「ジョニー・ライデン」と言えば、思い出すのは懐かしのプラモデル「ジョニー・ライデン専用ザク(またはゲルググ)」。
初代機動戦士ガンダムからZガンダムが始まるまでに、数多くのMSV(モビルスーツバリエーション)がプラモデル企画で展開されました。
ジョニー・ライデンはその中で設定された、ジオンのエース・パイロットの一人です。
そのジョニー・ライデンと思われる男を主人公としたガンダム漫画が、Ark Performanceさんの「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」です。
MSV当時は「ジョニー・ライデンって誰?」って思ってましたが、数十年の時を経てその名を冠した漫画が登場。実に感慨深い。
そんな「ジョニー・ライデンの帰還」ですが、リアルタイムでMSV時代を過ごした人は手に取らない、手に取りにくい漫画ではないかな?と少し懸念。
本記事ではそんな「ジョニー・ライデンの帰還」のおもしろさを、ガンダム~Z・ZZ~逆シャア世代の人に向けてご紹介します。
「ジョニー・ライデンの帰還」の簡単なまとめ
時間の無い人のための簡易まとめ。
「ジョニー・ライデンの帰還」が面白いポイントとしては、
- MSVがいっぱい出るよ
- キャラクターが渋くてカッコいいよ
- サイド・ストーリーらしい謎要素がたくさんあるよ
- もちろん戦闘シーンは大迫力
- ガンダムファンおなじみのキャラクターも出演
- MS解説が通好みで面白い
- ガンダム世界を繋ぐ役割があるよ
というところ。
宇宙世紀世代の要素をふんだんに散りばめ、MSもキャラクターも魅力的。そしてストーリーも面白い!という、クオリティの高いガンダム漫画です。
「MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」概要
「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」は、KADOKAWAの月刊誌「ガンダムエース」に長期連載されている漫画。作者は漫画家ユニットArk Performanceさん。
世界観は、同誌掲載のMSV(モビルスーツバリエーション)企画「MSV-R」(現在は終了)の、公式続編という位置づけ。
物語の舞台は宇宙世紀0090年。ZZ(UC0088~89)と逆シャア(UC0093)の間です。
主人公は、地球連邦軍FSS(「Federation Survey Service」の略。MSなど機動兵器の調査を行う組織)所属のレッド・ウェイラインと、ジオン出身の技術者であるリミア・グリンウッド。
業務中のレッドがMSのシミュレーション中に、謎の青いゲルググから「帰還おめでとう、ジョニー・ライデン」のメッセージを受け取る、というのが物語の始まり。
その出来事を発端に、一年戦争の伝説的なジオン軍パイロット「ジョニー・ライデン」の謎を追うレッド達。
調査の過程で、ジョニーが所属していたジオン軍のエース部隊「キマイラ隊」、そしてキマイラが守っていたと言われるザビ家の財宝「ミナレット」と、それに隠された「ザビ家の復讐装置」の存在を知ります。
やがてミナレットを巡り、連邦軍と民間軍事会社「テミス」が衝突。シャア率いる新生ネオ・ジオンも情報を嗅ぎ付け参戦。
果たしてキマイラの盟約に守られた「ザビ家の復讐装置」の正体とは?そしてレッドはジョニー・ライデンなのか?
…というのが主なストーリー。
なおタイトルは「ジョニー・ライデンの帰還」ですが、レッド=ジョニー・ライデンかどうか、というのは未確定。真実はいまだ謎です。
7つのおすすめポイント
ここからは本題、「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」が面白い、7つのポイントをご紹介。
1. MSVなど旧機体の活躍
本作で活躍する機体の多くは、MSV系列のもの。
- 高機動型ゲルググ、ジム・キャノンなどのMSV群
- ラムズゴック、ドム・マーメイドなどのMSV-R群
- アクト・ザク、ヘビーガンダムなどのMS-X群
- その他アッガイ、ハイゴッグ、ジム・クゥエルなど
設定としては後付のものもありますが、ガンダムの歴史の中では古い系統の機体がメインで活躍します。
新登場の強力なMS・MAが活躍するのも、新作ガンダムの魅力。ですが、「(設定上の存在だった)あのMSが動いている!」というのも、旧ガンダムファンにはたまらないもの。
むやみやたらと新設定の機体を出さないところが、オールドファンにも親和性が高いポイントです。
なお外見はジオン製の旧式MSでも、コクピットは全天周モニターだったり、操縦桿がアームレイカーだったりして、近代化改修されているところにニヤリ。
2. キャラクターが渋カッコいい
少年・少女がメインの新作ガンダムについていけない…。
そんな方も安心!本作に登場するキャラクターの多くは、一年戦争時代から軍籍だった人物ばかり。ベテランパイロットならではの渋みを持ちます。
主人公のレッドも見た目は若いですが、UC0056年生まれなので、物語上は34歳の設定。ジョニー・ライデンをとりまく、キマイラ隊出身者もしかり。
キマイラのエースパイロットで、現在は民間軍事会社テミスの社長であるジャコビアス・ノードは、その代表格。
ロン毛でチョビヒゲのナイスなおっさん。スナイパー仕様のゲルググ・キャノンという、通好みの機体に搭乗します。
ジョニー・ライデンを名乗る少女、「イングリッド0(通称ジョニ子)」のような若いキャラクターも登場しますが、基本的にはベテランパイロット・軍人が物語の中心。大人のガンダム!を楽しめます。
3. 謎要素
TVシリーズのガンダムと言えば、おおむね軍VS軍の戦いが描かれます。
しかし、それにとらわれないのが、ガンダム・サイド・ストーリーのいいところ。
漫画「ジョニー・ライデンの帰還」では
- レッド・ウェイラインはジョニー・ライデンなのか?
- エースのみで構成されたキマイラ隊の創設目的は?
- ジョニー・ライデンを名乗る少女の正体は?
- ザビ家の財宝「ミナレット」とは何か?
- 「ザビ家の復讐装置」とは?
など、一年戦争を発端にした謎要素が、物語のそこかしこに散りばめられています。
ドンパチとはまた異なる、長い歴史を持つガンダムの世界だからこそ、作り上げられるおもしろさがあります。
4. 迫力の戦闘シーン
もちろん戦闘シーンも手抜きなし。クオリティの高い、スピード感あふれるバトルが物語のそこかしこで展開。映像作品に劣らない迫力を見せつけてくれます。
印象的なのは、第8巻冒頭の戦闘シーン。
ジャブロー上空を飛行する、連邦軍ヴァースキ大尉のギャプラン。
全天周モニターで周囲を睥睨しつつ、僚機に行動を指示。地上を移動するジムと対象的に、バーニアをふかして一気に移動…
といったアニメさながらの流れるような描写は、「Zガンダム」あたりの戦闘シーンを彷彿とさせます。
また10巻冒頭、レッドの赤ゲルググ VS イングリッド0のヘビーガンダムの激突も、見逃せないバトル。
2機は、Zや逆シャアでファンがかつて見た、ニュータイプの戦いで表現される「あの光」に包まれます。
「人の意思を伝えるのがサイコミュでしょ?」
「そして人の想いを集め強めるのがバイオセンサーというシステムなら!」
サイコミュやバイオセンサーといった、宇宙世紀ガンダムならではのワードが詰まったイングリッド0のセリフ。ガンダムファンなら心を揺さぶられるものが。「ジョニー・ライデンの帰還」屈指の名シーン。
5. マニアックなキャラクターも登場
長い歴史の中で登場した「あの」キャラクターも、そこかしこで物語を彩る活躍を見せます。
一番の大物は、連邦軍高官であるゴップでしょうか。
…知らない?
初代ガンダムファンの方には、「ジャブロー司令部で、ブライトとミライに接見した人物」と言えばピン!と来るでしょうか。そう、あの時の連邦の偉いさん。
ティターンズ紛争を経て、なお力を持つゴップ。本作でも重要なポジションを担います。
他にもZZで登場したアナハイムの技術者ミリィ・チルダ―や、逆シャア他に登場のネオ・ジオン文官ホルスト・ハーネスなどが登場。ガンダム好きならば、ニヤリと来る配役。
そして忘れちゃならん有名パイロットが、連邦軍特殊部隊ナイト・イェーガー隊の中隊長である、ヴァースキ大尉。
もう表紙絵でネタバレしてますが、そう、元ティターンズの「野獣」、ヤザン・ゲーブル大尉ですね。
名前を変えて連邦軍に復帰したヤザンさん。ティターンズ時代は「野獣」全開でしたが、本作では実に有能な指揮官ぶりを発揮しています。
パイロットとしての腕にもますます磨きがかかり、ユーマ・ライトニング、ジャコビアス・ノードといった、元キマイラのジオン軍エース・パイロットとも互角以上の戦いを繰り広げるヤザンさん。渋い!
さらに戦闘以外にも、新たな魅力を発揮するヤザン先生。イングリッド0とその養父であるゴップとの会見で、野獣らしからぬ大人な立ち居振る舞いを見せてくれます。
その会見の別れ際、ゴップに「『パプテマス・シロッコ』はどんな男だったかね?」と聞かれるヤザン。その答えは…?
これは本編を見てのお楽しみ。Zファン必見のシーンです。
6. 通好みなMS解説
この「ジョニー・ライデンの帰還」、MSV(MSV-R)との連動企画なだけあって、随所にメカニックの解説が入ります。それが通好みで実に面白い。
- Gファイターは拡張性の高さから、新たなユニット開発が行われ、長期運用されている
- 高いステルス性と運動性を持つ、アッガイのポテンシャル
- ジオンが使用していた光学機器類は、ミノフスキー粒子下では連邦軍羨望の的であり、戦後の連邦製MSにモノアイテクノロジーが多く採用された
- 戦術的な有用性からの、可変MS・MA開発過程
- ジオン軍による水陸両用MS開発の拡大と、比して連邦製のそれが少なかった理由
といったメカニック解説が、「FSSの調査書」という形式で随所で紹介されます。
まあ後付けな部分もあるとは思うんですが、それでもなるほどと思わせる説得力。長い歴史を持つガンダムだからこそ描けるお楽しみです。
7. ミッシングリンクとしての役割
初代ガンダムからZまで約7年。ZZから逆シャアまで約5年。通して約13年少しのガンダム世界。
初代ガンダムでジオン公国は連邦軍に破れ、以降、数度の反乱を経て、UC0093年にシャアによる再度の反乱を試みます。
でも敗戦国が、そんなに何度も反乱を企てられるものなのか?というのは素朴な疑問。
しかしそれも「ジョニー・ライデンの帰還」で、実にそれらしい説明が。
シャアがティターンズ紛争時にクワトロになったように、元ジオンの軍人たちは、どのように地下、または連邦に潜ったか?
そして一年戦争後、どのようにジオンは復興を遂げたか?
など、Z・ZZの時代を経て、逆襲のシャアにつながるキーワードが、多数ちりばめられています。
宇宙世紀ガンダムの各時代をつなぐミッシングリンクとしての役割も、その物語で描かれるのが興味深いところ。「ジョニー・ライデンの帰還」が、ファンの中にあるガンダム世界をより深めてくれるでしょう。
まとめ
というわけで、宇宙世紀ガンダムが好きな方におすすめなガンダム漫画、「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」のご紹介、でした。
まだまだ語り尽くせないところもありますが、作画・ストーリーとも、ガンダム漫画としては屈指の出来。未見の方にぜひ手にとっていただきたい作品です。
そして最後に一言。ヤザン先生の活躍が読めるのは「機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」だけ!
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