「この世ならざるもの」が視えてしまう青年は、除霊のたびにエクスタシーを感じて…?ヤマシタトモコさん描くオカルト・ホラー漫画、「さんかく窓の外側は夜」を読みました。
ヤマシタさんは「BUTTER!!!」のような一般向けの漫画以外に、BL系の漫画も多数手がけられています。この「さんかく窓の外側は夜」にもBL系のネタが織り込まれていますが、そんなに濃い目ではありません。
私はBLジャンルはそこまで得意ではありませんが、本作は楽しく読めました。BLが苦手な方にもおすすめです。
「さんかく窓の外側は夜」レビュー
あらすじ
書店員・三角(みかど)は、死人が視えてしまう体質。それゆえ、幼い頃から恐怖の数々を体験してきた。
その体質を見抜いたのは、除霊師・冷川(ひやかわ)。書店より霊退治の依頼を受けた彼は、除霊のために三角の体を通して、いきなり「霊をつかんでぶん投げる」。
自身の体を突き抜けるその除霊方法に、不覚にもエクスタシーを感じてしまう三角。事件をきっかけに、冷川にスカウトされる。
「店長さん、三角くんを私にください!!」
冷川の勢いに、成り行きで除霊のアシスタントをすることになる三角。恐ろしい目にあいながらも、嫌よ嫌よも好きのうち?おっかなびっくり、本格的に除霊に関わっていくことに。
そんな中、冷川と懇意の刑事・半澤の依頼による案件で、呪術師による「呪い」に遭遇する三角たち。呪いに関連しているのは「非浦英莉可(ひうらえりか)」という女性なのだが、今までとは何やら雰囲気が違い…?
軽妙なノリが楽しいホラー漫画
…という出だしのオカルト・ホラー漫画「さんかく窓の外側は夜」。いろんな意味でおっかなびっくり読みましたが、感想は…
めっちゃ面白い!そして怖い!
BL要素の濃さが心配だったのですが、想像していたほど直接的な表現はありませんでした。どちらかというと、三角と冷川のユーモラスなやり取りの「ネタ」としての扱い。
ヤマシタトモコさんの漫画は、キャラクターの表情や会話に大きな魅力があります。本作でも彼らの掛け合いが、実にユニーク。笑いをさそいます。
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落差の激しい恐怖シーンが怖い
しかしそのノリに油断していると、ふいにあらわれるショッキングなシーンで、大ダメージ必至。
作中の随所で描かれる、「三角の視ている世界」。死者やそれ以外の「何か」の、見た目がありえない程ねじれていたり、顔の中央に黒い穴が開いていたり。その表現が、怖すぎる。
切った貼ったという、ホラー漫画定番の直接的なグロテスクさではなく、人に不安感を与えるそれらのイメージ。淡々と進む、ややもすると笑いのこぼれる話の中で、気を抜いているとふっと描かれる恐怖の、予想外のショックを受けます。
ヤマシタトモコさんの恐怖表現、ものすごく臨場感があるんですよね。読んでいて鳥肌が立つ、心臓に悪いぐらいの怖さ。
深みを見せる物語
1巻中盤では、単なる心霊現象にとどまらない恐ろしい事件に遭遇する、三角と冷川。そこに関係しているのは、呪術師・非浦英莉可という存在。3巻の表紙に描かれている女性です。
物語が進むにつれ、徐々に接近していく三角たちと非浦。彼女の背後に存在する怪しげな人物。冷川と刑事・半澤のつながり。そして三角自身にも出生の秘密が…?
巻を重ねるごとに深みを見せ、いや、読者を深みに引きずり込んでいく「さんかく窓の外側は夜」。恐怖もその手をゆるめることなく、凄みを増していきます。
まとめ
というわけで漫画「さんかく窓の外側は夜」。バツグンのおもしろさ、そして怖さを持つオカルト・ホラーでした。
怖い漫画は好きだけどBLはちょっと苦手、という方も、コメディ部分と恐怖描写のバランスが絶妙で楽しめること請け合い。読むときっと満足する内容だと思います。ぜひ恐怖の世界を楽しんでください。
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