魔界の入り口。それは傍らに立つ人間を引き寄せずにはいられないもの―。
田辺剛さん描くホラー短編集「魔犬」。
ホラー小説の雄・ラブクラフトの描いた作品を漫画化したものです。
私はホラー小説もホラー漫画も好きですが、ラブクラフト作品についてはあまり知識がなく。
ラブクラフトについてより詳しく知りたい方は、下記リンクよりどうぞ。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト – Wikipedia
概要
「魔犬 ラヴクラフト傑作集」はH・P・ラブクラフト作品のうちから3編を選び、コミカライズした漫画単行本です。
掲載作品は下記の通り。
・「神殿」
大戦中、イギリス貨物船を撃沈したドイツ軍潜水艦は、貨物船乗組員の亡霊に悩まされる。
そして最後に残った艦長が海底で見たものは―。
・「魔犬」
墓場荒らしに刺激を求める若者二人。
「大きな墳墓から魔力を秘めた宝を盗み出した墓場泥棒」の墓を暴いた彼らは、翡翠の魔除けを手に入れる。
それ以来、彼らの耳には獣のような遠吠えが…。
・「名もなき都」
アラビアの部族が近づくことを禁忌とする廃都。
その遺跡を発見した男は、神殿の開口部から吹く風に誘われるように奥へと進む。
やがて眼前に広がる驚愕の風景。
「魔犬 ラヴクラフト傑作集」感想
開いてはいけない「魔の扉」
黒と白を基調とした闇の世界を描いたコミック。
切った貼ったではなく、その雰囲気で味わう恐怖。スゴイいい!
原著を未読なのでそちらとの比較はできませんが、ページをめくるドキドキ感、そして読み終わったあとに感じる余韻から、本作が素晴らしい漫画であることを実感。
表題作「魔犬」
魔犬と言えば「バスカビルの―」のイメージが思い浮かびますが、あながち遠くは無いかも。
開けてはいけない魔の扉を開き、それが故に生ずる恐怖におびえる若者たち。
オーソドックスなホラー作品として秀逸。
そして「神殿」と「名もなき都」。どちらも「空間」がキーなのですが、怖さとともに神秘性を感じます。
「神殿」
海の底へ底へと沈んでいく潜水艦。その先に待つ絶望。
光の届かない静寂な空間で、正気と狂気の狭間へと迷いこんでいく人間の姿が恐くもあり、また美しくも。
「名もなき都」
描かれるのは「穴」から吹く風と邂逅した男の恐怖。
舞台は遠いアラビアの廃都ですが、実はちょっと田舎の山奥なんかに行くと、同様の体験をしそう。
読み終わったあとにそんなことを考えるとゾクリと来ます。
まとめ
作者の田辺剛さん、あとがきでラブクラフトが創造した神々の使徒になったつもりでこの漫画を描いた、と書かれています。
何かに衝き動かさたような、確かにそんな言葉がしっくりくる、迫力のある恐怖短編集でした。
田辺氏が描くラブクラフトの世界は「魔犬」以外にも刊行されているので、また機会があればその世界観に浸りたい。
できれば夜中に一人で。
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