岡崎二郎さんの短編漫画集『アフター0〔著者再編集版〕』5巻より、短編『あの世の方程式』の主なあらすじとレビューです。
「人を救うはずの宗教が争いを生んでいる」そのことに矛盾を感じている理系畑のお坊さん・栄西は、仏門にありながら「あの世が無いこと」を数式で証明しようとしていた!
どんな宗教にもその根底には「死の世界の概念」があり、イコール「あの世が無いこと」が分かれば、宗教自体も存在することが出来ない。それは平和に繋がるはず。しかし数式の完成には至らず…。
その彼の前にある日、「客観的観測者」と名乗る男性が現れ、栄西の理論を補完するデータをもたらして去る。そのお陰で理論は「宇宙構造論」として完成。発表されるやいなや世界を席巻!
「あの世の否定」が科学的に証明され、宗教はその存在意義を失う。自動的に争いも消滅、世界に平和が。だがそれは、人々の心に新たな問題をもたらし…?
【コミックシーモア新規限定クーポン】
「人の心に平穏をもたらすはずの宗教が、なぜ争いを生み出すのだろう?」という疑問を抱いたり、さらに「宗教が無ければ世の中はもっと平和なのでは?」と考えたりすることもあるのでは。
その「宗教が無ければ」を実践しようとしたのが、『あの世の方程式』の主人公・栄西。その職業はなんとお坊さん!非常に罰当たり(笑)。
そんな彼は超理系の人。「あの世が無いこと」を証明するためには、「世界はこの世だけ」、つまり一元的であることが証明できれば良いと、物理的な方面からアプローチするのが本作の面白み。
ではあの世が無ければ、宗教が無ければ、世の中は果たして平和になるのか…?証明後の展開は意外とも言えるし、「さもありなん」とも言えるもの。そして迎えた結末は…。
科学だけではない、人間の本質が絡む内容に、思わず感嘆。予想外の深みを感じせてくれます。作者の博識と豊かな発想から生み出されるSF短編が詰まった『アフター0』ならではの一編です。
コメント