2027年に勃発した三度目の世界大戦により、焦土となった日本。それから数年後、複数の国・国際機関により、分割統治されることに。
そのほぼ中心に位置するのが、「日本国政府主権維持軍」=通称「SKF」。
かつての日本の主権を取り戻すため、武力をもって各地域の小競り合い等に介入・調停を行っている。
そのSKFで大きな戦力となっているのが、長大な狙撃銃を携えるスナイパーの少女・ミハルと、観測手としてコンビを組む元射手・ショウ。
「音越の悪魔」として恐れられ、後に国を取り戻すきっかけとなる二人の狙撃班。その成り立ちが、迫真の戦闘描写をもって語られていくー。
以上が原作・濱田轟天さん+作画・藤本ケンシさんの漫画『ミハルの戦場』。の、主なあらすじ。
戦場と化した近未来の日本を舞台に、最前線を生きるバディを描く、リアルなミリタリー・アクションです。
その主人公・ミハルは、軍人だった養父より、狙撃の英才教育を受けた少女。小柄な体には似合わない長距離狙撃銃で、正確無比な狙撃を行う凄腕のスナイパーです。
しかしその養父を、軍属崩れの盗賊の襲撃で失ってしまい…。頑なな表情の下で、元凶である「眼帯の男」への、復讐の炎を燃やし続ける!
本来は「守られるべき子ども」である存在ながら、過酷な環境で泥水をすすりながら、必死に生き延びてきた彼女。
狙撃の才能を武器に、SKFの重要な戦力となっていきます。
だがスナイパーがその実力を発揮するには、距離や風速・敵の状況などを測る「観測手」が必要。養父の仇を討つには、優秀な観測手と手を組まねば…!
そこでミハルがパートナーとして選んだのが、アフロヘアーの愉快な男・ショウ。
過去には天才狙撃手「音越の悪魔」として恐れられたが、戦闘中の負傷により右手指を欠損。現在は後方にて勤務中。
彼なりの「戦後」を生きるが、上官の女性士官・ルイーズの命を受け、ミハルと(イヤイヤ)バディを組むことに…。
そんな経験豊富な彼が、相棒として、先輩として、世間知らずなミハルを導いていく。その掛け合い、バディとして信頼を築いていく戦場の片隅のドラマが、物語のひとつの見どころ。
そして出会いを経て、やがてSKFの狙撃班として正式に軍属となるミハル。
物語冒頭では、武装した略奪者たちに対し、ショウの指示で長距離狙撃を敢行。多大な成果を上げる様子が。
そのリアルなミリタリー・アクションを伴って描かれる、「戦場のスナイパー」の活躍が、小気味よくも面白い!
面白い!のですが、そのリアルさは同時に、「戦場の非情さ」を読者の深層心理に刷り込んできます。
元・戦闘員の日常を描く『平和の国の島崎へ』原作の濱田轟天さんと、『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』の藤本ケンシさん。二人のコンビによる『ミハルの戦場』。
物語のそこかしこで見られる「第三次世界大戦後に壊滅的なダメージを受けた日本の姿」は、現在も世界各地で継続中の紛争を、否が応でも想起。決して他人事とは思えない緊張感を与えてきます。
凄惨な描写も多い本作。もちろんフィクションですが、それをどのように受けとめるのか?を読者に突きつけ、喉がカラカラになるような緊張感を味あわせてくれる、迫真のミリタリー・アクション漫画です。
以上、原作・濱田轟天さん+作画・藤本ケンシさんの漫画『ミハルの戦場』感想・レビューでした。
やがて「戦闘」から「戦争」へと踏み出していくミハルは、復讐を成し遂げることができるのか?
立ったキャラクターの魅力と、「荒廃した近未来の日本」のインパクトが、非常に印象的な一作です。
連載は小学館の漫画アプリ「マンガワン」で、2025年9月現在コミックス1~2巻が刊行中。




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