NHKで放送中の「サラメシ」にて、漫画家・太田垣康男さんの職場が紹介されていました。
太田垣康男さんは私も大好きな漫画家さん。「MOONLIGHT MILE」「機動戦士ガンダム サンダーボルト」と愛読しています。
いつもは漫画感想を書いている本ブログですが、「サラメシ」で紹介されていた太田垣氏の仕事の現場、そしてまかないの様子を見た感想です。
放送は2017年5月23日に「サラメシ シーズン7 第5回」として行われたものです。
マンガスタジオのサラメシ
キッズルームでシッターさんと遊ぶ幼児。しかしお昼になると一転、ランチ部屋に様変わり。総勢11人が食卓を囲みます。
テーブルに並ぶのは、毎日手作りのまかない料理。
「太田垣さんたちに昼がきた」
漫画家・太田垣康男さんの職場でのお昼ごはんの様子です。
太田垣康男さんと作品の紹介
太田垣康男さん。動いているお姿を拝見するのは初めてです。
ややふくよかな丸顔で短めの髪、口ひげをはやして優しそうなお顔でした。
22歳で漫画家デビュー、以後28年のキャリアを持つベテラン漫画家さん。
「現在はあのロボットアニメのスピンオフ作品を連載中」とは中井貴一さんのナレーション。「ガンダム」とは言わないんですね(笑)。
作画・仕事場の様子
マンガの作画はすべてパソコンとペンタブ(ペンタブレット)で行われているようです。
画面上に取り込まれた下書きから線が入っていく主人公の一人・イオの横顔。
おぉ、こんな風に描かれているのか…。
背景やメカを担当するスタッフも、作業はすべてパソコンで。
画面上では紙・ペン・インクのたぐいは見当たらず。
「イメージしてた漫画家さんの職場と違う!」
中井貴一さんのナレ。うん、ホントですね。私もビックリしました。
「描く道具が変わったと思ってください」とは太田垣康男さんのコメント。
データを何度も使いまわせることが、デジタル化で受けるメリットの一つだそうです。
PCのモニターには、3Dで描かれた格納庫、そしてアトラスガンダムの姿が。
ひんぱんに登場するものはまずCGデータを作るとのこと。
再びモニター。表示されているのは宇宙戦艦の中の通路。
おそらくペガサス級強襲揚陸艦「スパルタン」の内部と思われます。
画面左には線で構成された通路の3Dモデリング。右にはその一部をカメラで映しているかのようなコマ。完全に漫画の背景です。
そして通路と人間の絵を組み合わせると…あら不思議、漫画の1コマが完成!
「3カット以上登場するんだったら3Dで作っちゃった方が早い」(太田垣氏)
デジタルでのマンガ制作を初めて目の当たりにしました。こんな風に作られているんですね。実に興味深い制作現場でした。
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アシスタントについて
漫画業界ではデビューを目指す若者をアシスタントとして雇うのが通例。これは業界人でなくても知っているお話です。
ところが太田垣さんは、あえてマンガ経験のない人材を採用するそう。(理由は後ほど)
現在の作画スタッフは8名。待遇は正社員で、週休2日、勤務時間は9~18時とのこと。なんというホワイト!
太田垣さんが採用にあたって気にしているのは「気配りができるかどうか」。気配りができれば自然といろいろなものが吸収でき、結果的にできる仕事が増えてくる、という考え方。
太田垣さんもかつてはマンガ家を目指す若手を雇っていたそうですが、デビューしても続かずに業界を去る現状。
もっと多くの人が長くマンガに携わる環境を作れないか、という思いから作り上げたのが今の仕事場、アシスタントの待遇だそうです。
「太田垣さんが目指すのは漫画づくりの新しい形。まさにニュータイプ」
中井さんのナレ。ニュータイプ言いたかっただけちゃうんかい(笑)。
まかないの様子
まかないさんはマンガとは関係のない、まかない専門のスタッフです。
太田垣さんの仕事場では、二人のスタッフが曜日替わりでまかないを担当します。
一日ごとの交代で、お一人の得意ジャンルは家庭料理、もう一人は創作料理。
これなら飽きがきにくいですね。太田垣さんの食事への配慮がうかがえます。これも「気配り」。
手際よくまかないを作っていくスタッフさん。今日の「マンガスタジオのサラメシ」は…
- 三色そぼろ丼
- 春巻き
- 味噌汁
- キュウリの副菜
です。めっちゃおいしそう!
三色そぼろ丼は入り卵にしらす、甘辛く煮た鳥そぼろがご飯の上にギッシリ。シシトウを二本添えて。
春巻きはたけのこやニンジンなどが野菜たっぷり入った手作り。カラッと揚がっています。
12時にはみんな揃ってお昼ごはん。
春巻きをかじるとパリッ、サクッといい音。
「おいしい!」「どうやったらこんなにうまく揚げられるの?」
スタッフからも思わず声、そして笑顔がこぼれます。見てるとこっちまで笑顔が。アカン、春巻き食べたくなってきた…。
まかないと職場への思い
太田垣さんによると、以前は仕事部屋で食事を取っていたそう。
しかしそれだと気持ちの切り替えができず、スタッフの表情が暗かったのが気になっていたそうです。
そんな状況を改善するために、専用のスタッフを雇っておいしい手作り料理を食べれるようにする。
これはスゴイことですね。わかっていてもなかなかできないです。
太田垣さんの夢は、いずれ仲間が家族を持ち、気軽に連れてこられる職場にすること。
「これがどこまで続くかわからないけれど。2・3年後にはマンガが売れなくなって会社をたたんでるかもしれないけれど、できる限りはやりたいと思って」
照れながら笑顔で話す太田垣さんが印象的でした。
そこにはマンガに打ち込むクリエイターとしての姿だけではない、会社経営者としての顔、そしてみんなを優しく見守るお父さんのような表情が窺えました。
まとめ
以上、「サラメシ」シーズン7 第5回で紹介された、漫画家・太田垣康男さんの「漫画スタジオのサラメシ」を見た感想・レビューでした。
ほぼデジタル化された制作現場。今や漫画のデジタル化はめずらしいものではなくなってきましたが、いざ実際に目にすると、かつて抱いていたそれの印象とは大きく異ることを実感。とても興味深い内容でした。
そして太田垣さんとスタッフさんたちの作り上げる職場。これもまた新しい漫画制作現場の形。志を感じました。すばらしい。
「機動戦士ガンダム サンダーボルト」は約220万部発行の大ヒット作。そんな環境も売れっ子だからできるんじゃないの?そうかもしれません。
ですが食事・スタッフの環境にこだわっているからこそヒット作を生み出せる、とも言えるのでは。
何よりおいしいごはんは仕事の原動力になりますよね。
もちろん太田垣さんの厳しい自己管理があってこそ、です。
太田垣さんが大事にする「気配り」の心が随所に見える「サラメシ」。とてもおもしろく、勉強になりました。
見逃した方は再放送や各種動画サービスでまたアーカイブをチェックしてみてくださいね。
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