繰り返しのようにも感じる、少女の平穏な毎日。それに変化をもたらしたのは、一人の冒険者。
しかしその行動は何だか奇妙で―?
左藤真通さんの漫画『この世界は不完全すぎる』。正統派のファンタジー…と思わせる出だしから意外な展開、そして緊迫感あふれる冒険が描かれていきます。
連載は講談社のWebメディア「コミックDAYS」。2024年12月現在、コミックス1~13巻が刊行中。以下、『この世界は不完全すぎる』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『この世界は不完全すぎる』あらすじ
大陸の辺境に位置する小さな小さな村に生きる、少女ニコラ。退屈な毎日を過ごしていたが、突如村を襲った巨大なドラゴンにより、生死の際に。
それを救ったのは、謎の冒険者・ハガ。「光る石版」で奇妙な魔法を使う彼に、ニコラは興味を持つように。
しかし再びドラゴンが村を急襲!村人たちを避難させたハガは、「ドラゴンにひたすら矢を射っては爆薬の入ったタルを投げつける」という奇妙な攻撃を繰り返す。
やがて地道な攻撃により何とかドラゴンを撃退、村は救われた!
が、唐突に体が燃え上がり死んでいくニコラたち。
それを前に「どんな条件でも村が全滅するかを確かめるのが仕事なんです…」と泣き崩れるハガ。その身の上には何やら秘密が…?
『この世界は不完全すぎる』のココが面白い!
異常をきたしたVRゲームの世界
ニコラが毎日に感じていた「繰り返し感」、ハガの使う光る石版、そしてモンスターへのパターン化した攻撃…。
実はこれらは全て、「完全体感型VRゲーム キングス・シーカー・オンライン」内の出来事。
ハガはゲーム会社のデバッガーであり、ニコラはゲーム世界のNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)であった、というのが奇妙な世界の真相(石版はバグ報告用のアイテム)。
恐ろしいのは、ハガはVRゲーム世界から1年間ログアウト出来ない状態にあること(リアルの肉体はカプセル状のコントローラーの中)。
その原因は全くの謎なのですが、他にも多数のデバッガーがゲーム世界に閉じ込められているようで…?
NPCとデバッグの旅へ
ドラゴン襲来イベント後ハガは、燃え尽きたのに「何故か」復活したニコラと共に旅へ。
ゲーム世界からの「脱出のカギ」がデバッグにあると信じて、地道なゲームチェックを続けます。
が、その様子が何ともヘンテコ。街へ着くとスキマ=バグが無いかを探すために、「建物の壁に体全体を擦りつけながらひたすら移動」を繰り返す。
見た目完全な中世風ファンタジー世界とアンマッチな行動が、非常にシュール(笑)。
漫画内におけるゲームのデバッグシーン、プレイヤーがゲームを操作する「絵」で表現されることは多々あります。
しかし、キャラクターがリアルにそれをやっちゃう、というのが『この世界は不完全すぎる』ならではの面白さ。思わず笑いがこみ上げてきます。
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敵は「同業者」?
しかしハガのように、真面目にデバッグを続けるものはごく一部。
中には現実への帰還を諦めて、ゲーム内で好き勝手に生きることを選択したデバッガー(同業者)たちも存在。
その中でも特に悪質なのが、「デバッグモード(いわゆる無敵状態)」を悪用するデバッガーたち。
新たなバグを引き起こす可能性もあるため、通常は使われない強力なモード。
それをフルに利用して、意に沿わないハガたちを攻撃してきます。
やむなく彼らと刃を交えることになるハガですが、その戦い方もまた「デバッガーらしい」もの。
コツコツとバグチェックをしてきた「ハガにしか出来ない戦闘方法」が、意外性があって面白い!
深まる「世界の謎」
そんな感じでデバッグをしながら、現実世界への脱出の手がかりを探すハガたち。
冒険の途中で「新たな出会い」もあり、物語はより複雑な様相を見せていきます。
その中で不穏な動きを見せるのが、NPCであるニコラ。
シーカーであるハガの力になりたいと旅に同道する彼女ですが、不可思議な復活を遂げたその身にはやはり「謎」があり、それがハガを新たな道へと導いて…?
巻を重ねてより謎が深まり、混迷を極めていく『この世界は不完全すぎる』の世界。
「ゲームの最奥部に迫っていく」感覚で、不思議なバーチャル感のある漫画です。
感想・レビューまとめ
以上、左藤真通さんの漫画『この世界は不完全すぎる』感想・レビューでした。
見た目はほぼほぼファンタジーなのですが、随所随所に「ゲームならではのバグ」表現を取り入れ、それが物語進行の重要なキーとなっているのが、素晴らしく面白い!
また物語の本質はリアルと密接にシンクロしているという、読者の頭がバグってしまうような不思議な感覚もユニーク。斬新過ぎるゲーム×ファンタジー漫画です。
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