杉本亜未氏のスイーツ漫画「アマイタマシイ」全4巻を読みました。正式なタイトルは「アマイタマシイ~懐かし横丁洋菓子伝説~」です。
本作は2012年~2013年にかけて、「グランドジャンプPREMIUM」にて連載された作品。単行本1・2巻発売後に続巻の刊行がストップしていたものが、2016年3月2日に電子書籍版として全4巻一気に発売となったそうです(コミックナタリー記事より)。
「アマイタマシイ」レビュー
あらすじ
さびれた商店街の復興をかけて、パティスリーのオーナーを目指す、ちょっと天然な商工会職員・柴田羽衣(しばたうい)と、イケメン東大生・川島賀句(かわしまがく)。
スイーツ好きな二人は、伝説のシェフ、かつ「無冠の帝王」である熊谷周作(くまがやしゅうさく)に、シェフ就任を依頼する。しかし熊谷は自他ともに認める「天才」でありながら、性格に難ある男だった。
偏屈で武闘派(?)な彼が二人につきつけた条件は、「辞めたい時にいつでも辞める!」。果たして柴田と川島、そして熊谷を加えたパティスリー「プチ セヴェイユ」は、商店街に再び活気を呼び込めるのか?
強烈な熊谷のキャラクター
面白かった!スイーツ漫画ということで適度なウンチクも交えつつ、ストーリー全体に勢いがあります。何より、パティスリーのシェフ・熊谷周作の魅力が半端ない。
ケーキ作りに一切の妥協をせず、己にも他人にも厳しい彼のバイタリティ。加えて元職場に「命を狙われている」という被害妄想、自分の才能を妬んでの襲撃に備えて太極拳を修行してきた、などキャラクターがユニーク過ぎる。
40過ぎてるオッサン主人公に、こんなに魅力を感じたのは初めてだ(笑)。無茶苦茶な男なんだけど、その行き過ぎた熱さ(≒暑苦しさ)が、何だかクセになってくるから不思議。
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心地よい商店街復興ストーリー
スイーツによる町興しを胸に、政治家を目指す柴田。スイーツのためならば東大退学も辞さない川島。熊谷の脇を固めるキャラクターとともに、「プチ セヴェイユ」がシャッター通りと化した商店街に、次第に活気を与えてゆく様も見ていて心地よい。
物語全編に常に「前に進んでいる」感があり、読者にページをめくる手を止めさせません。同じく杉本亜未さんの漫画「ファンタジウム」と較べるとややコメディーよりで、ついついクスリとしてしまう笑いもそこかしこにあり、楽しい漫画です。
熊谷のセリフが刺さる
そしてこれは杉本亜未作品に共通の魅力だと思うのですが、さらっと人生に突き刺さる言葉が、随所随所でぶっこまれてくる。
まあ漫画家とパティシェは似たところがありますね
普通の衣食住のように人生で決して必要ではない物を創っているのに
見ず知らずの人たちの―
かけがえのない何かになるため全力を尽くして戦う
(1巻P76より)
常にイメージを実現して伝える方法を考えろ!!
単語は一つ一つ意味をなさなくとも繋げれば文になるように…
自分の中のあらゆることを創造力に使え!!
(1巻P186より)
何かを始めるのに遅いという事はない
あきらめていた事ができるとそう信じたくなる
ただ…俺の時間は…限られている…
(1巻P192より)
引用はいずれも熊谷の言葉。これって、いろいろな職業や人生に当てはまることもあるんじゃないでしょうか。スイーツに命をかける彼のキャラクターがあってこその表現。
かるーい気持ちで漫画を楽しんでいる時に出会う、重みのあるセリフ、ぶっ刺さります。「ファンタジウム」にもハッとさせられる言葉が多々ありますが、こういう表現に出会えるから、杉本亜未さんの作品、いつまでも心に残ります。
まとめ
以上、「アマイタマシイ~懐かし横丁洋菓子伝説~」の感想・レビューでした。全4巻、気軽に読める巻数でオススメの漫画です。
ちなみにこちらは1巻。スイーツ女子・柴田羽衣がデカデカと描かれていますが、彼女は主人公、とは少し違うかな…。
2巻の表紙はイケメン東大生の川島くん。こちらも重要人物ではありますが主人公ではない。
3巻にしてようやくシェフ・熊谷登場!主役が3巻で初表紙ってどうなの(笑)。
「アマイタマシイ」は最終4巻の他にウェブ・マガジン:Love Jossie Vol.6に収録されている「Love Jossie アマイタマシイ Rising」が発売されています。本編が面白かったらこちらもどうぞ。
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追記
「アマイタマシイ」はナンバーナインより「アマイタマシイ ~懐かし横丁洋菓子伝説~ 【完全版】」全3巻も刊行されています。
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