人が死ぬと、その魂は「蝶」になり、やがて消えてしまう世界。かつて妹の「蝶」をテロリストに奪われた青年は、やがて成長し、蝶を管理する「死局」の一員となる―。
人の魂が「蝶」となる世界を舞台に描かれるSFアクション漫画「バタフライ・ストレージ」。1巻のレビューです。
作者の安堂維子里(あんどう・いこり)さんは、「Silent Blue」「世界の合言葉は水」「水の箱庭」のように、みずみずしい世界観の漫画を描かれる作家さん。
しかし本作「バタフライ・ストレージ」では一転、ハードなSFアクションを描かれます。

「バタフライ・ストレージ」は月刊COMICリュウにて絶賛連載中です。
「バタフライ・ストレージ」レビュー
あらすじ
人が死ぬとその肉体は瞬時に朽ち果て、抜け出た魂は「蝶」となる。そのままでは49日後に消滅してしまう「蝶」を、国家機関「死局」が管理する世界。
死局の特殊捕蝶班に所属する主人公・小野百士(おの・ひゃくし)は、「蝶」を保護するために危険な任務に臨む。
その胸にあるのは双子の妹・千里の存在。14年前の飛行機事故で謎の男に「蝶」を奪い取られ、意識の無いまま生き続ける千里。
蝶が抜けて消滅した体は死を迎えるが、千里が生きている以上、彼女の「蝶」は必ずどこかに存在するはず。妹の「蝶」を取り戻すため、死局員として男の行方を追う百士。
一方、死局以外にも蝶を凍結保管する組織の存在が。特殊捕蝶班は活発化する組織の壊滅を目指すが―。
迫力のハードSF
「バタフライ・ストレージ」、想像以上にハードなSFでした…!
冒頭、「蝶」の闇オークションに突入する、死局特殊捕蝶班の面々。容赦の無いガンアクション&スピーディな格闘戦を展開。いきなり迫力のアクションシーンで、一気に物語に引き込まれます。
安堂維子里さんのこれまでの漫画は、しっとりとした雰囲気の作風。しかし「バタフライ・ストレージ」ではスタートから迫力・スピード感ある特殊部隊の活躍が描かれ、SFアクションのカッコよさを見せつけてくれます。
謎多き世界観
人が死ぬとその体からは「蝶」が抜け、肉体は朽ちる。そして蝶も49時間後には消滅する世界。蝶には持ち主の全てのデータが保持され、そのほとんどは死局によって保護・回収されます。
凍結処理をされ「消えない蝶」となった蝶たちは、「バタフライサーバ」と呼ばれる施設で保管。サーバに蝶がある限り、いつでも遺族は故人に会えます。しかしそんな蝶を狙うテロリストが存在し―?という世界観。
なぜ蝶が存在するのか。
テロリストはなぜ蝶を狙うのか。
そして妹・千里はなぜ蝶を盗られても生きていられるのか。
「バタフライ・ストレージ」1巻では「蝶の存在する世界」が丁寧に描かれながらも、その全貌が見えてくるのはまだまだこれから、といった感じ。その独特なSF世界の描写が気になります。
【マンガ多すぎ!コミックシーモア】
個性的な特殊捕蝶班メンバー
そんな世界を所狭しと暴れまわるのは、曲者ぞろいの特殊捕蝶班メンバー。
無骨だけど実は涙もろく、ポエマーでもある主人公・百士。
身長192cm。女性ながら特殊捕蝶班の班長を務めるムキムキの武闘派・荒井。
関西弁でイケメン、ちょっとやなヤツ?銃器担当の神田。
ショートヘアー+メガネ。その外見からは想像のつかない戦闘力を見せる、近接戦闘が得意な佐川。
還暦間近だが、実は特殊捕蝶班屈指の強さを持つ、班の相談役・田中。
個性的な能力を持つ彼らは、蝶の保護・捕獲のために訓練された特殊部隊。死局は警察とは異なる組織で、不用意に「蝶」を増やさないために「死ぬな、殺すな」がモットー。
それゆえに銃器はゴム弾、格闘はスタン・ナックルと、非殺傷装備を使用した戦い方がユニーク。軍隊や警察とはひと味違う、特殊捕蝶版ならではのアクションが魅力的です。
百士は妹の蝶を取り戻せるか?
そんな特殊捕蝶班の一員でありながら、一人、妹の「蝶」を取り戻すという決意を秘めて活動する百士。
いかついだけではない、ちょっと笑える一面も持つ彼。独特な鈍い輝きを放ち、とらえどころのない魅力を持つ不思議な主人公です。
果たして百士は、妹の蝶を奪った謎の男にたどりつけるのか?そして妹の笑顔を取り戻すことができるのか?悲壮感をまといながらも人間味のある主人公。その活躍に注目です。
まとめ
以上、安堂維子里さんのSFアクション漫画「バタフライ・ストレージ」1巻の感想・レビューでした。
「蝶」という独特な存在がその根底にある「バタフライ・ストレージ」。まずは第一巻ということもあり、その世界観を構築しつつも、百士、そして特殊捕蝶班の活躍が印象に残りました。
終盤では百士をめぐる、少し陰謀めいた動きもあり、きな臭い感じ。続きが気になるSFアクション漫画。続巻が楽しみです。
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