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国際会議で、「幸福」について語ったスピーチが話題になりました。
と書けば、何となくそんな話題もあった、と思い出す方も多いのではないでしょうか。
本書はそのムヒカ大統領が行ったスピーチを意訳し、子供向けの表現に編集して絵本化したものです。
「世界でいちばん貧しい大統領」感想
ムヒカ大統領は、「世界でいちばん貧しい大統領」とのこと。
給料の大半を寄付し、公邸には住まず、自ら古いフォルクス・ワーゲンを運転して公務に向かうそうです。
そんな彼を、国民は親しみを込めて「ぺぺ」と呼びます。
ムヒカ大統領によると、ウルグアイでは過去労働者が長時間働かされていたが、懸命な戦いの末、8時間、そして現在は6時間だけ働けば良いことになったそうです。
しかしその結果、人々は6時間の労働の他に、さらに別の仕事をしています。それは購入した商品のローンを払うため。
そしてそれを繰り返して、気づけば大統領自身のような老人となり、人生を終えていく。
「これが人生のたどり着いた先か」
日本に住む私たちにも、何となく思い当たる話です。
ムヒカ大統領は語ります。
社会が発展し人々が裕福になった。しかし大量消費社会はこの先も続くのか、そしてその先にあるものは何か。
今むかえている危機の原因は、「私たちの幸せの中身」。見なおさなくてはならないのは、「私たち自身の生き方」なのではないだろうか、と。
ムヒカ大統領は何も「西洋消費社会はけしからん!原始時代まで戻ろう」と主張しているわけではありません。
ただ「発展、幸福、そして『より良い生活』ってなんだろう」と、問いかけます。
本書を読んで、その内容にとても共感しました。
ただ翻って、それを今の生活に即反映できるかというと、難しいことも事実です。
でも大事なことは、スピーチの内容を振り返って自省したり、または家族や身近な人と考えたり話合ったりすること。
そのきっかけとなるのがこの「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」であると思います。
魅力的な美しいビジュアル
この絵本のもう一つの魅力はビジュアル。中川学氏の描く絵が素晴らしい!
豊かな色彩で、のびのびと描かれたイラストの数々。その美しさ・鮮やかさが、スピーチの内容を読むものの心に印象づけ、また本を何度も見返したくなる。そんな相乗効果を生み出しています。
この「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」。絵本という体裁ですが、大人が読んでも楽しめる、いえ老若男女問わず読める絵本です。
小学校低学年だとちょっと早いかな?ぐらいですが、10歳程度であれば内容は充分理解できるでしょう。
現在ではKindle版も刊行されています。読みやすい内容なので、興味を持たれた方はぜひ、チェックしてみてください。
ムヒカ大統領のWikiはこちら。経歴・政策・人物など、なかなかユニークな方です。