ダーク・ファンタジー「ナラクノアドゥ」―最弱への道を進む最強の魔王

全ての魔王を倒せば人間になれる。しかし魔王をひとり倒すたびに、その力は削がれていく―。

そんな契約を天使とした「最強の魔王」を描くダーク・ファンタジー漫画が、「ナラクノアドゥ」です。

作者は山本晋さん。連載はファミ通コミッククリアで、単行本はファミ通クリアコミックスより現在4巻まで刊行中。

ナラクノアドゥ - コミッククリア
 混沌の闇に抗う主人公・アドゥが 光を求め、戦う――。『モンスターハンター閃光の狩人』の漫画を手がけた"山本晋"入魂の オリジナルファンタジー漫画、始動!

こちらから試し読みができます。

スポンサーリンク

「ナラクノアドゥ」レビュー

あらすじ

全十二階梯の魔王と闇より生まれた種族によって、その存在を脅かされていた人類。協力し戦うも、その圧倒的な力の前に滅亡の危機を迎える。

しかし何者かの手によって、最も強力な十二位と十一位の魔王が消滅。残った10人の魔王は姿を潜め、人類はその生命を永らえる。

二人の魔王を倒した「何者か」は英雄と呼ばれ、その力にあやかろうと、国々では戦闘力の高いものに「英雄官」という公職を与えるように。

そして16年後。再び第十位の魔王・モーテムの脅威にさらされる人類英雄官アドゥとその仲間たちが挑むが、モーテムに叶わず全滅の危機に。

そこで真の姿を見せたのはアドゥ。


[山本晋 著 KADOKAWA「ナラクノアドゥ」1巻より引用]

彼は「十二階梯全ての魔王を倒せば人間になれる」という契約を天使と交わした、十二階梯・第十二位の位、名も無き那落(ナラク)に座する最強の魔王だった。

モーテムを倒したアドゥだが、「魔王をひとり倒すたびに人間に近づく=弱くなる」という契約に従い、またその力が弱まる。

そして仲間を失ったアドゥは、新たな仲間を探す。人間になるために―。

物語のポイント

長くなりましたが、以上が異色のダーク・ファンタジー「ナラクノアドゥ」のプロローグ。

以降、アドゥの秘密を知った少女剣士ヨミ・英雄官ユングらと「契約」を交わし、魔王を全て倒して人間になるための戦いが繰り広げられます。

「ナラクノアドゥ」の流れを改めて簡単にまとめると、

  1. 12人の強い魔王がいて人類ピンチ
  2. その中の最強の魔王がアドゥ
  3. アドゥは人間になるために他の魔王を倒そうとする
  4. でも魔王を倒すたびに弱くなっていく
  5. なので強い人間の仲間が必要
  6. 秘密を知ったヨミ・ユングらと契約
  7. 以降、九位以下の魔王たちとの戦い

という感じです。

魔王を倒す魔王

ドラゴンクエストやファイナル・ファンタジーなどのRPGによって、すっかり一般化した「勇者VS魔王」のファンタジーもの。最近は1周も2周もまわって、「魔王が主人公」という話も増えてきました。

この「ナラクノアドゥ」も「最強の魔王」が主人公。ですが、その目的は魔王自身が人間になること。そして人間に近づけば近づくほど強力な力を失っていく、というユニークな設定を持ちます。

また、魔王であるが故に、人間の心がわからないアドゥ。通常は人間の姿で常に軽薄な笑みを浮かべていますが、それは笑顔が人に与える印象を学習・計算しているから。

仲間が死にゆく時にかけた「すまない」の言葉も、「すまないと思う気持ちがわからないのだ。だからすまない」といった感じ。仲間を失い新たな仲間を求めるのも、全て己のため。


[山本晋 著 KADOKAWA「ナラクノアドゥ」1巻より引用]

それはアドゥが魔物ゆえ。そんな人の心が理解できないアドゥも、魔王を倒すたびに、少しずつ人の心を得るかのような仕草も見せていきます。この変化がおもしろい。他に類を見ない、魅力的なダークヒーローです。

生々しい人間描写

アドゥを中心に、魔王を倒す旅をする勇者一行。それを取り巻くのは、決してキレイな人間関係だけではありません。絶望の世界を生きる人々の生々しい人間模様が描かれるのも、本作の特徴。

死を前に欲望を剥き出しにする者。多数を救済するために少数の犠牲を厭わない者。生き延びるために魔にへつらう者。人間の本質が随所に顕れます。

そんな人間たちを見つめるのは、今まさに人間にならんとするアドゥ。「人間らしさ」を観察・学習し、また人間に近づいていく魔王、という構図。他のファンタジー漫画ではなかなか見られない光景です。

少女剣士・ヨミの存在

人を人とも思わぬアドゥと協力関係を築くのが、少女剣士・ヨミ。剣士と言っても駆け出し、少女と言うよりは少年に近い彼女ですが、実は物語の要所要所で重要な役割を果たすキーパーソン


[山本晋 著 KADOKAWA「ナラクノアドゥ」1巻より引用]

正体を知られたアドゥに全滅させられそうになるところを機転を効かせ、「取引」して仲間になったり。出生にちょっとした秘密があったり。皆があきらめる状況でも一人、気を吐いたり。

パーティの中では最弱だけど、元気で人間臭い、とにかくアドゥと正反対の存在。ヒロインというポジションとは遠いのですが(笑)、物語を牽引する注目の人物です。

圧倒的なダーク・ファンタジー

そしてそれら「ナラクノアドゥ」の世界観を支え、作り上げているのは、高い作画クオリティ。躍動感のあるキャラクター、ファンタジー世界の空気感、迫力のバトルの数々など、漫画の楽しさ・スゴさが堪能できます。


[山本晋 著 KADOKAWA「ナラクノアドゥ」2巻より引用]

魔王やその配下である、「浅層の悪魔(シャロウデーモン)」たちの存在感も圧倒的。普通の人間ではまったく歯が立たないほど、強大な力を持つモンスターたち

しかし対峙する勇者=魔王・アドゥは、勝てば勝つほど弱くなっていくという存在。この絶望感、まさにダーク・ファンタジーならでは。結末がどうなるか、想像が膨らみます。

まとめ

以上、漫画「ナラクノアドゥ」のレビューでした。読めば読むほどその世界にはまり、そしてアドゥたちの行く末が気になる、迫力のファンタジー漫画。おもしろいです。

気になるのはいまだ明かされていない「アドゥが人間になりたい理由」。今後おいおい明らかになっていくのか気になるところです。

「ナラクノアドゥ」、がっつりアクション・ファンタジーを楽しみたい、という方にオススメ。ぜひその世界観に触れてみてください。

漫画データ
ナラクノアドゥ 1 (ファミ通クリアコミックス)著者:山本 晋出版社:KADOKAWA / エンターブレイン発行日:2016-05-14

コメント