ファンタジー漫画漫画感想・レビュー

漫画『ナラクノアドゥ』感想―最弱への道を進む最強の魔王!ダーク・ファンタジー

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「人間になるため」に、全ての魔王に戦いを挑む「最強の魔王」。しかし魔王をひとり倒すたびに、その力は削がれていく―

山本晋さんの漫画『ナラクノアドゥ』。「魔王を倒し人間になる契約」を天使と交わした魔王・アドゥと、彼と行動をともにする人間たちの冒険を描く、ダーク・ファンタジー。全6巻完結済み。

『ナラクノアドゥ』感想・レビュー

あらすじ

全十二階梯の魔王の圧倒的な力の前に、滅亡の危機にある人類。しかし何者かにより、最も強力な十二位と十一位の魔王が消滅。残った10人の魔王も姿を潜め、人類はその生命を永らえる。

それから16年後、再び第十位の魔王・モーテムの脅威にさらされる人類。英雄官アドゥと仲間たちが挑むが、叶わず全滅の危機に。

そこで「真の姿」を見せるアドゥ。彼は天使と「全ての魔王を倒せば人間になれる」という契約を交わした、名も無き那落(ナラク)に座する十二階梯・第十二位の最強の魔王だった。

戦いの末アドゥはモーテムを倒すが仲間を失い、「魔王をひとり倒すたびに人間に近づく」という契約により力も弱まる。だが目的は道半ば。人間になるために、新たな仲間を探すアドゥだが…?

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人間になりたい「最強の魔王」

以上がダーク・ファンタジー『ナラクノアドゥ』のプロローグ。

  1. 12人の強い魔王がいて人類ピンチ
  2. その中の最強の魔王がアドゥ
  3. アドゥは人間になるために他の魔王を倒そうとする
  4. でも魔王を倒すたびに弱くなっていく
  5. なので強い人間の仲間が必要
  6. 秘密を知った人間たち(強い?)と契約
  7. 以降、九位以下の魔王たちとの戦いへ

という構図なのですが、プロローグで仲間を失ったアドゥは新たに少女剣士ヨミ・英雄官ユングら、彼の秘密を図らずも知った人間たちと「契約」を交わし、人間になるための戦いに挑んでいきます。

そのアドゥ、「最強の魔王」でありながら、人間に近づけば近づくほど強力な力を失っていく、という存在。そのため目的を達するためには、魔族と戦う力を持つ人間との協力が不可欠

しかし魔族であるがゆえ「人間の心が本質的に理解できない」アドゥ。常に軽薄な笑みを浮かべているのも、その裏返し。仲間が死にゆく時にかける「すまない」の言葉も、「すまないと思う気持ちがわからないのだ。だからすまない」という始末。

そんな彼が人間と共同戦線を張れるのか…?が物語の面白みの一つ。しかし魔王を倒すたびに少しずつ人の心を得るかのような仕草も見せ、アドゥが最終的にどのような「人間」になるか、が気になるところ。

アドゥと「契約」した仲間たち

一方、アドゥの秘密を知り殺されそうになるも、彼を助ける「契約」をかわし(形式上の)仲間となった人間たち。彼らの動向も、物語の大きな見どころ。

その一人である少女剣士・ヨミは、戦力としては非常に頼りないもの。ですが、アドゥと対等に「取引」したり、皆があきらめる状況でも魔族に立ち向かったり。

パーティの中では最弱だけど元気で人間臭い、とにかくアドゥと正反対の存在。要所要所で重要な役割を果たし、物語を牽引していくキーパーソンです

そしてもう一人の仲間、英雄官のユング。剣士である彼はアドゥとは圧倒的な力の差があるのですが、しかし幾多の死線を乗り越え、やがてアドゥが一目置く存在に。

少しずつ人間に近づき弱るアドゥに対し、逆に魔の力を持っていく(ように見える)ユング。アドゥもその力に脅威を感じるようになり…?

そんな仲間たちとアドゥの微妙な関係が、ストーリーに独特の緊張感を付与。他のファンタジー漫画とはひと味異なるドラマを楽しませてくれます。

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ドラマティックな展開に引き込まれる

しかしアドゥたちが戦うのは、圧倒的な力を持つモンスターたち。しかもアドゥは魔王に勝てば勝つほど弱くなっていく訳で…。このダーク・ファンタジーならではの絶望感が、何とも怖い…!

またアドゥたちを取り巻く、絶望の世界を生きる人々の生々しい人間模様が描かれるのも特徴的。

死を前に欲望を剥き出しにする者、多数を救済するために少数の犠牲を厭わない者、生き延びるために魔にへつらう者…。随所で描かれる、人間の本質がむき出しになる瞬間が、ある意味ドラマティック。

そしてそんな人間たちを見つめるのは、今まさに人間にならんとするアドゥ。「人間らしさ」を観察・学習していく魔王の姿が、他のファンタジー漫画にはないユニークな構図。『ナラクノアドゥ』ならではの面白さとなっています。

さてアドゥは魔王を全て倒し人間になれるのか?そして人類の運命は果たして…?

まとめ。残念ながら…

以上、山本晋さんの漫画『ナラクノアドゥ』感想・レビューでした。

卓越した画力とドラマティックなストーリーで描かれる、圧倒的ダーク・ファンタジー。オススメの漫画…なのですが、残念ながら全6巻をもって道半ばでの完結となりました…。

少し触れていただければ分かると思いますが、近年のファンタジー漫画の中でも屈指のおもしろさを持つ作品。またいつの日か!再開を期待したいところです。

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