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漫画『涙雨とセレナーデ』レビュー:明治時代にタイムスリップした女子高生のラブロマンス

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突然、明治40年にタイムスリップした女子高生。そこで出会ったのは自分そっくりな女性と、憂いの表情を浮かべる青年―。

河内遙さんの『涙雨とセレナーデ』。しっとり恋愛にSF要素をミックスした、タイムスリップ・ロマンス。意外な冒険もあり、見どころ満載の長編ストーリー漫画です。

連載は講談社の漫画雑誌「Kiss」で、単行本1~12巻が刊行中(2024年6月現在)。以下、『涙雨とセレナーデ』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。

『涙雨とセレナーデ』あらすじ

ごく普通の高校生・陽菜(ひな)は音楽の授業中、不思議な感覚に襲われ気を失ってしまう。

目覚めると、そこは古めかしい屋敷の庭。傍らには彼女を「雛子様」と呼ぶ青年・本郷孝章(ほんごう・たかあき)が。

成り行きで馬車に乗せられた陽菜。目にする町並みは、現代とは違う古めかしいもの。

さらに着いた屋敷では自分そっくりな女性・雛子に出会い、会話の中から現在が明治40年であることを知る

どうやら過去にタイムスリップしてしまった陽菜。現代に帰りたくても方法がわからない…が、とりあえず匿ってくれた雛子との入れ替わりを楽しんだり。

しかしそのうち、ひいおばあちゃんの形見のネックレスを失くしたことに気付き、雛子の協力を得て本郷邸にネックレスを探しに行くことに。

だが孝明が雛子の婚約者であったことから、話がややこしい方向へ…?

『涙雨とセレナーデ』レビュー

タイムスリップが絡んだ複雑な人間関係

『関根くんの恋』や『夏雪ランデブー』で、ユーモアを交えながらも切々とした恋愛を描いてきた作者・河内遙さん。

本作では明治時代を舞台にSF要素も取り入れて、複雑な恋愛模様を絡めたタイムスリップ・ロマンスを綴っていきます。

明治40年、つまり今から「約100年とちょっと前」に来てしまった陽菜。その鍵となるのは、ひいおばあちゃんのネックレス。

諸々の条件が重なると不思議な力が発動するようですが、陽菜はそれには気づいていない、という状況。

その陽菜が偶然からたどりついた先にいた、そっくりな容姿を持つ雛子。

彼女は陽菜のひいおばあちゃん?かどうかは不明なのですが、そこにはなかなか複雑な人間関係が

許嫁同士の孝章と雛子。だが雛子はもともとは、孝章の亡き義兄の許嫁。そして孝章は雛子の事を慕っているのに、彼女が好きなのは知人の書生・武虎。

そこに現れたのが、雛子と瓜二つの陽菜。陽菜は「雛子として」孝章と接しますが、陽菜を雛子と信じる孝章に想いを告げられたり、また陽菜自身も孝章に惹かれていったり。

そして陽菜にはなぜか、幼い頃に孝章と会った記憶が…?

行き違いが産み出す恋模様

陽菜がタイムスリップしたことにより人間関係が複雑になり、そこから生じるコミュニケーションの行き違いが、『涙雨とセレナーデ』の面白み。

陽菜を雛子として見る孝章と、彼の事が気になるけど、本当はこの時代の人間ではない陽菜。

しかし自分に向けられる孝章の眼差しに、次第に募る陽菜の気持ち。読んでいてやきもきします(笑)。

そして複雑な人間関係の中で顕になっていく、それぞれがアイデンティティーの確立に悩む様

雛子のふりをするが、現代における陽菜としての人間関係を忘れたくない陽菜。

心に想う人がいながらも、それを押し殺す雛子。

自分が死んだ義兄のスペアなのではないか?と悩む孝章。

河内遙さんの作品ではキャラクターが内省する様子がよく見られますが、『涙雨とセレナーデ』でもしっかりと描かれる心情。

そこから生まれる深みが、物語の大きな魅力となっています。

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3巻以降、急展開が…?

そんなタイムスリップ要素を絡めたラブ・ロマンス。しっとりと物語が展開…

すると思いきや、巻が進むにつれネックレスを巡るめまぐるしい動きが発生。

失われたネックレスを探す陽菜と、それに協力する孝章。しかしそれは人から人へと渡り歩き、彼女たちから離れてゆく。

そして2巻では陽菜と孝章に絡んでくる、怪しげな曲芸一座が登場。あわや生命の危機が…!

さらに3巻では「ネックレスの秘密を知る人物」が登場。それはタイムスリップにも関係が…?

…というサスペンス感あふれるビックリ展開へ。ネタバレは避けますが、まさか!の連続で、俄然おもしろくなってきます。

もちろん恋愛要素はそのままに、しかし多方面でドキドキする物語。さて、陽菜と孝章の運命やいかに…?

レビューまとめ

以上、河内遙さんの漫画『涙雨とセレナーデ』レビューでした。

タイムスリップを絡めた、しっとりとした切ない恋愛ストーリー…からの!スリリングな展開は、予想外の面白さを味あわせてくれます。

9巻末のあとがきによると、実は3~4巻頃で打ち切りの危機があったそう。しかしそれを乗り越えて、作者最長となる巻数を更新中。

明治と現代をつなぐラブロマンスの結末が気になる!作品です。

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