青空のもと、爽やかに仕事をする板さんと女性。二人は恋人ではなく、雇い主と従業員という関係。しかしそこには、ちょっとした秘密が…?
麻生みことさんの『海月と私』全4巻。ほっこり旅館コメディ、からの急展開が面白い!隠れた名作漫画です。以下、『海月と私』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『海月と私』あらすじ
父の遺した海沿いの民宿「とびうお荘」を継いだ、元板前の主人公(旦那さん)。そう遠くない先の廃業を考えるが、まだ予約が残っている状態。死去した老齢の仲居の代わりに、短期の仲居を募集する。
そこにやってきたのは、若く・美しく・人柄よく、そして素性の知れない女・岩松梢(いわまつ・こずえ)。若すぎることを理由に、一度は断る旦那さん。しかしやり手な梢に転がされ、成り行きで仲居として採用することに。
仲居としての有能さ、そして人を引きつける魅力を持つ梢。彼女のおかげで数々のトラブルを乗り越え、何とか回転するとびうお荘。旦那さんにとって、徐々に梢は大事な存在となっていく。
しかし、やはり訳ありな彼女。時折見せる怪しげな動きに、旦那さんの心には「ある疑念」が沸いてきて―。
『海月と私』のココが面白い!
旦那さんと美人仲居のほっこり旅館モノ?
『海月と私』の各話は基本的に一話完結。元板前の「旦那さん」と謎の美人仲居・梢のコンビを中心に、泊り客たちとのコミカルかつ、人情味あふれるエピソードが描かれます。
地方の民宿には、よんどころない事情を持つ人間が集うもの。妙によそよそしいカップル。訳あり歳の差カップル。かつての宿泊で思い出を作った人、など。
そんな客たちが持ち込むトラブルを、持ち前の機転でまるーくおさめてしまう梢。彼女の人柄、そして笑顔が何とも魅力的。ほっこり・コミカルな旅館物語に読者もニヤリ。
ミステリアスな「裏の顔」
梢の手腕に、徐々に気を許していく旦那さん。素晴らしい仲居が来てくれたことに、「こんな都合のいい現実があるわけない」といぶかりながらも、仕事が楽しくなってくる。
…って、これだけならよくあるほっこり旅館モノ漫画。しかしこの「海月と私」は、仲居・岩松梢が時おり見せる、ミステリアスな「裏の顔」におもしろさがあります。
気立ても愛想もよく、男性客も軽くいなし、仕事もできる優秀な彼女。ですが、その素性にはある秘密が…。
気になる梢の挙動
梢を信頼していく旦那さんの気持ちに、読者もつい同調。ほんわかエピソードで「えがったえがった」と満足感にひたります。
しかしそんな気持ちをいとも簡単に打ち砕く出来事が。
梢に貸したパソコンの検索履歴を、ついぞ見てしまった旦那さん。そこに残っていたのは「温泉権の取得に関する法律」。
旦那さんの胸の内に沸き起こる、とある疑念。温泉権から連想するのは相続。果たして彼女は、自分と過去の恋人との間に産まれた子供なのではないか…?
物語の各所でちょっとずつ描かれる、梢の「謎」。読みながら彼女の素性が気になって仕方がなくなります。これは怪しい…!
終盤は怒涛の展開に
ほっこりエピソードと、ほんのりサスペンス風味が、のらりくらりと交錯する『海月と私』。最終第4巻では予想をさらに超える、怒涛の展開に。
今までのほんわか旅館モノはどこへやら。梢が、旦那さんが、ジェットコースターのように目まぐるしい動きを見せます。これがおもしろすぎて、ニヤニヤが止まりません。
果たして梢の正体は?そして旦那さんはどこまで転がされるのか?
「海月と私」。男と女のラブゲーム(古い)も期待しがちですが、そんな読者の期待をスルッといなし、別次元のおもしろさに連れて行ってくれる漫画です。
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感想・レビューまとめ
以上、麻生みことさんの漫画『海月と私』全4巻の感想・レビューでした。読み終わった後で全編を見返すと、なるほど!となる伏線が随所にあり、飽きないおもしろさがあります。
ほっこり人情もの漫画が好きな方も、サスペンス風味の漫画が好きな方にも、おすすめの一作。笑って、ドキドキして、ラストはニヤリとしてしまう。贅沢なおもしろさを持つ漫画です。
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