マール星からやってきた不思議な生き物・チンプイと、マール星ルルロフ殿下のお妃候補に選ばれた元気な小学生・エリ。
二人が愉快な出来事を巻き起こす漫画『チンプイ』。藤子・F・不二雄漫画の面白さが凝縮された、SFコメディです。
『チンプイ』は小学館てんとう虫コミックス版・全4巻、『藤子・F・不二雄大全集』版・全2巻が刊行。以下『チンプイ』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『チンプイ』あらすじ・概要
漫画『チンプイ』は、『藤子不二雄ランド』(「藤子不二雄」がコンビ解消する前に刊行されていた漫画全集)という単行本シリーズに、1985年から1991年まで連載されていた作品。アニメ化もされました。
十二歳の女の子・春日エリのもとへある日、チンプイとワンダユウという、二人のマール星人がやってくるところから物語スタート。
マール星レピトルボルグ王家第一王子ルルロフ殿下のお妃にエリが選ばれた!というチンプイたちは、彼女を35光年離れたマール星へ連れ出そうとします。
しかし事態が一向に飲み込めないエリの姿に、「妃殿下の心の準備ができるまで待つ」と理解を示したワンダユウは、チンプイを残して帰星。
以降、「科法」を使うチンプイとエリの不思議な日常が始まる…というストーリー。
ワンダユウが持ち込むトラブルや、科法を使ったエリとチンプイの冒険などが、エリが片思い中の同級生・内木くんも交え、ユーモラスに描かれます。
『チンプイ』レビュー
おなじみの藤子メソッド
ある日、普通の少年少女のもとに不思議な存在があらわれて、物語が展開される…という形式は、藤子不二雄(F先生・A先生とも)作品おなじみのパターン(勝手に「藤子メソッド」と呼んでます)。
例えばドラえもんなら「のび太(の困り事)+ひみつ道具」が話の軸になりますが、「チンプイ」でも同様に、チンプイの使う科法や道具が登場。その力による冒険や騒動が繰り広げられます。
エリとチンプイたちの関係
基本は藤子メソッドながらも「チンプイ」がユニークなのは、エリとチンプイ・ワンダユウたちの思惑が一致していないところ。
エリをルルロフ殿下の妃にしたいワンダユウ。それに必死で抵抗するエリ。マール星人だがエリとは友人関係にあるチンプイ(エリがお妃になることにこだわっていない)。
そんな三者三様の立場が、ドタバタ劇を巻き起こします。
お妃候補としてエリに接するワンダユウと、それがちょっとうっとうしいエリ。周囲は気にせずに自由なチンプイ。基本的にはエリが迷惑を被っている、という立場。
しかしお后候補であることに気をよくして、エリが時にしたたかな顔をのぞかせたり、といったことも。のび太とドラえもんとは異なる、エリたちの関係に面白味があります。
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大人が読んでも面白い
そんな『チンプイ』、基本は少年少女向けの漫画。アニメは見たことがありましたが、漫画を読んだのは大人になってから。
読む前は大人でも楽しめるのか、ちょっと心配していましたが…
これがめちゃくちゃ面白かった!
マール星人たちとエリとの思惑のズレ、エリとチンプイのコミカルな行動、そしてキレイにまとまったラスト。
各話に必ずお笑いポイントがあり、そしてちゃんとオチがついていてスッキリ。
また多くの回で「パンパカパーン!」とワンダユウが紙吹雪と共に登場し、エリがひっくりかえるのですが、お約束とも言えるその姿が毎回のお楽しみ(笑)。年齢を問わずに楽しめるコメディです。
おそらく本作は藤子・F・不二雄先生の最後の連載作品だと思うのですが、洗練された物語運びが匠のワザを感じさせます。
『チンプイ』のラストは?
しかしこの『チンプイ』、実は未完の作品。
Wikipedia『チンプイ』ページによると、連載終了後に書き下ろしの2話が描かれる予定だったそうですが、残念ながらF先生が亡くなられたため、それはかなわず。
気になるのは「果たしてエリさまは、マール星に行ってルルロフ殿下と結婚したのか?」ですよね。
これは作中で「エリの未来」に関わる描写が多数登場しているため、おそらく、というかほぼ高確率で、エリはマール星に行ったと推察されます。
もちろん断定はできませんが、あれやこれやを想像しながら読むのもまた『チンプイ』の楽しさ、です。
レビューまとめ
以上、藤子・F・不二雄先生の漫画『チンプイ』のネタバレなしレビューでした。エリさまの元気さとチンプイのかわいさ、飽きない魅力がある全4巻です。
現在発行されている各巻はいずれも200ページを超えるボリュームで、読み応えあり。本当に面白い作品なので、大人も子どもも楽しめることうけあい。オススメの藤子・F・不二雄漫画です。
なお本記事でご紹介した『チンプイ』はてんとう虫コミックス版ですが、『藤子・F・不二雄大全集』でも『チンプイ』全2巻が刊行されています。お好みの方をどうぞ!
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