「異形の表情」を浮かべて死んだ、オカルト雑誌のライター・犬吠崎しおい。その葬儀で、参列者はささやく。
「ありゃあニクバミホネギシミだ」
数十年後、しおいの甥・若潮は、彼女の怪死の真相を探るべく、元同僚のカメラマン・浅間を訪ねる。
強い霊感を持つ浅間。その口から語られるのは、1999年当時に二人が出会った、驚くべき怪異の数々だった。
ノストラダムスが人類滅亡を予言したその年、果たして何が起こったのか…?
以上が、パレゴリックさんの『ニクバミホネギシミ』の主なあらすじ。
若くして異様な死を遂げた叔母。その死の真相を探る青年が、彼女の「友人」が語る恐怖体験、そして「新たな恐怖」に引きずり込まれていく、オカルト・ホラー漫画です。
そのひとつの軸は、しおいと浅間がオカルト雑誌の取材で遭遇する、奇妙にしておどろおどろしい怪異がつづられる「過去」の出来事。
都市伝説「ムラサキカガミ(紫の鏡)」を題材にした、第一話『逅わせ鏡の紫』を皮切りに、
尼僧となった、しおいの同級生。彼女を訪ねた二人は、奇妙な仏像を祀る寺で、恐怖の体験を…『潭多観音』
発掘現場で、人知を超えた不審死が発生。禍々しい土偶たち、その中心に据えられていたものとは…『凶蛻の祖環』
など、奇怪にして恐ろしいオカルト案件の数々が、オムニバス・ホラー的に展開されていきます。
そしてもう一つの軸が、叔母・しおいを慕っていた甥・若潮が、その死の謎をたどる過程で出会う、「現代」の怪異。
浅間・しおいとも関係していた霊能者とともに、新たな「恐怖」を体験する若潮。
濃い霧の中を手探りで進んでいくうちに、霊能力を持つ浅間の謎多き「過去」も絡んできて…?
過去と現代、ふたつの時代がリンク。真相に近づきながらも新たな謎、そして恐怖が。深みのあるストーリーに引き込まれていきます。
そんな『ニクバミホネギシミ』、作者・パレゴリックさんの作画・表現力が、何とも特徴的。
どちらかと言えばクセの強い画風ながら、決して読みにくいわけではない。
集合体恐怖症や、虫表現を絡めた怪異・霊現象・人外の描写は、ある種の気持ち悪さを感じさせつつも、決して不快過ぎない。
しおいと浅間のユニークなキャラクター性、スムーズなストーリー運びと相まって、とてもバランスの良い絶妙のホラー感アリ!
レベルの高い「ゾワゾワ」を感じさせてくれます。
そして気になるのが、物語の中核を成す謎の言葉「ニクバミホネギシミ」。
カタカナを単純に置き換えると「肉・喰み・骨・軋み」になると思われますが、その不気味な響きは、若潮の叔母・しおいの死にどのように関わっているのか?
1999年のしおいと浅間の恐怖体験、2023年の浅間と若潮の会談を通して、徐々に顕になってくるその片鱗。
劇中に蔓延する不穏な空気に、気持ちが何とも落ち着かない…!
以上、パレゴリックさんの漫画『ニクバミホネギシミ』の感想・レビューでした。
ホラー・オムニバス的な恐怖と、物語全体を覆う「謎」。過去と現在が交錯、折り重なって作り上げる恐怖感が、何とも秀逸。
独特の画風から生み出される、クオリティの高いホラー描写にも満足感があって、続きが気になり過ぎる!オカルト・ホラー漫画です。
連載は新潮社のWebメディア「くらげバンチ」で、単行本1~4巻が刊行中(2025年10月現在)。






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