ネットで炎上!これは弁護士に相談だ!しかし肝心の弁護士のモットーは「他人事(ひとごと)」で…?
漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』。ネット・SNSの炎上トラブル案件と、その裁判を請け負う弁護士を描く、リアルな法律ドラマです。
原作:左藤真通さん、漫画:富士屋カツヒトさんで、監修は清水陽平弁護士。白泉社の電子漫画雑誌『黒蜜』連載で、2023年3月現在コミックスが4巻まで刊行中。
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』感想・レビュー
概要
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』の主人公・保田理(やすだおさむ)は、いわゆる「ネット案件に強い弁護士」。
と言っても、彼の依頼内容に対するスタンスは「所詮は他人事(ひとごと)」。親身に相談に乗る、というスタイルとは縁遠いものですが、そこには彼なりの矜持があって…?
そんなユニークな保田弁護士が、パラリーガル(弁護士業務の補助をする職業)の加賀見灯(かがみあかり)とともに、ネット・SNSの炎上案件を本格的な法律知識でスパッと解決!(?)する様が描かれていきます。
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とある主婦ブロガーがSNSで炎上…?
『しょせん他人事ですから』1巻で描かれるのは、主婦ブロガーの炎上案件。
「え…ウソ…私のブログ…炎上してる…?!」
心当たりの無い誹謗中傷をネットに書かれ、弁護士・保田に相談。取るべき対応は「削除申請」か「情報開示請求」か。
だが最終的に賠償金を取れるとしても、「(対応は)オススメはしない」と言う保田。その理由は「金がかかり、時間がかかり、精神が削られる」、つまり「しんどい」から。
ネットのトラブルに弁護士を入れても、手間や費用の割にはリターンが少なく、良くてトントンの世界。最終的には「気持ちの問題」に行きつくことに。泣き寝入りが多いのも頷けます。
「スカッとする」系の話では無いが…
しかし!主婦ブロガーは熟慮の末、自分を誹謗中傷する人間の顔を拝みたい!と保田に依頼。かくして情報開示請求が本格的に動き出すことに。
そして2ヶ月後(!)、プロバイダからの発信者情報開示請求の照会を受けたのは、意外な人物で…?
…といった感じで展開されていく炎上案件。もちろんフィクションですが、被害者、そして加害者の視点からも描かれるその内容。実際の手続きの煩雑さや時間のかかり方も織り込まれ、とてもリアル。
そしてその結末は、わかってはいたけど「誰も得をしないもの」で、決してスカッとするわけではありません。
ですが誰しもが「被害者・加害者、どちらの立場にも成りうる可能性がある」と思わせる社会派のストーリーは、現実的かつ示唆に富んでいて、読み応えがあります。
「他人事」なスタンスが大事?
そんな『しょせん他人事ですから』。弁護士が主人公なのに、「他人事」というワードに気になる響きがあります。
実はこの言葉は、監修の弁護士・清水陽平氏が大切にしている言葉だそう。(1巻末・作品解説より)
依頼者の感情に同化するのではなく、あくまでも第三者として一歩引いた視点から紛争の解決を目指すため、あえて取る「他人事」のスタンス。劇中にも所々その姿勢が登場し、納得感があります。
一方、「しょせん他人事ですから」という言葉は、作中の「加害者」にも当てはまるもの。2巻で保田弁護士は、同僚・加賀見に対して語ります。
「SNSにどっぷり浸かると”モノ申したくなる”でしょ?」
「そこから書き込むまであと一歩だよ?」
「ネットの向こう」に対してその「一歩」を踏み出してしまった人々も、送信ボタンを押す前に「しょせん他人事」と踏みとどまっていれば…?
どこに境界線を引くかはなかなか難しいところもありますが、ネットで簡単に繋がれる世界でその言葉を心の片隅に置いておくと、痛い目を見ずに済む…のかもしれません。
まとめ:リアリティのあるストーリーが面白い!
以上、漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』の感想・レビューでした。
非常にリアリティのあるストーリー。本作を心置きなく楽しめるか、もしくは冷や汗を流すのかは、ネットとの付き合い方によって変わってくるでしょう(笑)。
なお2~3巻で描かれる「双子アイドルの炎上案件」がとても面白い内容。保田・加賀見両名の活躍はもちろん、被害者・加害者の心理、さらに「外周」へと広がりを見せていく展開。その結末は果たして…?
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