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漫画『リクエストをよろしく』感想―ラジオ愛の詰まった業界お仕事物語

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テレビに出るだけが芸人の仕事じゃない!放送作家となった元相方に誘われて、ラジオの世界に足を踏み入れた売れない芸人・ソータ。果たしてラジオの世界で一旗揚げることができるのか?

河内遙さんの漫画「リクエストをよろしく」では、芸人・ソータやラジオ番組に携わる若者たちを中心に、ラジオ業界のお仕事が丁寧に描かれます。連載は祥伝社フィール・ヤング誌で、2020年刊行の第5巻で完結しました。

ラジオなんて学生の頃以来、聴いてないなぁ…なんて方にこそ読んで欲しい、ギョーカイお仕事漫画です。

『リクエストをよろしく』レビュー

あらすじ

お笑いコンビ「コールタール」を解散し、現在はピン芸人として活動する芸人・朝日屋颯太(あさひや・そうた)。ネタは決しておもしろく無いけれど、底抜けの明るさとポジティブさが売り。

しかし悲しいかな、お笑いの仕事よりもバイトの方が多い颯太。そこに放送作家としての道を選んだ元相方・水無月があらわれる。水無月が颯太に引き合わせたのは、超絶美人な雪室ハジメ。二人のファンだったという雪室は、颯太に尋ねる。

「ラジオってご興味ありませんか?」

ラジオディレクターだという雪室と水無月に誘われて、ラジオ番組に出演することになった颯太。しかし初めての仕事はぶっつけ生本番の街頭インタビューで…?

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売れない芸人がラジオで活躍?

…という『リクエストをよろしく』のスタート。以降、颯太・水無月・雪室の三人を軸に、ラジオ業界のお仕事ぶりが描かれます

元相方の導きで、ラジオに関わることになった颯太。しかしおもしろくない芸人がいきなりメインパーソナリティーになれるはずもなく。まず颯太に割り当てられたのは、中継レポーターの代役

ラジオをあまり聞かない人にはピンとこないかもしれませんが、ラジオでは番組内で時折、レポーターがスタジオ外で街頭インタビューをしたり、DJと掛け合いをしたりすることがあります。

颯太が任されたのもソレなんですが、ラジオのことなど右も左もわからない。おまけに指示は「たのしくしろ」だけ(笑)。最初は戸惑うも、しかし水無月に発破をかけられて、颯太は意外な才能を発揮…?

丁寧に描かれるラジオ業界

ド素人が初挑戦の仕事を上手くこなせるわけがない。しかしそこは漫画の世界、颯太はトントン拍子にラジオの世界で活躍…「しない」のが、この『リクエストをよろしく』の面白いところ。

颯太の人を惹き付ける独特な魅力は、様々な形で徐々に認められていくのですが、そこには紆余曲折が。それを引き出していくのが、彼を業界に引き入れた水無月と雪室。

理由あって解散した漫才コンビだが、颯太の良さを誰よりも理解している水無月。もともと彼らのファンで、水無月を放送作家の道に誘った雪室。何とかして颯太を活かした良い番組を作りたい、と尽力する彼ら。

そんな二人の目に見えぬ信頼を受ける颯太を中心に、ラジオ番組が形作られていく丁寧な描写が、実に面白い。「ラジオに救われて暮らしています。」(2巻あとがきより)という作者・河内遙さんのラジオ愛により、リアルなラジオの世界が漫画内で表現されています。

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意外に恋愛要素が少ないが…

河内遙さんと言えば『関根くんの恋』『夏雪ランデブー』のような代表作や、本ブログでもご紹介している『涙雨とセレナーデ』のように、ラブロマンスに定評のある漫画家さん。

ですが『リクエストをよろしく』では、恋愛要素が意外に少ない!男二人に女一人というメインキャラの構成にも関わらず、浮いた話はほとんど描かれません。

3巻で大きくフィーチャーされるアイドル・星野チーコの話には、少し恋愛も絡みます。が、それもメインではない(のちのちの伏線ではあるのですが)。

フィール・ヤングという女性をメインにしたコミック誌に掲載されているにも関わらず、この大胆な話の構成。が、それもまた『リクエストをよろしく』ならでは。ラジオ好きな河内遙さんの、「ラジオ業界を描く!」という熱意が伝わってきます。

颯太はラジオの世界で輝けるか?

そんな『リクエストをよろしく』も、全5巻で完結。終盤では、ピンじゃないけどレギュラー番組を任されるようになった颯太。しかしラジオパーソナリティが板に付いてきた彼に、ちょっとピンチな出来事が

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、その中で描かれるラジオ番組放送の様子、これがたいへん素晴らしい!パーソナリティのトークと、リスナーからの反応、そしてそれを支える裏方たちが一体となって、ラジオ番組という「生き物」を作り上げていく

登場人物たちのセリフを読んで、絵を眺めて、つまり漫画を読んでいるんだけど、同時になんだかラジオ番組を聞いているかのような。テンポの良いコマ運びと、5巻までに積み上げてきたドラマ・人間関係が、終盤で一気に花開いた感じ。

そして芸人・ソータはラジオの世界で一旗揚げることができたのか。元相方・水無月との関係はどうなったのか。…というところは、ぜひ本編でお楽しみを。

『リクエストをよろしく』まとめ

以上、河内遙さんの漫画『リクエストをよろしく』のレビューでした。完結して振り返ると、ラジオ愛あふれるリアルなお仕事漫画でした。

ひょっとすると、もう少し尺があれば恋愛方面とかにも話が触れたのかなー、なんて思うところもありますが、個人的には全5巻で手堅くまとめて、良い読後感を味あわせてくれたな、という印象です。

そして読むとラジオを聴きたくなると同時に、その裏側にちょっと思いを馳せてみたくなる、稀有な漫画。読んだあとにラジオ聴いてみると、声の向こう・電波の向こうにちょっと奥行きが出てくるような、そんな不思議な気持ちになるのでは。

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